ニュースなどでたびたび報じられる、アクセルとブレーキの踏み間違い事故。2026年1月にも、福岡県でアクセルとブレーキを踏み間違えたと思われる事故が発生し、通行人が腹部に大けがを負う事態となりました。
「高齢運転者の問題」として捉えられがちなアクセルとブレーキの踏み間違い事故ですが、実際には年齢を問わず発生しています。また「最近のクルマには誤発進抑制機能が搭載されているから大丈夫」と考える人もいるかもしれませんが、それだけで事故を防ぎきれるわけではありません。踏み間違いはなぜ起きるのか。その仕組みと運転支援技術の限界、そして私たち自身ができる対策について考えてみましょう。
文:yuko/アイキャッチ画像:Adobe Stock_ polack/写真:Adobe Stock、写真AC
【画像ギャラリー】「踏み間違い」はなぜ起きる? 最新の誤発進抑制機能の限界と、全ドライバーが知るべき必須の安全対策(9枚)画像ギャラリー年齢だけでは説明できない、「踏み間違い」の原因
「高齢運転者の操作ミス」として語られることが多い、クルマのアクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる事故。しかしながら、交通事故総合分析センター(ITARDA)の分析によると、運転者年齢層別免許保有者人口10万にあたりの死傷事故件数(2018年~2020年)は、75歳以上の高齢運転者が12.3件と、ほかの年齢層に比べて多くなっているものの、24歳以下も10.0件と高い水準にあり、高齢者だけの問題ではないことがわかります。
ITARDAによるペダル踏み間違い事故の人的要因をみても、もっとも多いのは「慌て、パニック」で、28件中11件を占めています。次いで多いのが「高齢(加齢によって運転への支障があったものと判断されるもの)」の8件ですが、「乗り慣れないクルマだった」という要因も7件あり、高齢以外の背景も少なくないことが示されています。
若年層で多い理由には、運転習熟度が十分でないことなどから、とっさの場面で適切な判断が難しくなる可能性が考えられます。一方、高齢運転者では動作の遅れや不正確さ、体の柔軟性低下、情報処理の遅れなどが重なることで踏み間違いになりやすいことが指摘されています。
ただし、事故が死亡重傷に至ったケースに限ると、高齢運転者の割合は大きく上昇します。2018年~2020年では、75歳以上が全体の45%、65歳以上になると74%を占めています(こちらもITARDAのデータ)。高齢運転者は間違った操作をした際に、修正操作が遅れる可能性が指摘されており、それが事故の深刻化につながっていると考えられます。ニュースなどではこうした重大な事故が強調されやすいこともあり、「踏み間違い=高齢運転者」という印象が強まる傾向があるのでしょう。
誤発進抑制機能は「踏み間違いを防ぐ装置」ではなく、作動するには条件がある
最近の新型車には、いわゆる「誤発進抑制機能(保安基準上は「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」)」が広く搭載されています。前方や後方に障害物がある状態で急なアクセル操作を検知すると、出力を抑制して衝突を回避、あるいは被害を軽減する仕組みです。
ただし、この機能は「踏み間違いそのものを防ぐ装置」ではありません。一般的には、
・車両前後に障害物を検知していること
・低速域であること
・急なアクセル開度が入力されたこと
といった条件がそろった場合に作動します。つまり、前方が開けている場所では作動しないケースがあり、坂道発進や、センサーが認識しづらい低い障害物、駐車場や店舗入り口などにある細いポールなども検知できない場合があります。また、ある程度速度が上がると作動対象外になることもあります。
また、後付けも可能な、アクセルペダルの踏み込み量や踏み込み速度から判断するタイプのペダル踏み間違い時加速抑制装置は、周囲の障害物を検知する機能を持たないものもあり、それだけで踏み間違い事故すべてを防げるわけではありません。
誤発進抑制機能などのペダル踏み間違い時加速抑制装置に関しては、国土交通省が保安基準を改正し、2028年9月1日以降の新型乗用車(AT車)への搭載が義務化されることが決定しています(輸入車は2029年9月から)。さらに別途行われた基準改正により、新型車は2030年9月、継続生産車は2031年9月からは、停止状態だけでなくクリープ走行中にも制御が働くよう性能要件が強化されます。歩行者を検知対象に含めることや対象車種の拡大も盛り込まれ、安全対策は確実に進化しています。しかし、それでも「慌て・パニック」によるドライバーの誤操作を完全に止めることはできません。













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