1966年に誕生し、現行モデルは20年という異例の長期間にわたって現役を続けてきたマツダの商用車「ボンゴ」が、2020年5月13日に生産終了していたことがわかった。
これは当サイトの取材に対して、マツダ広報部が回答したもので、ボンゴバンが5月13日をもって生産終了。そして、ボンゴトラックも今年度中に生産終了の予定だという。
現在、ボンゴを除くマツダの商用車はすべて他社が開発するOEM車となっているが、唯一自社開発モデルだったボンゴも、誕生から54年あまりの歴史に幕を降ろすことになる。
また、1931年の三輪トラック誕生から数えて89年続いたマツダの商用車自社開発の歴史にも、これでピリオドが打たれることになった。
本稿では、伝統あるボンゴの歴史に敬意を表しつつ、なぜ、このタイミングで生産終了となったのかをお伝えしたい。
文:渡辺陽一郎
写真:MAZDA、TOYOTA
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マツダ ボンゴ「今」生産中止の理由は?
商用車にはさまざまなタイプがあるが、街中で頻繁に見かけるのはワンボックスバンだ。トヨタには「ハイエース」や「タウンエース/ライトエースバン」、日産には「NV350キャラバン」や「NV200バネット」が用意される。
これらのカテゴリーに属するマツダ「ボンゴ」が、トラックを含めて生産を終えることになった。
そこでマツダの販売店に尋ねると、次のようにコメントしている。
「以前のマツダは商用車や軽自動車にも力を入れたが、今は魂動デザインとSKYACTIV技術による乗用車が中心だ。ボンゴは以前から売れ行きが下がっており、生産を終えることになった」
ボンゴは初代モデルを1966年に発売して、マツダの国内販売を支える大切な役割を果たした。現行型は1999年に発売され、すでに20年を経過したから設計が古くなっている。
これに伴って登録台数も下がった。2019年度(2019年4月~2020年3月)にマツダは国内で約2万2000台の商用車を販売したが、うち約8000台は軽商用車だ。
残りの1万4000台(月平均1200台弱)が、「ボンゴ」、「ボンゴブローニイバン」、「タイタン」、「ファミリアバン」で占められる。
これらのうち、「ボンゴブローニイバン」は、2019年4月にトヨタ ハイエースのOEM車になった。
ファミリアバンは、以前は日産 ADバン、2018年6月からはトヨタ プロボックスのOEM車に変更されている。
タイタンも2004年にいすゞエルフのOEM車になり、マツダが扱う商用車の多くは、すでにOEM車に切り替わっている。ボンゴだけが、小さな規模で生産されていた。
バンとトラックの生産終了時期が違う訳とボンゴの今後
ボンゴバンの生産は、マツダの工場が受け持つ。ボンゴトラックは、かつてマツダ製だった時のタイタンなどを手掛けていたプレス工業に委託生産されている。そのためにボンゴバンとボンゴトラックでは、生産の終了時期が異なるわけだ。
気になるのはボンゴが終了した後に、OEM車を導入するか否かだが、販売店では「今後の話は聞いていない」という。
仮にOEM車を導入するなら、業務提携を結ぶトヨタのタウンエースバン&ライトエースバンだろう。
ボンゴブローニィバンがハイエースに切り替わったのだから、単純にひとまわり小さな商用車を導入するなら、タウンエースバン&ライトエースバンに限られる。トラックも用意されるから、生産を終えるボンゴのラインナップを完全に補える。
ただし、今のタウンエース&ライトエースは、インドネシアにあるダイハツの工場が生産する輸入車だ。日本向けの生産台数は、両モデルのバンとトラックを合計して2018年度は約1万6000台にとどまった。月平均では1300台少々になる。
トヨタの販売店からは「タウンエースとライトエースは、エンジンが1.5Lで最大積載量も少ない。インドネシア製だから、状況次第では納期が分かりにくくなる」という話も聞かれる。
確かにタウンエースバン&ライトエースバンの場合、荷室長は2045mm、荷室幅は1495mmで、最大積載量は750kgだ。生産を終える従来型ボンゴバンは、荷室長が2375mm、荷室幅は1480mm、最大積載量は1150kgを確保する。
そうなるとボンゴバンの生産を終えた後にタウンエースバン&ライトエースバンのOEM車を購入しても、荷室は300mm以上短くなって最大積載量も400kg減ってしまう。
ユーザーによっては「以前は運べた荷物が新型の荷室には入らない」という話になるだろう。
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