進化と引き換えに失うモノもある!? それが「新型車」の難しさであり、宿命かもしれない。
多くの車種は、約4~6年周期で行われるフルモデルチェンジで代替わりし、最新の技術やトレンドに合わせた飛躍的な進化を遂げる。もちろん、マイナーチェンジや年次改良などでも改良を重ねるが、その進化幅には限りがある。
一方で、進化と引き換えにそれまで持っていた独自の魅力が薄まってしまうケースもある。それがモデルチェンジの難しさ。長年続く人気車種であればなおさらだ。
伝統の名門車、クラウン(2018年6月発売)が、モデルチェンジで得たモノ、失ったモノとは?
文:永田恵一
写真:編集部、TOYOTA
【画像ギャラリー】どれだけ変わった!? 新旧クラウンを写真で徹底比較!!
新型クラウンで「進化した」2つのポイント
【1】走行性能の大幅な向上
現行型クラウンのプラットホームは、2003年登場のゼロクラウンと呼ばれた12代目モデルから3世代15年間に渡って使われたものから、トヨタ社内において新世代となる「TNGA-Lプラットホーム」に一新された。
「TNGA-Lプラットホーム」は、レクサスLCとLSにも使われている。クラウンのプラットホームは、それを日本の道路環境を配慮し全幅を1800mmに抑えるためにナロー化(=幅を縮小)したものとなる。
さらに、現行クラウンは日本専用車ながら、世界一厳しいと言われている独ニュルブルクリンクでのテストも行った。
この2つの効果は、量産車にシッカリ反映されており、現行クラウンは直接的には競合しないにせよ、実際にはユーザーが競合車として考えることも多々あるだろうメルセデスベンツやBMWに近い正確なハンドリングや高いスタビリティ(走行安定性)を手に入れた。
【2】運転支援システム・安全性の大幅な向上
先代クラウンの運転支援システムは、先行車追従型のクルーズコントロール(ACC)が30km/hでオフになってしまう停止までは対応しないタイプ、操舵支援も車線逸脱を抑制するに留まるなど、日本を代表する高級車として見ると物足りなかった。
また、安全性、主に自動ブレーキの性能も夜間の歩行者に対応しておらず、こちらも運転支援システムと同様の印象だった。
それが現行クラウンでは運転支援システム&自動ブレーキが、「トヨタセーフティセンス」の最新版に進化。
運転支援システムではクルーズコントロールが停止まで対応し、操舵支援も積極的に行うようになり申し分ない。自動ブレーキもJNCAPのテストで夜間の歩行者に対しても60km/hで停止し、昼間の自転車にも対応するなど文句ない性能だ。
衝突安全性も現行クラウンは、日本専用車ながら米国の保健機関が行う通常のオフセット衝突よりずっと厳しい「スモールオーバーラップ」(=通常が全幅の40%、スモールオーバーラップは全幅の25%で衝突時の全エネルギーを受け止める)にも対応しており、衝突安全性も日本で買える車トップクラスだ。
加えて現行クラウンは前述した走行性能の大幅な向上により運動性能も高く、イザという時に緊急回避できる可能性も上がっているため、事故自体を起こすこと自体が非常に少ないだろう。
さらに、現行クラウンはコネクテッドカーでもあるので、不幸にも事故に遭ってしまってもオペレーターを介した消防や警察への通報ができる。
加えて、エアバッグが展開するほどの事故の際には自動でオペレーターに接続され対応してもらえるほか、突発的な重大な疾患が起きた際には救急車のボタンを押せば対処してもらえるといった機能もある。
といったことから、高級車の購入層が、特に重視するであろう総合的な安全性に関しての現行クラウンの進化は劇的なものと断言できる。
コメント
コメントの使い方