日本の軽自動車のようなクルマが必要!? 欧州自動車メーカーの現在と今後の課題

日本の軽自動車のようなクルマが必要!? 欧州自動車メーカーの現在と今後の課題

 苦境の中にあるヨーロッパの自動車メーカー。悪化している業績を改善させていくには、どのような手を打てばいいのだろうか。ステランティスのエルカン会長は、日本の軽自動車のような小型車が必要だと主張しているようだが……?

※本稿は2025年7月のものです
文:井元康一郎/写真:ステランティス、ヒョンデ、ダイハツ ほか
初出:『ベストカー』2025年8月10日号

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ヨーロッパのメーカーが抱える問題への対処法

フィアット トッポリーノの軽バージョンの登場にも期待か?
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 苦境にある欧州自動車メーカー。別記事で詳しく述べたように減速要因は複雑で、それだけにこれをやればOKという単純な解決法もない。

●欧州勢の業績悪化のおもな要因

(1)欧州全体が労働者の権利を重視する社会民主主義的な政策を取っているため、コストの高い欧州域内からの生産拠点移転や人員整理を進めにくい。

(2)欧州政府による環境規制の大幅強化でクルマの製造コストが上がったうえ、収益性の低いBEV(バッテリー式電気自動車)へのシフトを迫られている。

(3)ドイツメーカーの場合、一大収益源としてきた中国市場でBEVを中心に地場資本との商品力、コスト競争に敗れつつある。

 しかし、打つ手はある。まずはフォルクスワーゲンが先鞭をつけた余剰人員の削減を他メーカーも行うことだ。

 社会民主主義を誇りとしてきた欧州にとっては耐えがたいことだろうが、世界水準からみれば労働者を厚遇しすぎたというきらいもある。理解を取り付けながら高コストな欧州域の生産依存率を下げていくことは必須だろう。

 さらに技術開発の加速。電動化に舵を切ったといわれるが、欧州は日本と同様、自動車、電力会社、電気設備メーカー、ITプラットフォーマーなど異業種間の連携が弱く、イノベーション創出力で米中に完全に力負けしている。そういう官僚的な気質を変えることはマストだ。

 そして欧州政府に働きかけ、環境規制を現実に即したものに変更させること。今、示されている将来の環境規制は走行時のCO2排出量を偏重している。

 そのため、仕組みがシンプルで低コスト、そして製造時のCO2排出量がきわめて少ないベーシックカーを根絶やしにしてしまうなど、きわめてアンバランスな状況を生んでいる。

 ステランティスのエルカン会長が日本の軽自動車のような新ミニカー規格が必要と主張したが、これには硬直的な環境政策の見直しを促すためのジャブ的要素も多分に含まれている。自動車業界もそろそろ強くモノ申すべき時だろう。

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