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実際の組み付け状態でクリアランス確認できる「プラスチゲージ」の特徴と使用方法を徹底解説

配信元:WEBIKE
実際の組み付け状態でクリアランス確認できる「プラスチゲージ」の特徴と使用方法を徹底解説

 エンジンを分解組立する際には、クランクシャフトのジャーナル(軸部)とクランクケースのメタルのクリアランスの確認と設定が重要です。クリアランスはジャーナルの外径とメタルの内径の差から算出することもできますが、プラスチゲージと呼ばれる糸状のゲージを使った測定も可能です。ここではエンジン内部のクリアランスの意味や重要性、プラスチゲージの使い方や特長について解説します。

 
文/栗田晃
 

個別測定と引き算で算出するマイクロメーター+ボアゲージ



4気筒エンジンのアッパークランクケースの一例。クランクシャフトは5カ所の軸受けで支えられており、軸受けにはクランクシャフトメインジャーナルと接するメタルベアリングが組み込まれている。これは一体式クランクシャフトの場合であり、ボールベアリングが組み込まれている組み立て式クランクシャフトの場合、メタルベアリングはない。

 クランクシャフトとクランクケース、コンロッド大端部とクランクシャフト、カムシャフトとシリンダーヘッドなど、エンジン各部の回転部分には適切な隙間=クリアランスが設定されています。このクリアランスが適正値より小さければ、回転時のフリクションロスが増えて部品の摩耗につながり、逆に過大だと回転時ガタが生じて異音や破損の原因になるため、メーカーが定めた範囲に収まっていることが重要です。

 修理やレストアなどの重作業でエンジンをオーバーホールする機会があれば、それら回転部分のクリアランスを確認して、調整が必要なら部品交換などで対応できる場合もあります。その際に不可欠なのが現状確認です。クリアランスを狭めるにも広げるにも「今」がどうなのかを知らなければ先には進めません。

 「軸の外径」と「軸受けの内径」を知るための測定工具が、マイクロメーターとボアゲージです。軸の外径を測定するマイクロメーターは長さを知るための工具で、一般的な機械式ノギスの最小読取り量が0.05mmなのに対して、0.01mmまで読み取ることができます。

 これに対して軸受けの内径を知るためのボアゲージは、単体で絶対寸法が分かる工具ではありません。大まかに説明すれば、基準寸法に対するプラス・マイナスの差を測定する工具となります。

例えばボアゲージの基準寸法を32.00mmに設定して軸受けに挿入した時、ボアゲージに取り付けたダイヤルゲージがプラス0.05mmを示した場合、軸受けの内径は31.95mmであると判断します。その逆にダイヤルゲージの表示がマイナス0.04mmとなったら、軸受けの内径は32.04mmとなります。
この方法により、ボアゲージによる軸受け内径-マイクロメーターによる軸の外径=クリアランスが算出できます。

 文字で書くと簡単に見えますが、実際の作業ではボアゲージの使い方にコツや慣れが必要で、相応の実践経験を積まないと正しい測定値を得るのは簡単ではありません。またボアゲージ自体も安価な工具ではないので、アマチュアにとっては有効活用できず持て余してしまうかもしれません。

 
 
 

潰れた幅でクリアランスが分かるプラスチゲージ



プラスチゲージは紙のパッケージに入っており、パッケージ自体に潰れ幅とクリアランスを示す帯が印刷されている。元々はアメリカ製でクリアランスはインチ表示であり、それをmmに換算しているため表示が細かくなっている。



使用する際は測定部分に合わせてハサミなどで切断する。



クランクジャーナルとメタル表面のゴミや油分を拭き取り、プラスチゲージをセットする。



締め付け力によってクリアランスが変化してゲージの潰れ幅に影響するので、規定トルクで締め付ける。また測定中はクランクシャフトを回転させないよう注意する。

 マイクロメーターやボアゲージなど、通常のハンドツールとは異なる特殊な工具を必要とするクリアランス測定に対して、もっと簡単に隙間を測定できるアイテムもあります。それがプラスチゲージです。

 プラスチゲージは専用の樹脂を糸状に成形したもので、測定したい部分に置いて部品を組み立て、締め付けトルクによって潰れた幅によってクリアランスが判定できるアイテムで、マイクロメーター+ボアゲージによる測定とは以下のような違いがあります。

