燃料電池トラックは「コスパ」を追求する実用段階に!? 【セルセントリックが発表した次世代燃料電池(前編)】

燃料電池トラックは「コスパ」を追求する実用段階に!? 【セルセントリックが発表した次世代燃料電池(前編)】

 ダイムラーとボルボの合弁企業で、先日トヨタ自動車も参画する方向で基本合意した燃料電池メーカー・セルセントリックが、次世代の新型燃料電池システムを発表した。既存顧客向けに試験生産を開始しており、量産化は2030年ごろを目指している。

 同社の新型燃料電池は、出力、燃費、重量、廃熱、出力密度、複雑性など全面的な改良を行ない、商用車ユーザーが最も重視するTCO(総保有コスト)における最適化を実施した。これにより性能や耐久性などの要件で「ディーゼルエンジン並み」を実現した。

 水素燃料電池は商用車の脱炭素化に向けた本命技術とされるが、「実証」を終え「規模の経済」を追求する段階に入った。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/cellcentric GmbH & Co. KG

大型FCEVに新水準!? セルセントリックの次世代燃料電池

燃料電池トラックは「コスパ」を追求する実用段階に!? 【セルセントリックが発表した次世代燃料電池(前編)】
発表を待つセルセントリックの次世代燃料電池「BZA375」

 大型商用車向けに燃料電池システムを開発しているセルセントリックは2026年4月20日、次世代型の燃料電池を「BZA375」という製品名でローンチした。これまでは「NextGen(次世代)」というプロジェクト名で呼ばれていたもので、ハノーバーメッセのイベントで正式発表された。

 現在はテスト・検証目的の試験生産が行なわれており、同社の既存の顧客向けに提供されているところだが、市場で存在感を示すための準備は整っているそうで、今後は大型商用車のみならず、幅広い用途に向けて大量生産を目指している。

 セルセントリックは世界の商用車市場における2大グループとなっているダイムラー・トラックとボルボ・グループが合弁でドイツに設立した企業で、3月31日にはトヨタ自動車が合流することで基本合意している。

 トヨタの参画が実現すれば世界的な商用車ブランドの多く(メルセデス・ベンツ、ボルボ、ルノー、フレイトライナー、ウェスタンスター、VTNA、マック、日野自動車、三菱ふそうなど)がセルセントリックの「系列」となる。ただし、同社は大型トラックやそれと同等の用途に特化したティア1サプライヤーとして独立しており、他のメーカーにも燃料電池システムを供給するという。

 次世代燃料電池システムのBZA375は、輸送分野の脱炭素化における主要課題の一つ、すなわち、高い耐久性を誇り、最も要件の厳しい用途に適用できる真に競争力があるゼロエミッション駆動技術を開発するという課題に対応するためのものとしている。

 最新技術といっても燃料電池の歴史は意外と長く、ダイムラーの燃料電池バスから数えればセルセントリックには数十年に渡る技術・経験の蓄積がある。同社の燃料電池システムは「実証実験」を抜け出し、規模の経済を追求する段階に入った。

コスト最適化が中心目標に

燃料電池トラックは「コスパ」を追求する実用段階に!? 【セルセントリックが発表した次世代燃料電池(前編)】
ウクライナ紛争やホルムズ危機により、欧州で水素による「エネルギーのレジリエンス」に関心が集まっている

 セルセントリックのBZA375は、大型トラックをはじめとする要件の厳しい用途に向けて、いかに燃料電池を最適化できるか示す例となる。

 日進月歩の最新技術とはいえ、わずか3年で次世代システムを開発するのは簡単なことではなく、革新と継続的な改善、そして顧客ニーズに対する深い理解が必要だった。メーカーが合弁で設立しただけあって、大型トラックに求められる性能・品質要件を前提に設計されており、過酷な条件下でも最新型のディーゼルエンジンに匹敵する性能を発揮する。

 その開発の中心に置かれたのは総保有コスト(TCO)における最適化という明確な目標だ。トラックはビジネスの道具であり、商用車ユーザーにとってTCOは購買判断を左右する決定的な要因だ。燃料電池技術の限界を押し広げるBZA375は、そのために最適化された実用のための製品になる。

 水素を燃料に発電し、排出するのは水蒸気だけとなる燃料電池電気自動車(FCEV)は「究極のエコカー」とも呼ばれていた。ただ、乗用車分野では先行きが不透明となっており、メーカーは商用車にシフトする方針を強めている。これは内燃エンジンにおけるガソリン/軽油の棲み分けに近く、TCOを重視する同社の方針にも反映されている。

 関係者のコメントは次の通りだ。

「BZA375は大型・長距離トラックのニーズに合わせて特別に設計されるとともに、これと同等の要件を持つほかの用途にも適したものとなっています。セルセントリックは(ダイムラーとボルボの合弁企業であるにも関わらず)あえて独立したサプライヤーとして設立されました。私たちはポートフォリオの脱炭素化を推進する全てのOEMを歓迎します」。
(セルセントリックの最高技術責任者、ニコラス・ラフラン氏)

「輸送を脱炭素化するための道のりは、バッテリーEVと水素燃料電池という2つの重要技術によってけん引されており、弊社もこの道を進んでいます。セルセントリックの新型燃料電池システムは、次の重要な一歩です。前モデルの成功を基盤とするこのシステムは、効率と性能の両面において新たな水準に達しています」。
(ダイムラー・トラックの社長兼CEO、カリン・ラドストロム氏)

「BZA375のローンチにより、セルセントリックとそのパートナー企業は大型トラックによるゼロ排出長距離輸送という青写真を描いています。これは物流事業者のみならず、社会全体にとって画期的なことであり、この業界を脱炭素化するための新たな一歩となります」。
(ボルボ・グループの社長兼CEO、マーティン・ルンドステット氏)

次ページは : 次世代燃料電池「BZA375」のパフォーマンス

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