速さは、一発のタイムだけで決まるものではない。程度の差はあれど、クルマ好きなら一度は耳にしたことがあるであろう「ランサーエボリューションVSインプレッサ」の神話。それはラリーだけでなく、スーパー耐久の場でも同じであった。スペック表だけでは見えない名ライバル同士の戦い、そして“強いクルマ”の条件をレーシングドライバー中谷明彦氏が語る。
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部、富士スピードウェイ、モビリティランド、三菱、スバル
【画像ギャラリー】えぇ、ラリーアートもあったの!? 希少なランエボワゴンやなつかしのインプレッサを大公開!(21枚)画像ギャラリー本当の「強者」とは進化を続けられるクルマのことだ
スポーツカーの優劣を語るとき、多くの人は最高出力や最高速度、あるいはニュルブルクリンクなどサーキットでのラップタイムを比較する。
しかし、モータースポーツの現場に身を置いてきた経験から断言できることがある。本当に強いクルマとは1周だけ速いクルマではない。進化を続けられるクルマこそが、本当の意味で強いのである。そのことを最も強く実感したのが、スーパー耐久シリーズで戦った三菱 ランサーエボリューションとスバル インプレッサWRXのライバル関係だった。
1998年、ランサーエボリューションVの登場とともにスーパー耐久へ本格参戦した。それ以前は三菱 GTOでGT-Rを追い続けていたが、3L V6ツインターボを搭載したGTOは高い戦闘力を持っていたが大排気量ゆえの重量ハンディキャップは大きく、GT-Rを打ち破るには膨大な開発コストと時間が必要だった。
そこで白羽の矢が立てられたのがランサーエボリューションへの車両スイッチだ。2L直列4気筒ターボを搭載する四輪駆動セダン。当時のスーパー耐久ではGTOより一つ下のクラスに属していた。しかし、エボリューションVの開発段階からそのポテンシャルを熟知していた我々は「クラス2の車両でありながら、条件次第ではクラス1のGT-Rとも戦える」と確信していたのだ。
「R」伝説に引けをとらない電子制御の「ランエボ」
その読みは間違っていなかった。デビューイヤーのエボリューションVは、トラブルさえ起こさなければGT-Rにも負けないと言えるほどの速さを示し、クラス優勝を重ねた。続くエボリューションVI、VI TMEでもその強さは揺るがなかった。
しかし、その間にもGT-RはR33からR34へと進化を遂げる。車体剛性、空力性能、エンジン制御、あらゆる要素が磨き上げられ、総合優勝争いでは性能差が次第に広がっていった。
それでもランサーエボリューションには勝機があると考えていた。理由は電子制御技術にある。アクティブセンターデフ(ACD)はセンターデフの締結力を自在に制御し、路面状況や走行状態に応じて最適な作動差制限力を実現する。
さらにアクティブヨーコントロール(AYC)は後輪左右の駆動力を積極的に配分し、コーナリング中の旋回性能を飛躍的に向上させた。当時としては世界最先端とも言える四輪制御システムであり、特に雨や低μ路では絶大な威力を発揮した。
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