エンジンオイルはクルマの血液ともいえる重要な存在だ。とくに気温差の大きい日本では「夏と冬で粘度を変えるべき?」や「冬に硬いオイルを入れたらどうなる?」といった疑問を抱く人も多い。本企画では、そういった疑問を解消! 冬場の交換サイクルまで解説してきたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock、トビラ写真(写真AC)
冬に最適なエンジンオイルの粘度とは? 寒冷地では柔らかいほうがいい?
エンジンオイルの粘度は、いわばオイルの「硬さ」や「流れやすさ」を示す指標である。一般的に使われるのがSAE粘度規格で、「0W-20」「5W-30」といった表記を目にしたことがあるだろう。
このうち前半の「W」はウィンターの頭文字で、低温時の粘度性能を示している。数値が小さいほど低温でも柔らかく、寒い朝でも素早くエンジン内部に行き渡る。
冬場、とくに寒冷地ではこのWの数値が重要になる。気温が下がるとエンジンオイルは硬くなり、始動直後に十分な潤滑ができないとエンジン内部の摩耗が進みやすくなる。0Wや5Wといった低温粘度性能に優れたオイルは、極低温下でも流動性を保ち、始動性の悪化を防ぐ効果がある。
近年の化学合成油は性能が向上しており、猛暑の夏から厳寒の冬まで幅広い温度域で安定した潤滑性能を発揮するものが多い。そのため、メーカー推奨粘度を守っていれば、通常使用で大きな問題が起きることは少ない。ただし、北海道や山間部など氷点下が当たり前の地域では、より低温側に強い粘度を選ぶことで安心感が高まる。
冬は走行距離が伸びない一方で、エンジンにとっては過酷な季節でもある。短距離走行やアイドリング時間が増えると、エンジン内部に水分や未燃焼燃料が残りやすく、オイル劣化が進みやすい。とくに朝夕の冷え込みが厳しい時期は、エンジンが十分に温まる前に走行を終えてしまうケースも多い。
そのため「距離を走っていないから大丈夫」と考えるのは危険だ。走行距離が少なくても、期間ベースでの交換が重要になる。
一般的には半年に一度、もしくはシーズンごとの交換を意識するとエンジンコンディションを良好に保ちやすい。ウィンターシーズン前に新しいオイルへ交換しておけば、寒い朝の始動性も向上し、精神的にも余裕が生まれる。
ガソリンエンジンのオイル規格は、オイルの種類や品質を表すもので、API(アメリカ石油協会)が粘度と同様にオイルの品質をアルファベットで表示できるよう規格化している。
ガソリンエンジンはSJなどといったSで始まるアルファベット2文字で表示され(ディーゼルエンジン用はC~)、SJは2001年以前に生産されたクルマに対応するもので、SLは2004年までのクルマ、SMが2010年までのクルマといったように、アルファベットが進むと新しいクルマのエンジンに対応する規格になっている。
最新の規格はSQと言われるもので、オイル自身の環境性能まで追求されたものだ。
またAPIでは、オイルの種類についてもグループI、IIが原油を精製した鉱物油で、水素化分解など高度な精製を行なった鉱物油がグループIII、PAO(ポリアルファオレフィン)などの化学合成油がグループIV、エステルなどより高性能な化学合成油がグループVだ。
APIとは別に日本でもオイルの品質に規格があり、このILSACはSQに相当するものがGF-7と数字が進むほど高い品質で省燃費や環境性能が高いオイルとなっている。
■SHグレード(API規格)以降のエンジンオイルの種類
●SH、ILSAC規格:GF-1
1993年以降のガソリン車用エンジンオイル。SG性能に加えスラッジ防止、高温洗浄性が追加された。
●SJ、ILSAC規格:GF-2
1996年以降のガソリン車用エンジンオイル。SH性能に加えせん断安定性が優れる。
●SL、ILSAC規格:GF-3
SJの性能に加え、省燃費性向上、排出ガス浄化、オイル劣化防止性能向上、エンジンの長寿命化実現。
●SM、ILSAC規格:GF-4
SLの性能に加え、オイルの耐久、耐摩耗、耐熱、浄化性、省燃費性能レベルの向上。
●SN、ILSAC規格:GF-5
SMに比べ省燃費性能が比較的にUP。省燃費持続性能の追加。触媒保護性能強化。
●SP、ILSAC規格:GF-6
現行の主流規格。0W-16〜10W-30などSN性能に加え、耐摩耗性とエンジン耐久性の強化とともに燃費を大幅に向上。最高級グレード ガソリン車用エンジンオイル。
●SQ、ILSAC規格:GF-7
