鈴鹿で劇的勝利! 岩佐歩夢らが示した“海外で伸びる若手ドライバー”と日本モータースポーツの課題

鈴鹿で劇的勝利! 岩佐歩夢らが示した“海外で伸びる若手ドライバー”と日本モータースポーツの課題

 2025年11月22日~23日に鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権 第10・11・12戦で、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)が見事な大逆転でドライバーズチャンピオンを獲得した。白熱した3連戦からは、日本のコンストラクターとレーシングドライバーが今後取り組むべき課題、そしてスーパーフォーミュラというカテゴリーにさらに求めたいポイントが見えてきた。その核心にしっかり踏み込んでいく。

文:段 純恵/写真:JRP、RedBull、トヨタ

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岩佐歩夢、鈴鹿で”真価”爆発! 日本ドライバーが抱えるリアルな課題とは

写真左から佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。3人ともホンダ所属ドライバーで、世界で戦った経験を持つ
写真左から佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)、岩佐歩夢(TEAM MUGEN)、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)。3人ともホンダ所属ドライバーで、世界で戦った経験を持つ

 全日本スーパーフォーミュラ選手権に新チャンピオンが誕生した。昨年から同シリーズに参戦し、今季はF1レッドブルレーシングとRB・フォーミュラワン・チームのリザーブドライバーも務めた岩佐歩夢(無限)だ。

 岩佐の力量をここで改めて紹介する必要はあるまい。もちろんドライバーとして磨きをかける余地はある。だがそれは岩佐がもっと磨ける『玉』ということで、その場はもはや国内ではない。

 これは岩佐に限った話ではなく、この週末、鈴鹿で行われた3レース(第11、12戦に加え気象不良で中止になった第10戦の決勝)で、目の覚めるような鋭いパッシングを何度も見せた太田格之進(ダンディライアン)と、第10戦で抜群のスタートを決めて先頭を奪い、そのままスーパーフォーミュラ初優勝を遂げたルーキーのイゴール・オオムラ・フラガ(ナカジマ)にも当てはまるように思う。

第10戦で初優勝を飾ったイゴール・オオムラ・フラガ(写真左)と中嶋悟総監督(右)。フラガはもともとeスポーツ出身だが、海外レースを経験し、スーパーGTなどでも腕を磨いた
第10戦で初優勝を飾ったイゴール・オオムラ・フラガ(写真左)と中嶋悟総監督(右)。フラガはもともとeスポーツ出身だが、海外レースを経験し、スーパーGTなどでも腕を磨いた

 というのもホンダ陣営のこの3人、岩佐は言わずもがな、太田は今季米IMSAにスポット参戦しており、フラガも下位カテゴリー時代に海外で揉まれている。

 日本の頂点を目指すのも結構だが、すでに海外を経験している彼らの場合、日本に比べ何かと厳しい環境に身を置くほうがさらなる進化、成長が期待できるように思えるのだが、今のところホンダが年間を通して彼らの海外シリーズ参戦を後押しするという話は聞こえてこない。

ホンダ育成の限界? 若手がトヨタへ流れる“本当の理由”

現在去就が注目されている角田裕毅だが、スーパーフォーミュラやスーパーGTを経験せず、FIA F2から直接F1に昇格した経歴を持つ
現在去就が注目されている角田裕毅だが、スーパーフォーミュラやスーパーGTを経験せず、FIA F2から直接F1に昇格した経歴を持つ

 一昨年あたりから国内で活動するドライバーがホンダ陣営からトヨタ陣営へ移籍する例が目につく。トヨタが『囲い込み』を図っているとかギャラで釣っているとか、口さがない噂も耳にするが、そんなことがスクール時代から縁のある陣営からの離脱を決断する大きな要因になるとは筆者には思えない。

 若く才能ある選手なら一度は海外を目指し、そこでの活躍を夢見るのは当然のことだ。ホンダの場合、中嶋悟氏の時代から国内レース ⇒ F1への道筋が規定路線となっているが、実際はもう何年も前からそのルートが機能しているとは言い難い。

 角田裕毅もホンダスクールの卒業生だが、国内トップカテゴリーを経験せず『海外直送』でF1のシートに収まった。元をたどればミナルディだったチームで丸4年を過ごし、今季途中でレッドブルに昇格したものの結果はご承知のとおり。

 不運続きは気の毒だが、そもそもミナルディに4年も在籍するなど筆者がガチで取材をしていた頃のF1ではあり得ない話だ。楽しいチームの冗談のようなマシンでも輝きを放ったフェルナンド・アロンソやマーク・ウェバーはあっさり1年でミナルディを卒業している。

次ページは : トヨタが若手を世界へ送り出す力――平川亮が示した新しいF1への道

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