フジエクスプレスで臨時運転士として乗務する記者のバス運転士日誌は、今回は1度の乗務でアレコレと怒涛のように次々と出来事が起き、てんやわんやだった1乗務2時間をルポルタージュ形式でお届けする。こんな日もある、というバス運転士の日時用わ垣間見ていただければ幸いだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■小さなバスで多くの出来事が!
ちぃばすの芝ルートは大半が小型のEV車で運行されるが、日野ポンチョに当たることもある。運転士は交代でバスをどんどん乗り換えて運行するが、その日の最後の運行は日野ポンチョのEV化改造車に当たった。この車両は実用化試作で製造したうちの1台で、バッテリー容量は小さく設計上、1回の充電で30km程度しか走れないコミュニティバス専業のようなバスである。
しかし運転しやすく、ディーゼル車のポンチョと変わらないフィーリングである。その日最後の芝ルート1往復は充電したての車両を車庫から始発地であるみなとパーク芝浦に回送する。そして乗車扱いをして新橋駅に向けて発車するのである。みなとパーク芝浦は港区の施設で、敷地内にバス停がある。乗車はまばらで次の田町駅東口あたりが乗車の多いバス停である。
田町駅東口に到着して新橋行きであることを外マイクで案内すると、数名が乗車した。最後に乗車した乗客が新橋駅まで行くかを確認してICカードをタッチした。しかし、この路線を乗り通す人はほとんどいないので、一応時間がかかることを伝えた。すると電車で行った方がはるかに早いことを理解して下車する旨を申告した。
■事件です!
コミュニティバスあるあるで、誤乗ではないのだが目的地まで相当な時間がかかる場合は他の交通機関を選択した方が良い場合が多い。ちぃばすが有利なのは100円という運賃だけであり、途中停留所であれば乗ってもらうが、田町駅から新橋駅に行くのであればJRを選択するのがベストだ。
そこで、ICカード乗車券で運賃を支払っているため、次回乗車時に使用できる精算券を発行するか、現金で100円を返金するかのいずれかの選択になる。聞くと、東京在住ではなくちぃばすには乗らないと思うとのことで、100円を返金する選択をした。
こういう場合に備えて運転士は会社から誤乗や運賃箱故障時に返金やお釣り用として現金を預かっている。そしてそれ用の書類も持ち歩いている。多少の時間はかかるが、受領証に必要事項を運転士が記入して返金した乗客にサインをもらう作業をしているときだった。
先に乗車した乗客が手に100円硬貨を握り「急いでいるので100円あげるから降りて」と、返金する乗客に対して要求してきた。記者は、そういうわけにはいかないので「ルールですから」と粛々と書類を作成する。すでに発車時刻は過ぎてはいるが2分程度だ。
さらに激高した100円玉を握った乗客が「バスに乗った乗客を優先すべきだ」と今度は運転士である記者に対して抗議してきたので、「一度運賃をお支払いいただいた方は等しくお客様です」とだけ告げて、粛々と手続きを進める。それでも納得しない100円玉乗客は、「たかだか100円にこだわってないで100円あげるから降りなさいよ」と今度は乗客に対して文句を言い始めた。
記者は「こだわっているのは私ですから」と割って入り、書類ができたので署名をいただき100円を返金して何事もなかったかのように発車した。3分遅延だった。100円玉の乗客はふてくされて寝たふりをしていた。



