「長時間労働の是正」「正規・非正規雇用の格差解消」「多様な働き方の推進」などを謳って2024年4月に施行された「働き方改革関連法」。
施行から早くも2年以上が経過したが、トラック輸送の現場から未だ芳しい声は聞こえてこない。ベテランドライバーの菊地さんの証言である。
文/ベテランドライバー菊地さん、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
現場のリアルな声に耳を傾けて欲しい
ハンドルを握りながら、最近のニュースや世間の騒ぎを聞くたびに、どうしてもモヤモヤしたものが溜まってしまいます。
ほんの2年前、「物流の2024年問題」だの「人手不足」だのと、いかにも社会の一大事のように大騒ぎしていましたが、実際に今もその現場の真ん中でアクセルを踏み、ハンドルを切っている私たちドライバーから見れば、ピントがズレた他人ごとのようにしか聞こえないというのが本音です。
世間では相変わらず「運転手不足で荷物が届かなくなる!」とか、「今、運転手は売り手市場だ!」とか、「働き方改革でドライバーの労働環境が良くなった」なんてニュースが流れています。
ですが、現場の仲間たちとトラックステーションで顔を合わせれば、そんな景気のいい話は誰も口にしません。口を開けば出てくるのは、「おい、来月の給料どうなるんだよ」「また手取りが減ったぞ」という溜息ばかりです。
一体、誰のための、何のための「働き方改革」だったのでしょうか?
時間を削られたのに生活は楽にならない矛盾
確かに、残業時間の規制が入って、以前のようにむちゃくちゃな長距離を走らされることは減りました。それは体力的にはありがたいことです。ですが、基本給が底上げされないまま走れる時間が削られた結果、何が起きたかというと、ガッツリと手取りが減ってしまいました。
ローンの支払い、子どもたちの学費、高騰し続ける燃料費や日用品の物価……。生活を維持するためには、これまで以上に効率よく走るか、別の副業を考えなきゃやっていけません。
世間は「ホワイトになってよかったね」と簡単に言いますが、稼ぎが減って家族を養うのがやっとの現状を、どう説明してくれというのでしょうか。
それに、一番腹が立つのは「荷主と運送会社の力関係」が何も変わっていないことです。
「時間外規制を守れ」と国や元請けは口うるさく言うくせに、荷主の現場に行けば「まだ荷物が積めないからあっちで待ってて」と平然と何時間も待たされます。待たされているその時間も、労働時間や拘束時間として厳しく管理されます。
こっちはスケジュールがカツカツで焦っているのに、まるで「待たせるのが当たり前」のような空気感は、昔からそれほど変わっていません。
「適正な運賃や料金を払ってほしい」と声を大にして言えば、「じゃあ他の安い会社に変えるよ」と仕事を奪われる恐怖が常につきまといます。トラックGメンなんて存在も現れましたが、私たちの目の前の理不尽が、そんな行政のパトロール一つで劇的に変わるとは到底思えません。
「好きで選んだ仕事」だからこそ、誇りを持ちたい
「そんなにキツイなら、辞めて別の仕事を探せばいいじゃないか」と言われることもあります。
しかし、私たちはこの大きな相棒(トラック)を動かし、日本中の産業や暮らしの隅々までモノを届けているというプライドを持ってこの仕事をしています。スーパーの棚に並ぶ食料品も、工場に届く部品も、私たちが夜を徹してハンドルを握らなければ、日本の経済は一瞬で止まってしまいます。
その自負だけが、キツい現場で踏ん張るためのエンジンでした。まぁ、建て前ですが……。本音は、他の仕事には興味がないだけです。
本当のトラックドライバーは、ただドライブが好きなだけなんです。好きでもないのにやっているなら、それはただ、好きな仕事を選ぶ能力が無いだけの話。とにかく、このままだとどうなるでしょうか?
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