たくさん売れたわけじゃないが何年経っても覚えている、印象的だったクルマを取り上げるこの企画。今回は、トヨタ bBにムリヤリ荷台をくっつけて片側観音開きのピックアップに仕立てたトヨタ bBオープンデッキを取り上げる!!
※本稿は2025年7月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
ノリノリで作り上げた面白企画モノ
こんなに面白い企画モノがあってイイのか? というか20年前ってなんだかんだ余裕あったのね? と実感させるのが、懐かしの実車版チョロQとでも言うべきトヨタ bBオープンデッキだ。
ベースの初代bBからして日本のカスタマイズ文化発展を考えたユニークな若者向けFFトールボックス。ボディデザインは試作車を作らないフルデジタル設計だし、車名は未知の可能性を秘めた箱、ブラックボックスのイニシャルとくる。
そいつを片側観音開きドアを持つピックアップボディに変えるなんて、まさにテリー伊藤さんも驚くメーカー純正悪ノリ改造車だ。
今見ても「よく作ったなぁ」という、夜中のラブレターの如き恥ずかしさが伴うが、bB発売1年後にオープンデッキが追加されて、実質2年チョイで販売不振から生産終了。世の中やっぱりそんなに甘くないわけよ。
でもそんなオープンデッキは今こそ貴重だ。ベースは当時のベストセラーFFコンパクト、ファンカーゴだから信頼性が高く、故障も少ない。それでいて、全長を70mm延長すると同時に、リアシート座面を30mm短縮して作り出したデッキスペースは凄い。
ビールケースなら重ねて4箱、20Lポリタンクなら7個積載できるし、デッキスペースには身長175cmの小沢コージもすっぽり収まる。鉄板や樹脂で覆われ、サーフボードのような海の汚れ物やちょっとした植木や家具を運ぶにはもってこい。
オマケにリアはガラスハッチになってて外を確認できるうえ、ちょっとした荷物の出し入れも可能。さらにデッキスルードアを開ければ、広大なスペースが広がり、前後シートを畳めばフルフラットに! 車中泊はもちろん、サーフボードを飾ったパーティーカーとして充分に使えるワケだ。
加え左リアドアはピラーレス観音開きになってるから開放感が半端じゃない。それどころか広い開口部を活かし、助手席を全自動昇降できる「助手席リフトアップ車」の設定もあったから凄い。「行動的な若者の遊びを演出」とするプレスリリースにも超納得だ。
それでいて走りは予想以上にしっかり。ベースのbBは88psの1.3Lと110psの1.5L直4ガソリンや一部4駆も選べたが、オープンデッキは1.5LのFFのみ。
よって加速はなかなか悪くなく、さらに驚くのは片側ピラーレスの左右不均衡ボディでありながら大規模補強により、サスペンション取り付け部の剛性はノーマルの2倍。結果、乗り心地は悪くないし、高速でも予想よりマトモに走る。
またベースのbB譲りのインパネはモノ入れ豊富でメーターはすっきりセンター配置でオシャレ。それどころかカスタムしたリアドア左右内張りにはモノ入れもちゃんと備わっており、車検証上も立派な5人乗りとして登録されている。
背が高いわりに運転席にシートリフターがなかったり、リアシートが狭めでサポートが薄く、無理やり企画の跡もなくはないが、トヨタが思いつきとはいえ本気で作ったクルマだけある。世が世ならショーカーで終わってたはずだ。
これのボディがサビサビでもない、ちゃんと車検が取れるクルマが数十万円で買えるニッポンって凄い。今、中古でこのカスタム仕様が多いのにも納得。趣味がハマったら絶対買いだわ!






















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