対照的に旧クラウンの魅力が薄れた部分は?
【1】日本の道路環境に最適な乗り心地
「走行性能の大幅な向上」との引き換えだったのかもしれないが、先代クラウンでは合格点を与えられた「クラウンらしい日本の道路環境に合ったしなやかな乗り心地」が失われたように感じる。
具体的には「乗り心地が悪いというほどではないけれど、クラウンとして見るとゴツゴツ感がある」といったレベルだろうか。
(ちなみに、乗り心地とハンドリングのバランスが最良だったのは先々代の13代目モデルだ)
先代クラウンまでのアスリート系に近いスポーティなキャラクターを持つRS系はこういった味付けでもいいと思うが、ロイヤル系に近いキャラクターを持つ「G」グレードや「S」グレードは、今までのクラウンの方向に近づけた方がクラウンらしいのではないだろうか。
【2】「日本的な」高級車らしさ
クラウンというクルマは、「保守的な車種の代表」というイメージが強いかもしれない。
しかし、実際にはメルセデスベンツがそうなのと同じように先代モデルのグリルのようなデザインや「世界初・日本初」という機構を採用したモデルが、いくつもあったりと、イメージとはまったく違う非常に挑戦的なクルマである。
現行モデルは、クラウンが過去にも通ったことがある「ユーザーの高齢化」を抑えるというテーマに注力したモデルだ。
それもあって現行クラウンは独ニュルブルクリンクでの走行テストを行い、セダンでありながらクーペルック的なスタイルやTNGA-Lナロープラットホーム、ナビ画面に加え操作パネル用に使う2つ目のモニターなどを採用したところがある。
そのあたりがクラウンに求めたい「日本的な高級車」という観点には合わなかったという気もする。
この点が見方によっては「クラウンらしさ、日本的」というキャラクターが薄れることに起因し、現行クラウンと近い価格で買えるベンツ、BMW、アウディといった輸入車のプレミアムブランドや身内のライバルとして勢力を急拡大しているアルファード/ヴェルファイアへの流出につながっているのかもしれない。
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現行クラウンの販売は、2018年6月の登場時の月間販売目標台数4500台に対し、2019年は3万6125台(月平均=約3000台)と苦戦気味だ。この結果は「失ったもの」で書いたことも関係しているように思う。
しかし、これはクラウンという本当に難しいクルマを作るなかで開発陣が考え抜いた末に出した答えだけに、スポーツなどの「チャレンジした上での結果」と同じように、筆者は現行クラウンを応援したい。
チャレンジをしない、出来ない、だったら新しいものは何も生まれないではないか。
現行クラウンにはモデルサイクル中に乗り心地の向上などを行いながら、次期モデルのコンセプトを熟考してほしいところだ。
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