「ニュルで鍛えた」「ニュル最速」という言葉が、クルマの開発や販売にとって、なぜこれほどまでに特別視されるのか。その舞台は、単なる速さを競う場所ではない。走れば走るほど難しさが増し、クルマの本性が容赦なくあらわになる。世界中のメーカーがここを避けて通れない理由をレーシングドライバーとしてニュルを走り、クルマの開発にも関わった中谷明彦氏が改めて解説する。
文:中谷明彦/画像:トヨタ、日産、ホンダ、ベストカーWeb編集部ほか
【画像ギャラリー】まさに神々の試験場! 最速はただの勲章じゃない! クルマの完成度を丸裸にする珠玉の聖地ニュルブルクリンク(16枚)画像ギャラリーそもそも「ニュル」ってなんだ?
クルマ好きなら一度や二度は、ニュルブルクリンクサーキット(通称:ニュル)について目にしたり、聞いたりしたことがあるだろう。
ドイツ西部、ラインラント・プファルツ州のアール地方、山岳地帯アイフェル(Eifel mountains)近辺、そこに広がるモータースポーツと自動車開発の聖地と言われているのがニュルブルクリンクサーキットである。
中世の古城・ニュルブルク城を囲むようにして敷かれた古代の“街道”が、やがて世界的なサーキットへと姿を変えたのが、この地の起源である。
現代のニュルは、主に2つの大きなレイアウトを持つモータースポーツ複合施設である。ひとつは1984年に整備された近代的な“GPコース”で、全長約5.148km。これはF1や各種国際レース、サーキットイベント用に使用されている。
そしてもうひとつ、それこそが伝説の“北オールドコースノルドシュライフ(Nordschleife)”である。これを通称「ニュル」と呼ぶことが多い。こちらの正式ラップ長は20.832km。コーナー数は公式には73とされるが、ドライバーやマニアの間では、アップダウンと小さなカーブを数えれば150〜170超、あるいはそれ以上とも言われる。一定のRではなく、複合的なRが多いからである。
標高差は約300メートルに及び、森や谷を抜け、時に古城跡を見下ろすような地点を通過し、また村落近くの“日常的な道路”さながらの区間もある。この複雑かつ多様な“道の集合体”こそが、ノルドシュライフの本質だ。
あの名車もこの名車もみんなニュル育ち!?
また、ニュルでは毎年、耐久の祭典である「Nürburgring 24時間レース」が開催されている。ノルドシュライフとGPコースを組み合わせたおよそ25.4kmのレイアウトで、かつては総出走台数200台以上、500人近いドライバーが参加したこともある。
こうした、歴史・地形・レイアウト・イベント、あらゆる要素が揃って、ニュルは 単なるサーキットではなく、聖地として君臨しているのである。
なぜ、多くの自動車メーカーやレーサー、モータージャーナリストが「ニュル最速」「ニュル仕様」「ニュル認定」などを喧伝するのか。それは、ニュルが現代の一般道や通常サーキットでは決して遭遇し得ない“極限状況”を、クルマとドライバーに強いる場だからである。
20.8km。これは日本の代表的サーキットと比べた時、いかに途方もない長さかを示す数字である。例えば、日本の富士スピードウェイ(約4.56km)や鈴鹿サーキット(約5.8km)と比べてみれば、ニュルは“ほぼ4〜5周分”を1周でこなすようなスケールである。筑波サーキット(2.07km)の10周分に該当する。
加えて、そのコーナーの多さ、無数のアップダウン、タイト、ハイスピード、ブラインドコーナーの連続。まったく同じルートは二度とない、と感じさせるほどに“地形と道の流れ”が複雑だ。とても紙のコース図だけで記憶できるようなものではなく、実走で“身体”に覚え込ませるしかない。
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