見た目だけでなく、性能を向上させるホンモノのつくり込み
現在では高性能モデルをメーカー自身が仕立てることは珍しくなくなった。トヨタにはGRがあり、日産にはNISMO、スバルにはSTIがある。欧州勢にもメルセデスAMG、BMW M、アウディスポーツなどが存在する。
しかしコルト・ラリーアート・バージョンRが登場した時代に、実用コンパクトカーをここまで徹底して作り替えることは決して当たり前ではなかった。しかも、単なる限定車的なドレスアップモデルではない。
見た目にもランエボを思わせるエンジンフードのエアアウトレットを設けているが、それも単なる装飾ではなくエンジンルームの熱を抜き、インタークーラーの効率を高めるという機能を持たせている。大型化されたラジエターグリルも同様で、必要な性能を追求した結果が外観に現れている。
速そうに見せるために形を作るのではなく、速く走らせるために必要な形にしたら、それが結果として格好よく見える。モータースポーツから生まれたクルマの魅力はそこにある。コルトという普通のコンパクトカーが、ラリーアートの手に掛かることで別物になった。
車体構造からサスペンション、ステアリング、ブレーキ、冷却、タイヤに至るまで、クルマをひとつのシステムとして作り直したことだった。
最後のアタックが証明したワークスの本気
実はタイムアタック本番の時、例によって「ベストモータリング」でインカーカメラを幾つも積載し、リアリティのあるドラマ映像の撮影を狙った。
しかし、当時の録画機材は1台で10kg近く、3台も積み込めばタイムに影響が出る。撮影中は1分10秒を切れず、最後のアタックで機材を全て降ろして慢心のアタックを敢行し1分9秒9を叩き出せたのだ。
いま改めて振り返っても、コルト・ラリーアート・バージョンRはメーカーが本気で取り組み、メーカーワークスという言葉が持つ意味を、もっともわかりやすい形で示したチャレンジだったと思うのだ。
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