消費者にとっては黄色いトラックと郵便小包のイメージが強いDHLだが、世界最大規模の運送会社としてほかにも様々なモノを運んでいる。同社は、その年に運んだ変わった積荷を「特別レビュー」として毎年年末に公開している。
DHLが2025年に運んだ変わった積荷を通じて、当り前のようで当り前ではない「運ぶ」という仕事について考えてみてはいかがだろうか?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Deutsche Post AG
DHLが年末恒例の特別レビュー
DHLは年末恒例となっている特別レビューとして「2025年の最も変わった積荷」を2025年12月8日に発表した。
世界有数の物流プロバイダーであるDHLといえば、消費者としては小口貨物を配送する黄色いトラックや航空機、輸送用のコンテナを思い浮かべるかもしれない。ただし、それは同社が運んでいる貨物のほんの一部に過ぎず、郵便小包以外にも様々なモノを運んでいる
特別レビューでは、17頭の希少なアンテロープ、救助されたヒヒ、総重量37トンのアート作品、F1世界チャンピオンのサイン入りヘルメット、クラブサッカーの優勝トロフィーまで、DHLが2025年に運んだ驚くべき貨物を5つ紹介している。
米国からケニアへ 珍獣「ボンゴ」を本来の生息地に
2025年2月、DHLはとても珍しいアンテロープである「マウンテンボンゴ」17頭を米国からケニアに運んだ。野生での絶滅を防ぐための取り組みとして、フロリダ州ロクサハッチーの保護センターから、アフリカ大陸で2番目に高い山であるケニア山の野生生物保護区まで、1万3000kmの旅だ。
17頭は、1970年代にケニアから移送されたマウンテンボンゴの子孫となる。密猟と森林破壊、生息地の分断などにより絶滅の危機に瀕しているボンゴは生息数が急激に減少しており、野生での生息数は今や100頭未満となっている。
フロリダ生まれのボンゴの安全と快適な旅を確保するため、DHLは動物保護団体から提供された特注の木箱を備える専用便を用意し、獣医師とボンゴの専門家2人によるケアも付けた。保護区はボンゴが繁殖できる安全な環境を提供するもので、米国で育ったボンゴの子孫たちは、本来の生息地であるケニアの山林で野生への復帰を目指すことになる。
シューマッハに会うため世界を旅したヘルメット
2025年3月、スイスからブラジルまで、一つのヘルメットが大陸を股にかけた旅に出た。この旅を通じて、存命中の「フォーミュラ1(F1)」チャンピオン20人のサインがヘルメットに書き込まれ、モータースポーツ史における特別な一品となった。
中には、少し歪んだサインがある。7度のF1世界チャンピオンに輝き、2013年のスキー事故で重傷を負って公の場から姿を消していたミハエル・シューマッハ氏のサインだ。妻のコリーナさんが、イニシャルの「MS」をヘルメットに書き込むのを手伝ったという。
このヘルメットのレプリカはチャリティ団体「Race Against Dementia(認知症と戦うレース)」への資金提供のため抽選会の賞品となった。同団体は3度のF1世界チャンピオンとなったジャッキー・スチュワート卿によって設立されたもので、認知症の予防と治療に資金を提供している。
DHLはF1のスポンサーであり輸送プロバイダーも務めている。ヘルメットは厳重なセキュリティ対策のもと、それぞれのチャンピオンの自宅まで輸送され、サインを記入してもらった。輸送ルートにはスペインのイビザ島やイギリスのロンドン、ブラジルのブラジリアなども含まれていた。