●マイクロメータ+ボアゲージ

・軸の外径(マイクロメータ)と軸受けの内径(ボアゲージ)を個別に測定する
・両者の差からしてクリアランスを算出する
・測定精度が高く、μm(ミクロン)単位で評価可能
・複数のポイントを測定することで 真円度や偏摩耗も把握できる

●プラスチゲージ

・実際に部品を組んだ状態で実際の隙間を確認する
・潰れ幅というアナログな指標で読む
・精度はおおよそ±0.01~0.02 mm程度
・測定できるのは一カ所だけで局所的なクリアランスを把握する

 つまり同じ「クリアランス」を測るにしても、両者のアプローチは根本的に異なります。

 またプラスチゲージは、測定するクリアランスの大きさによってゲージ自体の使い分けが必要です。隙間が大きな場所に細いゲージを入れても充分に潰れず、狭い場所に太いゲージを入れると潰れすぎて信頼性が低下するためです。

 今回使用したプラスチゲージは測定レンジによって色分けされた三種類の製品があり、各製品の測定範囲は次のようになります。

緑:0.025~0.076 mm
赤:0.051~0.152 mm
青:0.102~0.229 mm


この仕様違いから分かるように、プラスチゲージでクリアランスを測定する場合はサービスマニュアルで基準クリアランスを確認しておくのが大前提となります。またエンジンを分解してオーバーホールするなら、サービスマニュアルは必須です。

 ここで測定作業を行ったエンジンの場合、クランクシャフトメインジャーナル(軸部)とメインジャーナルメタル(軸受け内径)のクリアランス標準値は0.014~0.038mmで、使用限度は0.08mmなので、緑色のプラスチゲージで測定できます。

 またコンロッド大端部メタルとクランクピンのクリアランスは0.035~0.059mmの標準値に対して使用限度が0.10mmなので、こちらも緑色で対応できます。

 
 

プラスチゲージで測定したクリアランスが広い場合はどうする?



締結ボルトを均等に緩めてゲージを引きずらないよう真上に取り外したら、パッケージのゲージを参照にクリアランスを読み取る。



プラスチゲージはクリアランスが狭いほど幅広く潰れる。このエンジンの標準クリアランスは0.014~0.038mmで使用限度は0.08mm。0.038mmの帯より狭い(クリアランスが大きい)が、0.076mmの帯より広い(クリアランスが小さい)ので、使用限度の0.08mmには達していないと判断できる。クリアランスを絶対値として把握したければ、マイクロメーター+ボアゲージが必要だ。



このエンジンの場合、メーカーが新車を組み立てる際に、クランクケースのメタルベアリング(メインベアリング)部の内径と、クランクシャフトメインジャーナル外径の組み合わせによって、厚さが異なる3種類のメタルから最適なものを選択する。走行距離を重ねて測定したクリアランスが使用限度を超えた場合、現状のメタルより厚いものが部品として存在すれば、クリアランスを狭められる可能性がある。



メタルの厚さは側面のペイントマークで判別できる。このエンジンの場合、青のメタルは3種類で最も厚く、黒色のメタルは中間の厚さを示す。現状が黒メタルでクリアランスが大きい場合、それより厚い青メタルに変更すれば内径が小さくなり、クリアランスも狭まる。

 軸部にプラスチゲージをセットして指定トルクで軸受けを締め付けるとゲージが潰れます。そしてこの潰れ幅をプラスチゲージのパッケージに印刷された線の幅と合わせることで、クリアランスを判定できます。

 潰れたゲージ幅と印刷された幅が一致するか否かは時の運のようなもので、実際には0.001mmレベルの実クリアランスを知ることはできません。潰れた幅が印刷された0.051mmより広く0.038mmより狭ければ、およそ0.04mm台にあるだろうといった具合です。

 マイクロメータ+ボアゲージが円周上の複数のポイントで測定できるのに対して、プラスチゲージはゲージを置いた部分、一点だけのクリアランスしか測定できません。ジャーナルやメタルに異物が付着した状態で、付着した場所を測定してしまうと、平均的なクリアランスより狭い結果が出ることもあります。また油膜分の厚みが測定値に影響することがあるため、プラスチゲージで測定する場合はオイルを拭き取り乾燥した状態で作業します。

 エンジン各部は走行距離が増えるに従って摩耗が進行するため、クリアランスは拡大していきます。では使用限度を超えるまで大きくなった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。

 車種によって、また年代によって部品供給状況は異なりますが、クランクシャフトメインジャーナルやコンロッド大端部に組み込まれている「メタル」には、厚さ違いが用意されています。これは新車組み立て時、大量生産されるクランクシャフトのメインジャーナル外径とクランクケースメインベアリング部内径の公差を修正してクリアランスを適正化するための部品で、オーバーホールや修理でも使用します。

