ようやく気温も下がり、まもなく冬も本格化する。地域によっては、すでに降雪が確認されており、スタッドレスタイヤの準備を始めている方も少なくないだろう。だが、スタッドレスタイヤを装着すれば安心、という考え方は危険だ。タイヤは扱い方と知識次第で性能が大きく変わる。冬道で本当に安全を確保するにはどうすればいいのか!? 中谷明彦氏が語ってくれた!
文:中谷明彦/画像:ベストカーWeb編集部ほか
【画像ギャラリー】スタッドレスだからと過信は禁物! 冬の路面は変わりやすい! 深い知識と正しい運転でしっかり曲げて止める!!(16枚)画像ギャラリースタッドレスタイヤについてどれだけわかってる?
冬季における安全な走行を確保するうえで、タイヤ選択とその使い方は最も重要な要素の一つである。スタッドレスタイヤを装着し、その性能を最大限に引き出すためにはスタッドレスタイヤの構造的特性と物理的メカニズムを理解した運転操作が欠かせない。
単に「雪道用タイヤに交換したから安心」という認識では、雪道での安全な運転環境をすることはできないのだ。そこで、スタッドレスタイヤの技術的背景から、走行中に注意すべき操作上のポイントまでを整理してみたい。
かつて雪道用タイヤといえば、いわゆる「スノータイヤ」や「スパイクタイヤ」が主流だった。スパイクタイヤはトレッドに金属製のスパイクピンを埋め込み、氷結路面を機械的に引っかいてグリップを得る構造だったが、乾燥路面では舗装路を削り、粉塵を発生させるなど環境問題が発生し使用が全面的に禁止された。
以後はスパイクレス構造のスタッドレスタイヤが世界的に普及する。
そもそもスノータイヤとスタッドレスタイヤの違いって?
スノータイヤとスタッドレスタイヤの決定的な違いはコンパウンドとトレッドパターンの進化にある。スノータイヤは悪路向けの深いラグパターンを特徴とし、積雪を踏み固めて生じる「せん断抵抗」を利用して駆動力を得る構造だった。
しかし、氷結路面のように積雪よりも氷が主体の路面では効果が薄く、またトレッドゴム自体の柔軟性も不足していた。結果として氷上では接地面に発生する微細な水膜を除去できず、滑走を招きやすかったと言える。
一方、現代のスタッドレスタイヤは、サイプ(細溝)加工と高吸水性コンパウンドの採用によって、スパイクに頼らずとも氷結面での摩擦を確保する。サイプとは、トレッドパターンのブロックに無数に刻まれる微細な切れ込みであり、これが氷上の薄い水膜を吸い込み、タイヤと路面の間の「潤滑層」を減らす役割を果たす。
さらに、走行中にサイプ部が変形・倒れ込みながらエッジを立てることで、氷面を引っかく「エッジ効果」も生じる。この二重の作用が氷結路面でのグリップを成立させているわけだ。加えて、吸水性ゴム技術の進化も見逃せない。
トレッドコンパウンド内部に無数の微細な空孔を設け、そこに水分を一時的に取り込むことで、タイヤ接地面のドライ化を促進する。氷上で滑る原因は、氷が融けて生じるミクロの水膜によるものであり、それをいかに効率的に排除できるかが性能の鍵を握る。
長持ちさせるのも決して簡単ではない
マイナス20℃を下回るような極寒地では、水膜がほとんど発生しないため、極端な話し夏タイヤでもある程度のグリップを得られることがある。しかし、日本の本州域では日中の気温変化により融解と再凍結が繰り返され、湿度も高く、水膜の存在が顕著になる。
ゆえに、水分除去能力の高度な維持が安全走行の前提条件となる。
スタッドレスタイヤの性能を損なわずに走行するには、サイプの微細構造を保護する運転が求められる。一般道では乾燥舗装、圧雪路、氷結路、シャーベット状路面といった異なる路面が頻繁に切り替わる。
こうした環境下で高速走行や急激な操舵、急制動を繰り返すと、サイプが摩耗・変形し、本来の氷上性能を早期に失うことになる。特に乾燥路での過度な高速走行は、摩擦熱によってゴムの摩耗を促進し、柔軟性を低下させ、ブロック剛性を変質させてしまうのだ。
スタッドレスタイヤの寿命を延ばすには、舗装路では丁寧な操作と穏やかな加減速を心掛けることが重要なのだ。 また、コーナリング中の挙動にも特性の違いが現れる。スタッドレスタイヤはサイプ量が多く、ブロック剛性が低いため、操舵入力に対して車両のヨーレート発生がワンテンポ遅れる傾向がある。



















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