8月23日、中学生と高校生を対象にした手作りBEV(バッテリー式電気自動車)のコンテスト『エコ1チャレンジカップ2025 ~中・高校生による手作り電気自動車コンテスト~』が開催された。そこに、日産社員の有志が製作したマシンで参戦するという情報を聞きつけ、取材に駆けつけた! 今回はその注目の活動を余すところなくお届けする。
文/写真:ベストカーWeb編集部
エコ1チャレンジカップとは?
東京都多摩市の東急自動車学校を貸し切り、8月23日に開催されたのが『エコ1チャレンジカップ2025』だ。
この大会は「ものづくりの楽しさと重要性の認識」「環境とエネルギー問題の理解と体験」「創造性に富む人材の育成」という3つの目的を掲げ、中高生が自作したBEVを持ち込み、「走る・曲がる・止まる」という自動車の基本性能を達成しながら、限られたバッテリーをどれだけ効率的に使えるかを競う。まさにものづくりを通じて知識を深め、探求する楽しさを学ぶ競技である。
2025年大会は全国から18校が参加。若きエンジニアの卵たちが汗を流し、自分たちのマシンを走らせた。
日産有志チームがサプライズ参戦!
そんな学生主体の大会に、今年は大きなサプライズがあった。
毎年ボランティアとして大会運営に携わってきた日産スタッフが、「見るだけじゃツマラナイ」と、自らもチームを結成。車両生産技術開発本部の若手社員を中心に、1年をかけて手作りBEV「R36 GTR」を製作し、「チーム日産・生産技術開発」としてエントリーしたのだ。
ただし立場は賞典外の参考出走。とはいえ、中高生と同じ舞台に立ち、一緒に走りを競う姿勢は本気そのもの。
しかも意外なことに、メンバーの多くは学生時代にエコランや学生フォーミュラを経験しておらず、生産技術がメイン業務のため、実際にクルマを一から作るノウハウを持っているわけではなかった。まさにゼロからの挑戦である。
チーム立ち上げの中心人物は、車両生産技術開発本部 生産技術研究開発センター 松本将師部長。「ボランティアで運営を手伝うだけでは物足りない。中高生と同じ目線で真剣勝負してみたい」との思いが原動力になったという。
さらに驚きなのは、この計画を、大会副会長を務める日産自動車執行役・平田禎治氏にも内緒で進めたこと。平田氏が知ったのは当日。「頼むから完走してくれ……」と祈るように走りを見守ったそうだ。
手作りBEV「R36 GTR」の全貌
今回のマシン「R36 GTR」について、チームリーダーを務めた先進技術開発検証課の瀧野仁氏に詳しく話を聞いた。
本来なら日産の持つ技術を総動員して製作したかったが、短い準備期間や残業規制の中で限られた時間を工夫しながら完成させたという。
次期型GT-Rらしきデザインを採用したのは、日産を象徴する“速いクルマ=GT-R”を思い浮かべたから。惜しくも市販モデルは生産終了となったが、社員にとって特別な存在であることが伝わってくる。
外装はプラ段(プラスチックダンボール)をベースにしながら、実車にも使われるフィルムコートを貼り高級感を演出。フロントには3Dプリンター製の日産エンブレムも装着し、こだわりの仕上がりになっている。
フレームには生産現場でも改善活動に使われるアルミ構造材「GF材」を採用。軽く強度も高いが、ジョイント部分がアルミ鋳物だったため、結果的に重量増につながったという。来年は日産が誇る溶接技術やインクリメンタル成形などを取り入れたいと意欲を語った。
電動パワートレーンは、当初最高速60km/h(車体+ドライバーで70kg時)を狙って設計。12Vバッテリー2個を直列にし24Vとしたうえで、スーパーキャパシタで48Vに昇圧。さらにコアレスモータ社に特注したモーター(車いす用トルク重視設計)を駆動し、加速力と回生発電による効率化を目指した。
しかし設計が進むと、フレーム重量の増加やユニットの大型化が足かせに。加えて回生発電用の部品調達が間に合わず、最終的にはモーターとバッテリーを抵抗値で制御するシンプルな構成に切り替えて本番に臨んだ。
走行データ管理にも工夫が凝らされ、モーターの電圧・電流・温度や回転数を計測してタブレットに送信。自作プログラムでドライバーに見やすいメーターを表示し、走行ログも記録している。
瀧野氏は「クルマを造ることの難しさを改めて実感し、普段から技術開発に携わる仲間への尊敬の念が増した」と語っていた。












コメント
コメントの使い方資本を掛けて特注モーターにプレス機等使った骨組みと、本気度がすごいことが
学生たちの興味を誘って、良い結果に繋がったと思います。
とはいえ、それは学生たちの倍以上のラップタイムが掛かるくらい遅かったからこそ。
これがトップと競るようになり、負ける学生チームが多くなると問題頻出してきますよ。