“ニュル最速”ってなんの意味があるの?? 名車の条件とは!? 各メーカーがニュルでクルマを鍛えるワケ

天候すら頻繁に変わる!? まさに魔境

現在ニュルブルクリンクFF最速の称号を持つホンダ シビックタイプR(FL5)。ホンダはニュルを意識したテストコースとして、北海道に鷹栖プルービンググラウンドを設けている
現在ニュルブルクリンクFF最速の称号を持つホンダ シビックタイプR(FL5)。ホンダはニュルを意識したテストコースとして、北海道に鷹栖プルービンググラウンドを設けている

 この「一度走っただけでは覚えきれない」ことこそが、ニュルの“洗練”である。あるドライバー/シミュレーター経験者は、「セクターごとに分け、ひとつひとつ攻略し、最後に全体をつなげてようやく1周できるようになる」と語る。

 つまり、たとえ仮にあなたが世界最速のスーパーマシンに乗っていたとしても、コースを知っていなければコンパクトカーに負けてしまうほどの難易度なのだ。

 ニュル北オールドコースは、アイフェルの森と山、谷、古城、村落と、まさに生きた地形のなかを縫う。山の上から谷底まで、一気に駆け下りる下り坂、森の中で霧に包まれたり、日差しと影が交錯したり、その日のうちに天候が局地的に変わることも珍しくない。

 ある場所では日差しの夏、僅か数キロ先では冷たい雨、あるいは霧ということさえ起こる。スリックタイヤで走り出したら、数キロ先は雹が降り真っ白だった、なんてこともある。

 また、コースにも厳しい制約がある。平均で約8メートル。ところによっては6メートルにも満たない区間がある。これでは、スポーツ走行やタイムアタック時に、複数台が安全に並走するのは非常に難しい。追い抜きは主に直線や幅のある区間に限定され、タイトなコーナーではリスクが大きい。

 単純に左曲がって右曲がって直線、また左、といった連続ではない。まるで道と地形と天候の複合パズルを、数十秒おきに解きながら走らなければならないのだ。

ニュル、それは世界一過酷なテストコース

1970年登場、トヨタ セリカ1600GT。1973年にはニュルブルクリンク6時間レースに参戦した
1970年登場、トヨタ セリカ1600GT。1973年にはニュルブルクリンク6時間レースに参戦した

 ニュルを1周するだけで、普通のサーキットなら数周、あるいは十数周分のストレスが車体にかかる。サスペンションには連続する上下負荷、ボディにはねじれや歪み、ブレーキやタイヤにも持続的なストレス。

 たとえば、古くは1970年代。トヨタの有名なテストドライバーである故 成瀬弘さんから当時の市販車トヨタ セリカ1600GT をニュルで一周させたところ、ドアが開かなくなった、という逸話を聞いたことがある。つまり、ボディがねじれるほどの負荷がかかっていたのである。これは伝説ではなく、実際に起きた現実の話である。

 さらに、ニュルの路面ミュー(路面摩擦係数)は一般的なサーキットより低めで、しかも天候や時間帯で大きく変化する。朝露や雨、霧、あるいは木陰と落ち葉で湿った路面、そうした条件のなかで、ABS やESCなど電子制御のテストをするのにこれほど最適な場は少ない。実際、多くの自動車メーカーはこのコースを、新車開発や制御系のテストの“標準舞台”として利用する。

 また長いストレート(最大直線区間は約2.1km)とアップダウンにより、高速走行性能、空力安定性、サスペンションの安定性、ブレーキの冷却性能、そしてドライバビリティなど全てが試される。たった一周、あるいは数周で、車が“本物のスポーツカー”たり得るかどうか――その判定材料として、ニュルはこれ以上ない舞台なのである。

 このような過酷さ、複雑さ、そして多様さがが、ニュルを単なる「テストコース」以上の特別な場所にしている。

ただの平坦サーキットではない!?

現在市販車ニュル最速のメルセデス AMG ONE。F1の技術が使われている
現在市販車ニュル最速のメルセデス AMG ONE。F1の技術が使われている

 日本国内のサーキットあるいは海外の平坦なサーキット、その多くはクルマを高速で走らせることができる優れたテストフィールドである。しかし、そこで試せるのはあくまで「特定の条件」であって、全方位的な過酷性ではない。

 たとえば、ストレートと中高速コーナー、あるいは低速コーナーばかり、舗装の良い平坦な路面、気温や天候が予測しやすい。先の見通しもいい。そうした条件の下では、最新の電子制御、足まわり、ブレーキ、空力、耐久性といった要素を“部分的に”評価できるにすぎない。

 一方で、ニュルは最初から“縦横無尽”の条件をクルマにぶつける。標高差、路面ミュー、直線から急コーナー、アップダウン、森、谷、古城近傍、村の近く、そのほとんどがブラインドコーナーの連続で、あらゆる要素が一周の中に詰め込まれている。

 したがって、ニュルでまともに“速く・安定して・繰り返し”走れる車であれば、それはすなわち、「どこで乗っても破綻しない、優れた完成度のクルマ」である、という説得力のある証明となる。これが、欧州メーカーが新車発表時に“ニュルラップタイム”を競う理由であり、「ニュル仕様」「ニュル最速」を喧伝する所以である。

【画像ギャラリー】まさに神々の試験場! 最速はただの勲章じゃない! クルマの完成度を丸裸にする珠玉の聖地ニュルブルクリンク(16枚)画像ギャラリー

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