昨今の自動車業界の大きなテーマとして「電動化」がある。とにもかくにも電動化。そんなヨーロッパの勢いは凄まじいものがあるが、そこには環境性能のほかにも経済的な意味もあると西村直人氏はいう。
同氏がフランクフルトショーで見たメルセデスの展示についてレポートします。EV専門ブランドの立ち上げなどEVに積極的なメルセデスは、今後いったいどのようなクルマを生み出すのか?
文:西村直人/写真:メルセデス・ベンツ
ベストカー2017年11月10日号「メルセデスの電動化に阿鼻叫喚」
■将来のシェア確保のための電動化!?
クルマ社会に電動化の波が急速に押し寄せているのだろうか?
IAA2017フランクフルトモーターショーで取材を行ったが、確かに欧州自動車メーカーからはピュアEVを筆頭に電動パワートレーンを搭載したコンセプトカーが数多く出展され、その意味では波を実感できた。
しかし、単に電動化ありきで、すべてのことが運んでいるだけではなかった。ズバリ、今回の電動化、将来に向けて販売台数を死守したいとする自動車メーカー各社の思惑が強いのでないか、こうした持論を持った。
つまり、電動化の波に乗り将来に渡るシェア確保(=販売台数確保)へとつなげたい、そんな目論見が垣間見えたのだ。
この先、先進国における車両販売台数の鈍化が見込まれるなか、新興国におけるシェア確保をという姿勢を欧州のプレミアムブランドも採らざるを得ない。
また、電動化車両のうち、とりわけピュアEVは内燃機関車両と比べて部品点数が少ないことからメーカー各社はそこに利益率の向上という理想も描く。
しかし確固たる電動化の実現には、HVやPHVなどに代表される内燃機関との共存を第一に考えながら48Vから高電圧に至るバッテリーの安定供給を確保しなければならず、同時にモーターや回生ブレーキのさらなる技術昇華も必須だ。
またピュアEVにしても充電率の低下から駆動用として役割を終えたバッテリーの二次活用策にもこれまで以上に注力する必要がある。加えて、販売各国の電力事情や充電環境にも大きく左右される。新興国であればなおさらだ。
そのため、いきなり市販車に近いピュアEVがたくさん示されたとしても、結果的に車両価格が高めに設定されてしまっては一部の富裕層を除き、すんなりとユーザーには受け入れられない。
言い換えれば、優れた電動化技術だけでは理想郷にほど遠く、それを活用し安価に普及させるための将来像をセットで示さなければシェアの確保どころか、すべては絵に描いた餅になってしまうことが今回のIAAで明らかになったように思う。
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