高速道路を走る以上、誰にとっても決して他人事ではないのが「クルマの停止」である。その際に設置が義務付けられているのが三角表示板だが、実は新車購入時に標準装備されているケースはほとんどない。高価な商品ではないが、安全装備としては必要不可欠とも言える。にもかかわらず、なぜ三角表示板はいまだオプション扱いのままなのか? 本稿では、高速道路でクルマが止まることの本当の危険性と三角表示板が果たす役割、そしてメーカーが標準装備に踏み切らない理由について、改めて整理してみたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobestock(トップ写真:pictworks@Adobestock)、ベストカーWeb編集部
高速道路で止まるなら必須! 三角表示板の重要性を再確認
高速道路でクルマを停車させる場合、三角表示板の設置は法律で義務付けられている。教習所や免許更新時の講習で聞いた記憶がある人も多いはずだ。
改めて確認しておくと、この表示義務を怠ると「故障車両表示義務違反」となり、反則金と違反点数が科せられる。反則金は大型車が7000円、普通車および二輪車が6000円、違反点数は1点である。
もっとも、高速道路上でトラブルに遭遇する機会はそう多くない。そのため、三角表示板の存在を日常的に意識しているドライバーは少数派だろう。しかし、いざ高速道路でクルマを止めざるを得ない状況になった際、三角表示板がなければ道路交通法違反になるだけでなく、追突事故のリスクが一気に高まる。
その危険性を強く印象づけたのが、2017年6月に東名高速で発生した煽り運転死亡事故である。追い越し車線上で無理やり停車させるという極めて危険な行為が悲惨な結果を招いたが、たとえ故障であっても、高速道路の本線上で停止すれば事故につながる確率は極めて高い。
追突事故を防ぐためには、路肩であっても高速道路で停車する際は、50m以上後方に三角表示板を設置することが望ましい。これはJAFも推奨している距離だ。
「止まっているのだから安全」と思いがちだが、それは大きな誤解である。時速100kmでクルマが流れる高速道路では、停止している車両との相対速度は100km/hにもなる。自分から何かに衝突しなくても、後続車に追突される危険性は一気に高まる。だからこそ、高速道路で停車する際の三角表示板による注意喚起は不可欠なのだ。
重要なのに、なぜ三角表示板は標準装備されないのか?
ここで素朴な疑問が浮かぶ。「これほど重要な装備なのに、なぜ三角表示板は新車に標準装備されないのか?」という点である。
三角表示板の価格は高くても3500円程度。自動車メーカーが大量に調達すれば、原価は数百円レベルになると考えられる。
同じ非常用信号器具である発炎筒は、これがないと車検に通らない(道路運送車両の保安基準 第43条の2)ため、新車に標準装備されている。それならば、三角表示板も同様に扱えばよいのではないか、と思うのが自然だろう。
メーカー側が理由としてよく挙げるのが、「三角表示板は半永久的に使える」という点である。
発炎筒は化学製品のため有効期限が4年と定められた消耗品だが、三角表示板は一度購入すれば長期間使用できる。そのため、クルマを買い替えるたびに標準装備すると、すでに持っているユーザーに重複した出費を強いることになる、という考え方である。
確かに無駄な出費を避けたいという点では理解できる理屈だ。しかし、この前提はそろそろ見直す時期に来ているのではないだろうか。
三角表示板の設置義務が定められたのは、1978年5月の道路交通法改正から。当時は4000〜5000円程度と高価で、使い回すのが一般的だった。
しかし現在では、amazonで検索すると2000円以下で2000円以下で国家公安委員会認定品が簡単に手に入る。設置義務が始まってから40年以上が経過し、安全意識も製品コストも大きく変わっているのだ。





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