 メタルの種類や厚みもサービスマニュアルで確認することが必要ですが、測定時に使用しているものよりも1グレード、あるいは2グレード厚いメタルを使用することでクリアランスを狭めることができます。ただしメインジャーナルやクランクピン表面の硬質クロームめっきが剥離するなど、クランクシャフト側のトラブルでクリアランスが拡大した場合は、メタル交換ではなくクランク交換が必要です。

 さらにカムシャフトのように、カムホルダーにメタルがなくシリンダーヘッドで直接支持している場合、クリアランス拡大の理由がカムホルダー側だとヘッド交換が必要になることもあります。

プラスチゲージはどんな場面で有効?



コンロッド大端ベアリングのクリアランスもプラスチゲージで測定できる。コンロッドはクランクシャフトより測定時に動きやすいので、回らないよう保持してキャップナットを締め付ける。



コンロッド大端部メタルのクリアランスは0.035~0.059mmで、プラスチゲージのパッケージで確認するとほぼ0.038mmの帯幅と一致し標準値の中でも下限、つまり現時点で摩耗は皆無と判断できる。

 サンデーメカニックやアマチュアがエンジン回転部分のクリアランスを測定する上で、マイクロメータ+ボアゲージで行うのかプラスチゲージを使用するかは、工具を揃えるために掛かる費用や使用頻度で判断すると良いでしょう。

 精密なクリアランス測定を行うにはマイクロメータ+ボアゲージが必須ですが、両者を揃えると1万円以上になることもザラなので「バイク人生で一度きり」というのであれば1000円台で買えるプラスチゲージでも実用性は十分です。

 では両者の測定方法から得られるクリアランス値は一致するのでしょうか? これは結論から言うと、完全には一致しないが適正範囲なら近似値にはなるはずです。ズレが生じる理由は以下の通りです。

1:測定条件の違い

・マイクロメータ+ボアゲージは無負荷状態での単体測定
・プラスチゲージは締結トルクをかけた実状態での測定
・適正トルクで締め付けても締結により歪みが影響することがある


2:測定位置の違い


・ボアゲージは測定する場所を変えて平均や最小値を知ることができる
・プラスチゲージはゲージが潰れた部分=局所的な隙間しか分からない

3:
分解能の違い

・マイクロメータ+ボアゲージは計算によって0.01mm単位で算出できる
・プラスチゲージは印刷された帯幅での目視比較

 精度を追求するならマイクロメータ+ボアゲージですが、そもそもバイクメーカーが設定している標準値にも幅があります。このエンジンのメインジャーナルとメタルのクリアランスの標準値は0.014~0.038mmで0.024mmの幅があり、使用限度は0.08mmなので標準値の上限から使用限度までも0.042mmの猶予があります。

 一方でプラスチゲージ(緑)のゲージを確認すると、4種類の線幅に対して0.025~0.076mmの数字が印刷されています。両者の関係から、ここで使用するプラスチゲージの潰れ幅はゲージの範囲内なら標準値内に収まっていることになり、メタル交換は不要と判断できます。

 すべてのメタルのクリアランスを統一したい(統一は至難でも近い値に揃えたい)、フリクションロス軽減のためできるだけ広くしたいなど、目的が明確な場合は実寸法を測定できるマイクロメータ+ボアゲージが信頼性も高く重宝しますが、通常整備であればプラスチゲージでも実用性は十分です。

 プラスチゲージを用いてクリアランス測定を行うことは、エンジンに対する好奇心や探究心を高めるために興味深い作業ですが、クランクシャフトやコンロッド、カムシャフトの摩耗はエンジンオイル管理の悪さに起因することが大半です。エンジン修理の過程でクリアランス測定をしなくても済むように、普段からのオイル交換を怠らないようにすることが重要です。

POINT
  • ポイント1・クランクシャフトやカムシャフトなど回転部品の軸部には必ず適切なクリアランスが必要
  • ポイント2・クリアランスの測定方法にはマイクロメータ+ボアゲージによるものとプラスチゲージで行うものがある
  • ポイント3・プラスチゲージは糸状の樹脂の潰れ具合でクリアランスを判定する

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/532133/

実際の組み付け状態でクリアランス確認できる「プラスチゲージ」の特徴と使用方法を徹底解説【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/532133/532140/

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