「危ない!!!!」 運転中にキケンが降りかかる時、ドライバーはどうすればよいか!? プロのドライバーが教える緊急回避のイロハ!

「危ない!!!!」 運転中にキケンが降りかかる時、ドライバーはどうすればよいか!? プロのドライバーが教える緊急回避のイロハ!

 緊急回避は特別なテクニックではなく、日常運転でも欠かせない安全行動と言われている。クルマの技術が発達し、安全運転のための補助システムは高度化しているが、最終的に身を守るのはドライバー自身の判断と操作であり、逃げ道の確保や全力制動の習熟が決定的な差になる。

文:中谷明彦/画像:ベストカーWeb編集部ほか

【画像ギャラリー】緊急回避には「経験」と「知識」の両者が必須!! クルマをよく知るにはメーカー主催の講習プログラムなどもオススメ!?(13枚)画像ギャラリー

プロでも一般でも求められる緊急回避能力

世界で初めて自動でブレーキ操作を行う衝突被害軽減ブレーキシステム「CMBS」を搭載したホンダ インスパイア
世界で初めて自動でブレーキ操作を行う衝突被害軽減ブレーキシステム「CMBS」を搭載したホンダ インスパイア

 緊急回避という言葉は、レースの世界ではごく当たり前の技術的対応として語られるが、一般公道においてもその対応力は無視できない。予期せぬ事態は、プロフェッショナルであれ一般ドライバーであれ、等しく発生し得る。

 飛び出し、急な車線変更、前方の停止車両や落下物。これらはすべて、瞬間的な判断と操作を要求されるシーンである。その際に最も重要なのは、「避けること」以前に「減速すること」だ。運動エネルギーは速度の2乗に比例して増加するため、衝突エネルギーはわずかな速度差でも劇的に変化する。

 つまり、たとえ完全停止に至らずとも、数km/hでも速度を落とすことができれば、被害を大幅に軽減できる。衝突被害軽減ブレーキ(AEB)はその理論を応用した装置であり、衝突を回避するためではなく、あくまで衝突エネルギーを「軽減」するためのものなのである。

 したがって、最終的な回避の責任は常にドライバーにあり、機械任せにする姿勢は危険だ。AEBを自動停止ブレーキと勘違いしている、あるいは勘違いさせたままにしておくのは極めて危険な状態と言える。

思いっきり踏むを理解する

全力で踏む、フルブレーキを試すといった経験を「練習」することが緊急回避の成功性を高める
全力で踏む、フルブレーキを試すといった経験を「練習」することが緊急回避の成功性を高める

  実際に緊急回避を成立させるには、「最大制動力を瞬時に引き出せるか」が鍵となる。多くのドライバーは、強くブレーキを踏んでいるつもりでも、実際には踏力が不足しており、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が作動するまで到達していない場合が多い。

 タイヤがロックする手前で最大の制動力を発揮するためには、ABS作動を前提とした“全力ブレーキ”が求められる。AMGやBMW Mなどメーカーが主催するドライバーズトレーニングプログラムでは、この「全力で踏む」動作を徹底的に体得させる。

 ABSが作動した状態でハンドル操作を加える訓練もあり、制動と操舵を両立させる技術を実体験し身につけることができ、これを一度体験すると、緊急時にどこまで踏み込めば最大減速が得られるか、身体が理解する。

 つまり、ブレーキペダルを踏み込む最大踏力を“知っているかどうか”が、緊急回避成功の分水嶺ともなるわけだ。

緊急回避は「事前」の予測が大事

最近では「煽り運転」がよく話題になるが、そもそも車間を空けることはモラルの問題ではない。安全運転のためにすべきことなのだ
最近では「煽り運転」がよく話題になるが、そもそも車間を空けることはモラルの問題ではない。安全運転のためにすべきことなのだ

 ただし、急ブレーキは自車の挙動だけでなく、後続車への影響も伴う。特に、後方車両との距離が詰まっている場合、前方障害を回避できても、後方から追突される危険性が高まる。そのため、日常走行時から常に「後方の車間」にも意識しておくことが重要だ。

 後続が大型トラックのように制動距離の長い車両である場合、自らの安全距離を確保していても、相手の制動力が足りなければ追突されるリスクがある。理想的には、そうした車両が接近してきた時点は進路を譲り、速度を調整して先に行かせる判断が望ましい。

 緊急時に備えるとは、単に反射的な操作を磨くことではなく、「危険が発生する前に逃げ道を確保する」という戦略的な運転意識を持つことに他ならないのだ。

次ページは : いざという時のため車間・車線・周囲の状況などを頭の中に!

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