近頃、街中で一気に存在感を増した電動キックボード。免許不要で気軽に乗れる「特定小型原動機付自転車」だが、その裏で信号無視や飲酒運転など危険行為が急増し、ついにはクルマの免許停止にまで発展するケースも出てきた。これは一部の利用者だけの問題ではない。実はクルマを運転する多くの人にも直結する話なのだ。数字で見る違反の実態と、なぜ“免許不要でも免停になるのか”。知っておかないと損する電動キックボードの落とし穴を徹底解説する。
文:佐々木 亘/写真:Adobestock(トップ画像:taka@Adobestock)
電動キックボードでの飲酒運転が増えすぎ

運転モラルの低さが非常に気になる電動キックボード。運転免許なしで運転できてしまうため、交通ルールを守るという意識すらないのかもしれません。危険な運転は全国各地で報告されており、今や社会問題となりつつあります。
警察庁によると2024年の1年間で、電動キックボードの交通違反による検挙件数は4万2126件にものぼるとのこと。
違反別に見てみると、通行区分違反が2万4628件、信号無視が9838件、一時不停止が2643件などです。検挙されている数がこのくらいということは、実際に違反している数は2倍にも3倍にもなる可能性があります。これだけの数の交通違反が、日本全国で日々起こっているということです。
最近では、電動キックボードによる交通違反を起因にした、免許停止処分も増えてきています。2025年では、1~9月に80件の免停処分があり、違反別に見てみると、飲酒運転が77件でした。ちなみに2024年は7件で、飲酒運転が4件という数字です。
昨年の10倍以上の免許停止処分が行われている電動キックボードの利用者。もはや交通安全の意識の低下だけではない、大きな問題が潜んでいるのでしょう。
免許不要でもなぜ免停になるのか?

免許不要で乗れる電動キックボードですが、なぜ免停になるのか、その理由を見ていきましょう。道路交通法には次のような条文があります。
・第103条第1項
免許を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなった時は、その者が当該各号のいずれかに該当することとなった時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
●第8号
前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがある時。
※条文を一部抜粋しました。
条文を掻い摘んで解説すると、運転免許保有者が、電動キックボードや自転車などの免許が必要のないものを運転している場合でも、悪質かつ危険な行為をした場合には、交通モラルや運転適性が低いため、将来自動車でも危険な行為をするであろうと判断されて、免許を取り消したり停止したりすることがあるということです。
免許とは、本来できないことを許可された証であり、自動車運転というのは特別な許可を得て行っていることになります。こうした意識が、多くの人が持っている自動車運転免許では薄くなってしまい、クルマよりももっと安全な自転車や電動キックボードなどで、悪質かつ危険な運転を行うということに繋がってしまうのでしょう。
こうした人はクルマを運転する資格もないと判断されて然るべきですから、運転免許停止という処分も相応だと筆者は考えます。
2026年からは、自転車の交通違反にも自動車と同様に青切符が導入。重大な事故につながる危険のある交通違反や、警察の指示に従わず違法行為を続ける行為が検挙の対象となります。
電動キックボードも自転車もクルマも、すべては「車両」であり、交通ルールを遵守した上で運転することが求められます。全てのクルマを運転する時には、飲酒運転はもってのほか。電動キックボードでも、絶対にやったらイカンのです。
【画像ギャラリー】電動キックボードで免許停止に! モラルが低い利用者は痛い目を見る道路交通法(4枚)画像ギャラリー






コメント
コメントの使い方