「左側から前車を抜いても、前車と同じ車線に入らなければOK」という人がいる。「道交法に「前車と同一車線に……」なんて記述あった?」と思う人もいるだろう。そこで今回は「追い越し」と「追い抜き」について。
文:山口卓也/写真:写真AC
【画像ギャラリー】「追い越し」と「追い抜き」の境界線とは?(7枚)画像ギャラリー「追い越し」と「追い抜き」の違い、知っていますか?
まず「追い越し」は、道路交通法第21条で以下のように定められている。
「車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう」
つまり、前車の前に出るために左右どちらかに車線変更して前車を追い越し、その後に元の車線に戻る・戻らないにかかわらず前を走っていたクルマの前の方に出るのが「追い越し」。
一方、「追い抜き」は道路交通法に明確な定めはなく、「追い越し」に対する言葉として存在し、進路変更せずに前車の前に出ることを指す。
⚫︎「追い越し」の条文をよーく読んでほしい…
□「進路を変えて」≠「車線を変えて」
まずよく条文を読むと、「車線変更」という単語はどこにもない。
前文では、条文内の「進路を変えて」をわかりやすく「車線変更して」と書いたが、現実的にクルマが1車線内で2台並走できる道路はほぼ存在しないとしたうえでのことなので、もし「車線変更せずに進路も変えず(ハンドルを切らず)に前車の前に出た」なら追い越しではなく「追い抜き」。
これ、クルマ2台を想定すると「車線変更せずに進路も変えずに前車の前に出た(追い抜き)」はほぼ無理な話だが、オートバイ2台であれば十分可能。
高速道路で、同一車線内を2列になってツーリングしているオートバイ数台を見ることがあるが、並走するバイクの列のどちらかが隣の列のバイクらの前方に出る行為は「追い抜き」となる。
つまり、広めの道路であれば、軽自動車とオートバイでもあり得る話のため、進路を変えず(ハンドルを切らず)に前方に出られたなら「追い抜き」となるのだ。
□「当該車両等の前方=当該車両等と同一車線・当該車両等の側方車線」
また、「元の車線に戻らなければ追い越しではない」と誤解している人がいるが、元の車線に戻る・戻らないにかかわらず、「進路を変えてから前車の側方を通過→前方へ出たかどうか」である。「進路を変えてから前車の前方へ進んだ」のであればそれは「追い越し」。
もっと厳密かつ簡単に言えば、「前車の前方に出るために、進路を変えた(ハンドルを切った)かどうか?」である。
条文に戻ると、「追い越し」は、「車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう」とあるため、
□他の車両などに追いついた
□進路を変えた
□車両などの側方を通過した
□当該車両などの前方に出た
上記4点がすべて満たされて初めて「追い越し」となることを覚えておいてほしい。
「追越し禁止」の場所とは?
追い越しを禁止されている場所は、道路交通法 第30条で以下のように定められている。
車両は、道路標識などにより追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
□道路の曲がり角付近
□上り坂の頂上付近
□勾配の急な下り坂
□トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る)
□交差点、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に30m以内の部分
これらの部分がなぜ「追越し禁止」とされているか? というと、こちらが追い越し中の場合に、対向車が確認することが難しいため。
⚫︎補助標識の有無で禁止事項は変わる
追い越しを禁止する標識は次のようなものだが、この標識の下に補助標識がつくと少し意味が変わってくる。
写真の丸い形をした追い越し禁止の標識のみの場合は、道路の右側にはみ出して(対向車線にはみ出して)追い越すことが禁止されているのみ。
つまり、軽車両の自転車や原付などを追い越す場合は、対向車線にはみ出すことなく追い越すことが可能な場合があるため、この場合は追い越し禁止で切符を切られることはない。
ただし、写真のように「追越し禁止」の補助標識がある場合は、対向車線にはみ出さない場合でも「追い越す」という行為そのものが禁止されているので要注意!
⚫︎センターラインの種類で禁止事項は変わる
□黄色の実線
「追い越しのために」センターラインの右側(対向車線)にはみ出しての通行が禁止されている。これはたとえ軽車両である自転車を追い越す場合であっても、はみ出しての追い越しは禁止。
そして、はみ出さないまでも、追い越し時に車線内で自転車と「十分な車間」を保つことは現実的に難しいことから、自転車を黄色の実線区間で追い越すことはほぼ不可能。
ただし、工事中や駐車車両の障害物は、追い越しではないのでウインカーを出して対向車線にはみ出して通行可能。
もちろん、道路標識などによって追い越しが禁止されておらず、道路の曲がり角付近・上り坂の頂上付近・勾配の急な下り坂・トンネル・交差点・踏切・横断歩道・自転車横断帯およびこれらの手前から30m以内の場所でない場合のみ。
※十分な車間:2026年4月1日からの道路交通法改正により、「十分な間隔」の具体的な数値は記されていないが、警察庁では「少なくとも1m」としている。
□白色の実線
白色実線は、左側の片側の幅が6m以上の道路に設置する場合、または道路交通法第30条で規定された追い越し禁止場所に設置する場合とされ、それ以外は破線で表示すると決められている。
黄色と白色では「黄色のほうが警戒色」というイメージから、「黄色じゃないからはみ出しても大丈夫」と思いがちだがそれは間違い! 道路交通法第17条では、道路の中央より右側部分にはみ出して通行できる事例のひとつとして左側部分の幅が6m未満の道路を挙げているため、そもそも6m以上の道路は追い越しに関係なく、センターラインより右側にはみ出すこと自体が違反となる。
□白色の破線
幅が6m未満の道路で比較的交通量の少ない道路に引かれることが多く、対向車線にはみ出しての追い越し・通行が可能。白色破線と黄色実線の両方が引かれている場合は、白色破線側からであれば、右側にはみ出して追い越しをしても違反にはならない。
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