ホンダ育成の限界? 若手がトヨタへ流れる“本当の理由”
一昨年あたりから国内で活動するドライバーがホンダ陣営からトヨタ陣営へ移籍する例が目につく。トヨタが『囲い込み』を図っているとかギャラで釣っているとか、口さがない噂も耳にするが、そんなことがスクール時代から縁のある陣営からの離脱を決断する大きな要因になるとは筆者には思えない。
若く才能ある選手なら一度は海外を目指し、そこでの活躍を夢見るのは当然のことだ。ホンダの場合、中嶋悟氏の時代から国内レース ⇒ F1への道筋が規定路線となっているが、実際はもう何年も前からそのルートが機能しているとは言い難い。
角田裕毅もホンダスクールの卒業生だが、国内トップカテゴリーを経験せず『海外直送』でF1のシートに収まった。元をたどればミナルディだったチームで丸4年を過ごし、今季途中でレッドブルに昇格したものの結果はご承知のとおり。
不運続きは気の毒だが、そもそもミナルディに4年も在籍するなど筆者がガチで取材をしていた頃のF1ではあり得ない話だ。楽しいチームの冗談のようなマシンでも輝きを放ったフェルナンド・アロンソやマーク・ウェバーはあっさり1年でミナルディを卒業している。
トヨタが若手を世界へ送り出す力――平川亮が示した新しいF1への道
翻ってトヨタだが、2009年末のF1撤退後も、WECやWRCそしてアメリカのレースを通して世界的なモータースポーツと関わり続け、その存在感を高めると同時に国内で一閃の光を放った若手選手に海外へのチャンスを与えている。その最大の成功例が平川亮だ。
WECの正ドライバーに抜擢された2022年にル・マン24時間制覇の一員となったほか、これまでに3度WECの頂点に立っている平川が2024年にF1のテスト/リザーブドライバーになったことは、国内で活動するドライバーたちにとってある種ショッキングな出来事だった。ホンダ陣営にいなくてもF1を目指せることが証明されたからだ。
言うまでもなく、平川のF1挑戦はトヨタの理解と応援がなければ実現しなかったろう。だがそれだけであの狭く重い門が開くほどF1は甘くない。
スーパーフォーミュラ時代からタイヤの扱いひとつをみても群を抜く上手さで『別格』ぶりを発揮していた平川だが、WECに行ってからも、ミニマムで500通り以上あるレース中のマシンのマップを無線で的確に受け取り即座に走りに移す英語力とドライビングセンス、加えてチームスタッフとの円滑なコミュニケーションを図る親和力を身につけるのにたゆまぬ努力を重ねていたことは想像に難くない。
スーパーフォーミュラはもっと面白くなる! タイヤ改革とルール変更の提案
今季スーパーフォーミュラは関係者の努力と工夫が実り、昨季より観客数も増え、世間への周知、認知、人気も高まっていることが、サーキットにいても肌で感じられた。それによって眼の肥えたファンも確実に増え、今回鈴鹿の展開されたハイレベルなバトルに対する賞賛の声がSNSなどで上がっていた。
レースの面白さに目覚めたファンの期待に応えるなら、スーパーフォーミュラのレースをさらに面白くする必要がある。そのためにも筆者は、レース距離やタイヤの規定を変更を提案したい。
周回数の変更はマシン構造に関わることなので難しいというなら、タイヤ交換なしで走りきるのはどうだろう。欧州のステップアップカテゴリーで使われているような、使い始めは岩のようにガチガチなのに崖がきたら一気にタレ始めるといったトンデモないタイヤを横浜ゴムに作ってもらえば、各チームのレース戦略やセッテイングの違いも今より出てくる。
何よりドライバーの腕の違いがハッキリすることは『Human』を掲げるカテゴリーに相応しいはずで、今のようにタイヤがタレる前に交換していては、チーム戦略の差は見えてもドライバーの腕の違いが出る前にレースが終わってしまう。
これまで海外からやってきたドライバーたちがなぜスーパーフォーミュラでいきなり活躍できたのかというと、彼らが海外で『ドライバー泣かせ』のタイヤを経験してきたことが大きい。
本当の輝きを持つドライバーは、タイヤの状態に関係なく安定したラップタイムを刻み、崖状態にあっても乾坤一擲のパッシングを躊躇わずに成功させる。それは道具の安全性とは別次元の話だ。
国内で活動するドライバーの中にもアロンソやウェバーや平川に続く選手は必ずいる。彼らの実力を、レースを通して証明すことも、国内最高峰カテゴリーの存在意義ではなかろうか。



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