新型ハリアーは2020年4月にトヨタがホームページにてプロトタイプを公開して以降、クルマ界の話題の中心となっている。
事前予約も受け付けていたため、デビュー後1カ月で月販目標3100台の14.5倍となる4万5000台を受注するなど、その売れっぷりたるや驚異的なレベル。
デビューを心待ちにして、販売会社で実車を見て購入を決める人が相次いている状況で、当然納期も長期化している。
新型ハリアーが成功している理由について国沢光宏氏が考察する。
文:国沢光宏/写真:TOYOTA、池之平昌信
【画像ギャラリー】2020年上半期の話題を独占した新型ハリアーの勢いは衰えることを知らない!! まだ実車を見ていない人も画像で詳細チェック!!
価格を考えると驚異的な売れっぷり
新型ハリアーが売れている! 7月の登録台数は9388台で、ヤリス、ライズ、カローラに次ぐ4位! 一般的に売れ行き上位はリーズナブルなコンパクトカーになっているなか、支払い価格で400万円以上の新型ハリアーが食い込んでいるのだから凄い!
加えて今オーダーした時の納期も、早いグレードで年内ギリギリ。平均すれば半年待ち。
なぜこれほど売れているのか? 分析していくと、逆説的ながら同じジャンルに属するホンダCR-Vの徹底的な失敗も見えてくるから面白い。
以下、じっくり考えてみよう。
値上げ予想もまさかの値下げで登場
ということで、1)大ヒットになった最大の要因は価格戦略にあると思う。
新型ハリアー、デビューするまで先代ハリアーから30万円程度の値上げすると予想されてました。
ところが発表された価格は、ホンの僅かながら値下げした299万円! スペックを見る限り安くなる要素、皆無です!
例えばエンジン。新型から新しい世代の2Lを搭載しているのだけれど、出力10%増しており従来の2400cc相当。それでいて燃費が15%改良された。普通、エンジン出力上がったら当然ながら値上げでしょう。
装備面の向上も大きい。先代ハリアーの自動ブレーキは2世代前のシステムで、夜間の歩行者検知できず。クルマの陰から出てくる歩行者に対する反応も鈍い。
新型になり世界TOPレベルとなったうえ、コネクテッドまで標準装備される。マツダの藤原副社長によれば、コネクテッド機能だけで30万円くらい値上げしないとダメだという。
さらにクルマ作りにもキッチリとコストをかけている。乗り心地の質感が圧倒的に高くなった。
ボディサイズはひと回りグレードアップされ、LEDも多数採用。インテリアを含め大幅に高級感出てます。
マークXを買っていたユーザー層でも満足できるレベル。いや、本革使ったグレードだとレクサスと比べたって負けてない。
そればかりかApple CarPlayとAndroid Autoと接続が可能な8インチ液晶が標準装備される!
3万円の上乗せすることによりフルセグTVまで付いちゃう! 30万円くらいしていた従来の純正オーディオと比べたら実質的な値下げ。
ホンダなら間違いなく40万円以上値上げしていただろう。それを値下げしたんだから魅力的だ。
ハリアーこそプレミアムSUVの元祖で新型も継承
売れる理由2)は、やはり都会派のSUVだということでしょう。
SUVにも2つの流れがある。
まず正統派のクロカン4WDをルーツに持つタイプ。トヨタならRAV4ですね。アウトドアを意識したデザイン&雰囲気を訴求し、アクティブなユーザー層にアピールしてます。ゴツいタイヤに履き替える人も少なくありません。
けれどハリアーは初代から都会派でしたね。そもそも初代ってレクサスRXとして開発された。その流れをキッチリとキープしており、エクステリアやインテリアともにオフロードの雰囲気無し。
考えてみたらハリアーがプレミアムSUVの元祖です。その後、ポルシェもカイエンを出し、アウディはQシリーズ、BMWもXシリーズを出している。
今までオフロードと縁の無いセダンやミニバンに乗っていたようなユーザー層も、ハリアーのような”限りなく乗用車”風のSUVであれば毎日の足にしたってストレス無い。
むしろ都市部でトレッキングシューズを履くようなアクティブさを演出できる。実際、新型ハリアーのインテリアって、SUVというより上級セダンです。
新型ハリアーは圧倒的に満足感が高い
売れる理由3)は圧倒的な満足感だと思う。ディーラーに新型ハリアーを見に行くと、とにかく豪勢&立派! これだけ押し出しの効くクルマのオーナーになるのかと考えたら、それだけでワクワクしちゃう。
さらにドア開けて室内に入ると、マークXクラスや同じ価格帯のミニバンと比べ、新しいデザインコンセプトで華やか。
そして299万円スタートの価格を見て購入しようという気になってしまう。その証拠に新型ハリアー、2LエンジンのFFが人気だという。
価格でその気になり、インテリアの豪華さを求め上級グレードを選ぶ。けれどハイブリッドや4WDになると見えない部分でポンと価格が上がるため、そちらにはいかない傾向。
ハリアーは中古でも高値安定
トヨタのマーケティング戦略が見事に成功した、ということだと思う。
この狙い、ユーザーの幸せにもなってます。中古車市場でも高い人気をキープしているため、手放す時の査定が信じられないくらい高いのだった。
直近でクルマ選びに迷ったなら新型ハリアーの『G』以上のグレードを買っておけば間違いないかもしれません。ホンダは少し参考したらいかがか?
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