2025年1月のオートサロンで公開された注目を集めたGRヤリスMコンセプト。フロントにあるエンジンをシートより後ろに配置する刺激的な試みで、これがスーパー耐久を走るということで、来場者から大きな期待を寄せられていた。そんなGRヤリスMコンセプトは10月の第6戦 岡山でついに走った! その様子をトヨタが大好き! でおなじみの大学生くま吉くんに探ってもらったぞ。
文:大学生くま吉くん/写真:大学生くま吉くん、ベストカーWeb編集部、トヨタ
オートサロンでも話題になったアノGRヤリスがついに走る!
「神に祈る時間をゼロへ」、その思いから生まれた一台のミドシップスポーツカー、GRヤリスMコンセプトが、ついにサーキットを走った。
2025年10月末、岡山国際サーキットで行われたスーパー耐久シリーズ。その決勝日、ようやくTGRRカラーをまとったGRヤリスMコンセプトがコース上で動き出したのだ。
エキゾーストから響く新型エンジンの心地良い音、そしてコーナーを軽快に駆け抜けていく姿。
今年1月、東京オートサロンの壇上でGRカンパニー高橋智也プレジデントが宣言した“あの約束”が、ようやく果たされた瞬間だった。
しかし、ここまでの道のりはそう甘くはなかった。当初はスーパー耐久オートポリス大会でのデビューが予定されていたが、GRヤリスMコンセプトの姿は見られなかった。ではなぜ、GRヤリスMコンセプトはS耐オートポリス大会を走れなかったのだろうか。そして、10月末の岡山大会では何が変わったのか。
その答えを求め、筆者は九州・オートポリスと岡山国際サーキット両方のパドックへ。その現場でGRヤリスの担当エンジニアが語った“走れなかった理由”と開発陣の本音。今回はその全貌をお届けする。
GRヤリスMコンセプトの成り立ち
まず初めに、GRヤリスMコンセプトの成り立ちを整理したい。
GRヤリスMコンセプトは、その名の通りミッドシップ化されたGRヤリスだ。トヨタのマスタードライバーを務めるモリゾウさんは、かねてより雪上におけるGRヤリスの挙動について「0コンマ何秒か“神に祈る時間”がある」と語っていた。
その“神に祈る時間”を無くすために試行錯誤した結果、「エンジンをクルマの後ろ側に置くことになった」そう。「速さを求めて行ったらリアシートが消えたGRカローラモリゾウエディション」の時にも感じたが、そんなエピソードが出てくる今のトヨタは流石だ(笑)。
そしてGRヤリスMコンセプトの心臓部に搭載されるのは、トヨタが新開発中の2L 4気筒ターボエンジン。2024年のラリージャパンで中嶋裕樹副社長が「水平対向エンジンやロータリーエンジンのようにモリゾウさんに遺したいと思わせるエンジンを作ります!!!」と語っていた、あの新世代エンジンだ。
フロントエンジンベースの車両ならではの苦戦?
そもそもGRヤリスという車は、フロントにエンジンを積むことを前提にすべてが設計されており、それを無理やり“ミドシップ”に変えたとなれば、当然さまざまな無理や矛盾が出てくる。
実際、GRヤリスの担当エンジニアは、GRヤリスMコンセプトがオートポリスを走れなかったことには主に2つの問題があることを語った。
まず一つ目の問題はズバリ「熱」だ。
GRヤリスのミドシップ化に伴ってエンジンが車体後方に移動したことで、「冷たい空気をエンジンに取り込むのが難しい」ことを教えてくれた。
通常のGRヤリス(フロントエンジン4WD)であれば、フロントのグリルやダクトから冷たい空気を取り入れてエンジンを冷やすことができる。しかしGRヤリスMコンセプトはミドシップ。車体後方に配置されたエンジンに効率よく冷気を送り込む手段が限られており、オーバーヒートのリスクが極めて高く頭を悩ませているそうだ。
GRヤリスの担当エンジニアは「頭に冷えピタを貼っているようなもの」と表現した。オイルクーラーの改善など、開発陣はありとあらゆる手を尽くしたが、最後まで熱対策の壁は突破できなかった。
速さの裏に潜む挙動の“違和感”
もう一つの問題が、重量バランスとコーナリング時の挙動だ。
もともとGRヤリスは、フロントエンジンを前提に開発されたクルマだ。そのため、重量配分や駆動系統もそれに最適化されている。しかしGRヤリスMコンセプトでは、比較的重たいエンジンが後ろに載ることで、コーナーの立ち上がりでリアの挙動が不安定になる傾向が出たという。
具体的には「コーナー入口の回頭性はすごくシャープで、気持ちよく入っていくのだけど、立ち上がり時にリアが慣性の法則で外に飛んでいこうとする」とのこと。この課題は新たな挑戦だからこそぶつかっている壁であり、よくモリゾウさんが仰られている「もっといいクルマづくり」の醍醐味なのかもしれないと筆者は感じた。
遂に走ったMコンセプト!! 担当エンジニアが語る進化!
この悔しい欠場から3カ月。遂に出走を果たしたスーパー耐久岡山大会で、GRヤリスMコンセプトはどのような進化を遂げていたのだろうか。
まず、この見た目からご覧いただきたい。見ていただくと分かる通り、全体的にかなりワイドになり、冷たい空気を取り込むための穴が非常に増えていることが見て取れるだろう。
特にこの車幅の広さ、従来のGRヤリスMコンセプトはノーマルのGRヤリスの面影を残しているのに対し、今回のはどちらかというと「GRヤリスを魔改造したクルマ」だと第一印象としては率直にそう感じた。
次にGRヤリスMコンセプトが抱える熱問題、そして不安定な挙動についてスーパー耐久岡山大会の現場でGRヤリスの担当エンジニアにお話を聞いてきたので紹介していく。
まずは7月のオートポリス大会でも語っていた熱問題について聞いたところ、まず大きな改良点として挙げられたのがフロントやリアに追加された多数のダクトだ。
GRヤリスの担当エンジニアによると、これらのダクトは主にエンジンやラジエーターを冷やすために追加されたものだという。
具体的には、車体サイドに設けられた開口部がエンジン本体を直接冷やし、さらにフロントボンネット上の新たなダクトが、従来のエンジンルームに新設された超大型ラジエーターに向けて冷気を送り込む構造にすることで、GRヤリスMコンセプトが苦戦していた熱問題の解決を目指してるそうだ。
実際、岡山大会は比較的涼しい気温だったこともあるが、現場の様子やチームの話を聞くかぎりでは、熱問題による走行中断や大きなトラブルは見られなかった。
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