国内すべてのバス事業者に見て乗りつくそうとすると、数多い離島にしか存在しない事業者もあり枚挙にいとまがない。九州や瀬戸内海、沖縄も航空機の普及によって、朝、羽田を出てもその日のうちに到着できるが、東京には超難所がある。それは路線バスが活躍している小笠原父島の村営バスだ!!
(記事の内容は、2026年6月現在のものです)
取材・執筆・写真/高橋俊哉
※2026年6月発売《バスマガジンvol.133》『スーパーバストピっ』より
■フェリー停泊期間と航行期間では運用されるバスが違う!?
空港は存在せず、フェリーは6日に1便、所要24時間で現地・父島に到着する。その後4日間停泊し本土に戻るまでに6日間を要する。しかし、本土とのつながりがほかにはないこの地は自然も素晴らしい。その交通の不便さをモノともせず、あらゆるコンプリートを目指す者たちが竹芝桟橋を後にする。
離島愛好者はもちろん、切手収集ブーム以来多数存在する郵便局愛好者が、すべての郵便局で貯金するために小笠原を目指す場合もある。小笠原諸島には、父島以外の有人島として母島があるが、バスにとっては父島で完結となる。
小笠原村営バスは中心地大村地区を回る循環線、内回りをブルーライン、外回りをオレンジラインと呼んでいる。さらに小さな集落を海沿いに東京最南端のバス停が終点となる、扇浦線も運行されており、この3路線を1台で運用している。
フェリー停泊期間は利用者も多く、原則としてポンチョで運行。フェリーが島を出航し、次に戻って来るまではハイエース中心で運行する。
■1日券も販売する営業所が路線の起点として機能している
合同庁舎と警察が目の前、向かい側は村役場がある役場前バス停。発車後すぐにブルーラインと扇浦線は左折し、反対周りのオレンジラインは右折する。
島のメインストリートである大村地区はJA、酒場、生協が並び、歩く人の数も多くにぎやかだ。そして清瀬まで来ると左折して内陸へ向かい三日月山の急坂を登る。道の右側には島内唯一の高校がある。1校のみなので受験戦争もなく、母島在住者も登校し、傍らに生徒と職員の宿舎もある。
続く道の診療所には老人ホームもありすべての医師が待機。さらに急坂を登ると小中学校がある。学校前までは急な坂とあって、朝は児童・生徒たちもバスを利用している。
庁舎に勤務する職員たちのほとんどは、本土からの転勤者ばかりで、近辺の公務員住宅で家族も居住しているため、生活路線として大切な存在だ。またこの三日月山からの大村集落を一望できる車窓の景観は見事!! 坂を下れば営業所へと戻る。
■もうひとつの路線、扇浦線で最南端/最東端のバス停へGO!!
さてもう一方の路線である扇浦線に乗車。清瀬までは循環線と同じルートをたどり、大浦地区では人の往来が多く、港にはフェリーも停泊する。その傍らはビーチで、水泳を楽しむスポットだ。小笠原諸島は1年中泳げることが自慢で、元旦のテレビニュースでは海開きが紹介されている。
全線23.1kmの都道240号線を直進し、二見漁港を過ぎてバスは快走。山が迫りトンネルをくぐり抜けると「鏡浦海岸」だ。都内最東端のバス停となる。
右を見ればホニアンブルーの海が広がり、沖縄のエメラルド色とは違った青に魅了される。釣りを楽しむのはもちろん、ドルフィンスイムやシーカヤックなどマリンスポーツに勤しむ人々の姿は実に楽しそうだ。
扇浦海岸から内陸へ向かって森林浴を楽しむ姿も見える。マリンスポーツに負けず劣らず楽しそうなプランだ。
なだらかに坂を上って八瀬川沿いに進む。流れてきた大木が河原に引っかかったりしているが、雨降りの翌日で水量も多く、少し流れが急なのだろうか。こんなことを考えていると、ジャングルの中に入り込むかのように東京都最南端のバス停、終点「小湊海岸」に到着した。
東京都中央区から約1000km、本土からは一切陸でつながったことのないこの地、見たことも聞いたこともない植物や小鳥の姿、さえずりを聞いて静かに夜を迎えた。
そして空を見上げると今までお目にかかってもいなかった一面の星。これには魅了された!!
【画像ギャラリー】来た!! 見た!! 乗った!! 所要24時間&帰りの船は6日後!! それでも乗りたい小笠原村営バス!!(11枚)画像ギャラリー













