トヨタ自動車技術部は「白い巨塔」? 中嶋副社長に聞いてみたら本音すぎる答えが返ってきた!!

トヨタ自動車技術部は「白い巨塔」? 中嶋副社長に聞いてみたら本音すぎる答えが返ってきた!!

 巨大企業とは冷めた印象を持たれやすい。ならば日本を代表する巨大企業、トヨタ自動車はどうだろう? かつて豊田章男会長は同社技術部を白い巨塔だと発言した。その「真意と現在」を中嶋裕樹副社長兼CTOに聞いてみたら、予想の100倍くらいのド直球が返ってきた!

文:山本シンヤ/写真:山本シンヤ、トヨタ、ベストカーWeb編集部

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良い悪いの議論以前に「会話が通じない」

豊田章男会長は、かつて技術部との意思疎通に悩んだという
豊田章男会長は、かつて技術部との意思疎通に悩んだという

 豊田章男氏がマスタードライバーの成瀬弘氏から運転訓練を受けた話はさまざまな記事で目にしていると思う。その理由の一つは、技術屋ではない豊田氏が技術部と「クルマの話」をするためだった。しかし、実際は……。豊田氏は当時を振り返る。

「以前、私のアルファードを成瀬さんに改良してもらいました。実際に号口(量産モデル)と乗り比べると走りが明らかに違う。技術部に『乗ってみてよ』と伝えると、『データでは変わりませんので』と断られました。『いやいや、乗ればわかるから』と言っても彼らは一向に『データでは変わりません』の繰り返し……。恐らく、私が“感性”で話をしているのに、技術部はそこは無視して“理屈”で返してくる。この時、良い悪いの議論をする以前に、そもそも『会話が通じない』と思いました」。

 そんなことから、豊田氏は技術部のことを「白い巨塔」と呼ぶ。白い巨塔とは故・山崎豊子の小説のタイトルで、大学病院の“権力闘争”と“腐敗”を描いたモノだ。豊田氏にはそれに似た感覚があったのだろう。その距離感はモータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりにより徐々に縮まっているように感じるが、今もちょいちょいキーワードとして出てくる(笑)。そこで現在の白い巨塔のトップである中嶋裕樹副社長兼CTOにド直球で聞いてみた。

副社長に反論すると逆に睨まれる(笑)

ル・マン24時間レースのパドックで撮影に応じるトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長兼CTO(右端)
ル・マン24時間レースのパドックで撮影に応じるトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長兼CTO(右端)

 中嶋氏はこれまで様々なモデルの開発を担当してきたが、そもそも白い巨塔を意識したことはあるのだろうか?

「恐らく“無意識”のうちですね。僕が入社した時は副社長がたくさんいました。当時は機能軸の組織でしたので、生産技術の時も技術部の時も、トップは社長ではなく『その担当の副社長』と言う感覚はありました。と言っても、僕が直接話をするわけではなく、その下にいる専務や常務、そして部長などが、とにかく副社長を見ているのは解りました」

 若きエンジニア時代の中嶋氏が「これはちょっと?」と言うことはあったのだろうか?

「あるクルマのレビューで副社長が現場視察する時に駆り出された時、僕が『●●と考えています』と言っても、副社長が『こうだよね』と言った時に反論すると逆に睨まれる(笑)。その時は『あっ、言いたいことを言っちゃいけないんだ』と。ただ、その時は当時の自分が未熟で間違っていて、『副社長が正しい判断をしているんだ』と思っていました。ただ、自分がそれなりの立場になった時、疑問に思うようになったのも事実です」

 中嶋氏がチーフエンジニア(CE)として開発を任されたモデルは、2008年に登場した「iQ」である。3mを切る全長で4人乗りのパッケージを成り立たせた革新的モデルだった。

「トヨタとしてはかなりチャレンジングなクルマだったので、応援する人ばかりではなく足元をすくおうとする人もいたのも事実です。クルマは技術部だけでは世に出せませんので、他の領域にも話をする必要があります。各領域の副社長が直接会話をして決めてくれれば一発なのに、当時はまさに伝言ゲーム……。話は途中でズレて本質は伝わらず、最後は両方から『中嶋、お前は何を考えているんだ』と怒られるだけならまだしも、クルマ自体も否定され……。正直『やってられるか』と思うことも何度かありました」。

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