じつはかなり繊細なスタッドレスタイヤ
言い換えれば、ステアリング操作と車体の旋回挙動との間に「時間差」が生じる構造的特性を持つ。このため、夏タイヤと同じ感覚で舵を切ると、アンダーステア傾向となり、さらに操舵入力を与えると過大なヨー慣性を後輪に生じてしまいやすい。
特に氷結路では一度スリップが始まるとトレッドパターンにスリップアングルが付き、設計通りの排水が得にくくなる。そんな状態では修正舵も効きにくくなるため、早めの操舵・小舵角操作が理にかなっている。
ブレーキングも同様で、スタッドレスタイヤはブロック変形による摩擦の立ち上がりが緩やかである。したがって、ABS作動域に入る前の0.1G前後の微細な荷重移動コントロールが求められる。急制動による荷重移動は期待できず、氷上ではむしろ制動距離を伸ばす結果となる。滑り出す直前のグリップ限界を感じ取る感性が重要であり、電子制御を介入させないような運転操作が必要なのだ。
いかに正しい運転操作を行っても、タイヤ自体の状態が劣化していれば性能は発揮されない。スタッドレスタイヤは柔軟性を保つことが性能維持の根幹であり、紫外線と高温多湿環境の影響を受けやすい。
夏季の保管時には、直射日光を避け、できれば遮光性の高いタイヤバッグに収納し、通気のよい冷暗所に置くことが望ましい。タイヤワックスなどの油性被膜はゴムの可塑剤を侵食する恐れがあるためトレッド面への使用は避けたい。
コンパウンドへの注意を怠るなかれ!
また、タイヤの保管姿勢にも注意が必要で、ホイール付きの場合は横置き、ホイールなしでは縦置きでタイヤに荷重をかけ続けないように置くのが基本である。一般的に、スタッドレスタイヤは使用開始から3シーズン(約3年)を過ぎると、ゴムの硬化とサイプの摩耗が進み、氷上性能が急激に低下する。
残溝が十分でも、コンパウンドの柔軟性が失われていれば交換を検討すべきである。冬期の朝夕で気温変化が大きい地域ほど劣化は進行しやすく、保管環境と使用期間の両面から管理することが求められる。
スタッドレスタイヤは、氷雪路に特化したトレッド設計のため、排水性能に関しては夏タイヤより劣る。サイプ構造が密集していることで排水路が細分化され、水の排出経路が複雑化しているためだ。特に高速域では水の排出が追いつかず、ハイドロプレーニング現象が発生しやすくなる。
万能という過信は禁物 リスクの考慮が肝要
この傾向はトレッドパターンにも起因する。スタッドレスタイヤは氷上での接地性を優先するため、横方向の排水性が犠牲になりやすい。オールシーズンタイヤなどでは近年、V字パターンや非対称デザインによって遠心力で水を側方に逃がす工夫がなされているものの、完全ではない。
ブレーキング時には、トレッド中央に水が集まりやすく、制動力が不安定になってしまうからだ。したがって、ウェット路走行時には速度を抑え、早めの減速を心掛けることが基本である。特に高速道路でのウェット路面では、車速を10〜20%抑制するだけでもハイドロプレーン発生リスクは大幅に低減する。
冬季の雨天走行では「スタッドレス=万能」ではないという認識を持つことも、最も実践的な安全策といえる。



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