黒字はトヨタとスズキだけ! どうしたライバル! 明暗分けたのは商品力=クルマ力の差!?
自動車メーカーの上場9社における第1四半期決算(2020年4~6月)を見ると、コロナ禍の影響を受けて、7社が最終損益で赤字になった。赤字を免れたのは、トヨタとスズキであった。
同様のことは国内販売にも当てはまる。2020年1~7月の各社の国内販売台数(OEM車を含む)を見ると、トヨタは他メーカーと同様に対前年同期比が減少したものの、マイナス14.6%に留まった。日産は23.8%、ホンダは22.1%、ダイハツは17.8%減っており、トヨタは落ち込みが小さい。
そこで盤石なトヨタと、沈下する他メーカーの違いを考えてみたい。他メーカーがコロナ禍の影響で売れ行きを大きく下げたのに、トヨタの減少が小さかった背景には、複数の理由がある。
文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN
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■トヨタは過去1年間で売れ筋の新車を多数投入
まず、トヨタは2019年から2020年にかけて、国内市場に合った堅調に販売できる新型車を着実に投入していた。
RAV4(2019年4月)、カローラセダン&ツーリング(2019年9月)、ライズ(2019年11月)、ヤリス(2020年2月)、ハリアー(2020年6月)は、いずれも販売ランキングの上位に入り、コロナ禍による対前年比のマイナスを抑えた。
厳密にいえばRAV4は、2019年4月の発売だから当初は今以上に高い人気を得ていた。従って2020年5~7月の対前年比はマイナスが大きい。それでも2020年1~7月の期間で見れば、トヨタ車の売れ行きを押し上げる効果を果たした。
また、ヤリスの発売は2020年2月だが、2019年10月には車両概要を明らかにして、12月には価格も公表していた。予約受注も開始したから、一時は納期が3~4か月に伸びている。
従って国内販売が大きく落ち込んだ4月(※国内全体の対前年比はマイナス28.6%)、5月(同44.9%)、6月(同22.9%)の時点で、ヤリスはコロナ禍前の2019年12月~2020年3月に契約した車両を登録/納車していた。
納期の遅延はユーザーと販売会社の不利益になるが、コロナ禍では、この時間差が対前年比の下落を和らげている。
他メーカーは、トヨタに比べて好調に売れる新型車が少なかった。最近発売され、なおかつ販売ランキングの上位に入る車種は、タント(2019年7月)、N-WGN(2019年7月)、ハスラー(2019年12月)、ルークス(2020年2月)、フィット(2020年2月)などで、軽自動車が目立つ。
■軽比率高いホンダと新車少ない日産
販売ランキングの上位に入る小型/普通車で設計の新しい車種は、トヨタ車以外ではフィットだけだ。
ただし、そのフィットも、同時期に発売されたライバル車のヤリスに比べると、登録台数が少ない。
ホンダには国内販売1位のN-BOXがあり、今では国内で売られるホンダ車の半数以上が軽自動車だ。フィットの価格帯はN-BOXと重なり、ユーザーを奪われている。
フィットは空間効率の優れたコンパクトカーだが、N-BOXは、軽自動車なのに車内がさらに広い。自転車も積みやすく、フィットよりもN-BOXに魅力を感じるユーザーが多い。
そして、ホンダの2020年5月の登録台数を見ると、フリードが45.1%の減少、ヴェゼルも65.9%、ステップワゴンは66.8%という具合に大幅に減った。
そのためにフィットなどの一部車種が健闘したものの、総合的に見ると、2020年5月にはホンダの国内販売が45.1%減少している。
日産は、2020年2月にルークスを発売して堅調に売ったが、全般的に設計の古い車種が多い。6月にキックスが登場するまで、デイズ+ルークス+ノート+セレナの4車種だけで、国内で売られる日産車の60%以上を占めていた。
2020年5月の販売台数では、デイズが67.6%、ノートも56.9%、セレナは53.1%減っている。新型車が少なく、売れ筋が一部の車種の偏っていた結果、日産車全体では2020年5月に44.9%減った。
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