ただ速いだけのコンパクトカーなら、ここまで語り継がれることはなかったはずだ。三菱 コルト・ラリーアート・バージョンRには、メーカーだからこそ実現できた“本気のクルマ作り”が詰め込まれていた! では、普通の実用車をベースに何をどう変え、どこまで性能を引き上げたのか!? ラリーアートが挑んだ、今ではなかなか味わえないワークス仕込みの1台を振り返る!
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部、三菱
【画像ギャラリー】筑波1分10秒切り目指して激走するコルトラリーアートバージョンRを大公開!! ランエボ並なフロントは伊達じゃない!!(22枚)画像ギャラリー「ワークス」だからできた! ラリーアートが市販車を鍛えた時代
「ワークス」という言葉はモータースポーツを知る人にとって特別な響きがあるはずだ。 レースの世界でいうワークスとは、自動車メーカー自身、あるいはその直系組織が車両を開発し、レースに参戦する組織を意味する。
そこに投入されるワークスマシンは、市販車を購入してチューニングショップが手を加えたクルマとは成り立ちからして違う。
自動車メーカーであれば、車体の板厚を変えることもできれば、CADで解析し溶接箇所を増やすことも、サスペンションの取付部を補強し、エンジンやトランスミッションの仕様変更までできる。必要なら生産工程にまで手を入れることが可能だ。そしてレースで得られた知見を量産車へフィードバックできることもワークス活動の大きな意味だった。
三菱自動車には、まさにそんなモータースポーツ活動によって市販車を鍛え上げてきた組織があった。ラリーアートだ。WRCやパリ・ダカールラリーなどで三菱の名を世界に知らしめ、ランサーエボリューションに代表される高性能車を生み出してきた。
目標は筑波1分10秒切り! 普通のコルトを本気で速くする
そんなラリーアートの考え方を、何の変哲もないコンパクトカーへ持ち込んだらどうなるのか。その答えのひとつが、コルトラリーアートバージョンRだった。ベースとなったコルトは2002年に登場した三菱のコンパクトカーだ。当時の日本ではホンダ フィットが大ヒットし、トヨタ・ヴィッツ、日産マーチなどが競い合っていた。
コルトも広いキャビンを持つ実用的なコンパクトカーだったが、強力なライバルを相手に存在感を際立たせることに苦労していた。
しかし、そんな実用車をベースに、三菱はとんでもないクルマを作ろうと考えた。単にターボエンジンを搭載してスポーティな外装を与えるという話ではない。開発陣に与えられた目標は「筑波サーキット1分10秒切り」だったのである。これは相当に高いハードルだった。
当時、筑波サーキットのラップタイムは国産高性能車の実力を示すひとつの指標として広く認識されていた。ランサーエボリューションなら1分4秒台が狙えたが、R33型スカイラインGT-Rでも1分7秒前後。1分10秒を切るということは、930世代のポルシェ911並みのラップタイムで、本格的なスポーツモデルに匹敵する速さを要求することになる。
一般的なコンパクトカーなら1分15〜16秒台でも十分速い。それを一気に1分10秒以下を狙うというのだから、タイヤを替え、足を硬め、エンジンの過給圧を上げれば済むというレベルではなかった。そこで三菱は、メーカーだからこそできる手法を惜しみなく投入した。
搭載された4G15型の1.5リッター直列4気筒DOHCターボはMIVECを採用し、最高出力154PS/6000rpm、最大トルク210Nm/3500rpmを発生する。今の基準で154PSという数字だけを見れば驚かないかもしれない。
しかし重要なのは、単なる最高出力競争をしていないことだ。5速MTにはドイツ・ゲトラグ製の強化型を採用し、クラッチもZF製。さらにシフトリンケージにはランエボで培った技術を投入し、操作剛性まで作り込んだ。排気系も排圧低減を狙って大径化されている。
























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