2025年3月31日に導入された新しい最高級グレードのガソリン車専用エンジンオイル。従来のSP規格やGF-6規格と比較して、全ての分野で性能向上が図られている。省燃費性、LSPI(低速早期着火)防止、タイミングチェーン摩耗防止がさらに強化。0W-8、0W-12、0W-16をカバー。
冬に硬いオイルを入れたらどうなる? その影響を徹底解説
冬場にオイル交換をするとき、つい「今までのオイルよりちょっと硬めでもいいか」と考えてしまう人が少なくない。しかし実際に冬に硬い(高粘度)のオイルを入れることには明確なデメリットがある。そして、場合によってはエンジンや始動に影響が出ることさえあるのだ。
1/エンジン始動が重くなる
冬場の最大の問題点は、オイルの「低温流動性(冷えた状態でどれだけサラサラ流れるか)」が落ちることだ。硬いオイルは元々温度が低いと抵抗が大きい。それがさらに冬の低温で硬くなるため、エンジンを始動する際にオイルがなかなかエンジン内部へ循環しない。
その結果、 クランキング(セルモーターでエンジンを回すこと)に必要な負荷が増える。場合によっては、本来なら普通に始動できる状況でも、エンジンがかかりにくくなる可能性がある。セルモーターへの負担増加にもつながるため、バッテリーにも余計な負荷がかかるのだ。
つまり、低温で本来の粘度より硬いオイルを使うと始動性が低下し、不適切な潤滑が増えると指摘されるケースもある。特に「0W」や「5W」のような低温側の粘度を考えずに高い粘度を選ぶと、この傾向が顕著になるという。
2/ドライスタート(潤滑不足始動)になりやすい
オイルはエンジンが回転を始めた瞬間から内部を循環し、摩耗しやすい部品に潤滑被膜を形成する。しかし硬いオイルだとオイルポンプが十分に油膜を形成するまでの時間が長くなる。その間、エンジン内部は摩擦が高く、いわゆる 「ドライスタート状態(潤滑が追いついていない状態)」になりやすいのだ。
走り出してすぐは、ピストンやシリンダー、クランク周りなどが完全にオイルで守られるまでには時間がかかる。このわずかな時間の摩耗が 長期的に見ればエンジンの寿命を縮めるリスクにもつながる
3/メカノイズが大きくなる可能性
硬いオイルを入れると、特に油圧が充分立ち上がるまでの時間が延びる。その結果、エンジン内部のカム周りやラッシュアジャスターなどが十分な潤滑を得る前に稼働し始め、エンジン音(カタカタ音)が大きくなることがある。
低温が進む冬場は、もともと金属部品が冷えているため、メカニカルノイズが目立ちやすい。その状態で硬いオイルを入れると、より顕著になる場合があるのだ。
4/特殊なメリットはあるが条件限定
ただし、唯一のメリットとして “極端なスポーツ走行や高負荷運転を前提に暖機運転を十分に行えば油膜強度が高い状態を保ちやすい” という評価がある。
しかしこれはあくまで 冷間始動の時間を長く待つ、エンジンが完全暖機状態になるまで走らないと意味がない条件付きだ。一般的な街乗りや通勤でそんな状況になることは稀であり、日常用途では明確なメリットとは言い難い。
冬に柔らかめのオイルを入れるメリット・デメリットを整理する
冬場のオイル選びでよく話題になるのが「柔らかめのオイルにしたほうがいいのか」という点だ。結論からいえば、多くの一般ユーザーにとって 冬は柔らかめのオイルのほうがメリットが大きい。ただし万能ではなく、デメリットも存在するため、両面を正しく理解しておきたい。
■冬にオイルを柔らかめにするメリット
最大のメリットは低温時の始動性が明確に向上することである。粘度の低いオイルは冷えても流動性を保ちやすく、エンジン始動直後から素早く内部へ行き渡る。これにより、クランキングが軽くなり、セルモーターやバッテリーへの負担も減少する。
また、エンジン始動直後のドライスタート状態を短時間で解消できる点も重要だ。ピストン、クランク、カムシャフトといった摺動部が、より早く油膜で覆われるため、冷間時の摩耗を抑制できる。これは短距離走行が多い冬場において、エンジン寿命を守るうえで大きな意味を持つ。
さらに、燃費面でもわずかながらメリットがある。柔らかめのオイルは内部抵抗が少ないため、エンジンが軽く回り、結果として燃費性能が安定しやすい。特にストップアンドゴーが多い市街地走行では体感できるケースもある。
■冬にオイルを柔らかめにするデメリット











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