2017年もいよいよ押し迫ってきましたが、今年も華やかな新車が数多く登場し、それに呼応するかのように多くのクルマが新車市場から去っていきました。
行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。
今年去っていったクルマたちの哀悼企画は別途お送りするとして、本企画ではこれまで生産中止となったなかで、特に当サイト編集部員が思い入れの深いクルマたちの「よかったところ」と「生産中止となってしまった理由」を、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に解説してもらいました。
墓石に花を添えるように、去っていったクルマたちのことも、時々でよいので思い返していきたいと思います。
文:渡辺陽一郎
■スズキキザシ 2009〜2015年
◎よかったところ
スズキが欧州などの海外向けに開発したミドルサイズセダンで、3ナンバーサイズのボディに直列4気筒2.4Lエンジンを搭載した。
一番の魅力は、オペルやヨーロッパフォードなど、地味で実用的な欧州製セダンの持ち味を濃密に感じさせたことだ。運転感覚もオペル風で、欧州車としては車両の向きを変えやすく、その代わりに後輪の踏ん張りは少し緩かった。
従って走行安定性はいまひとつだが、ドライバーのコントロール領域は広い。乗り心地はタイヤが18インチだから硬く感じたが、17インチを履かせればバランスが向上したと思う。
◎生産中止になった理由
もともと地味で売りにくいクルマだったが、グレードの設定方法も誤っていた。本革シートや18インチアルミホイールなどを標準装着して、価格が約280万円に達したからだ。
過剰な装備を省き、17インチタイヤを履いた仕様を249万円くらいで設定すれば、マニアックなクルマ好きの間でもう少し人気を得られただろう。
またミリ波レーダー方式の緊急自動ブレーキをオプション設定したのに、報道向けのニュース配信を行っていない。メーカーの売る気が乏しく、生産も長続きしなかった。
■日産スカイラインクロスオーバー 2009〜2016年
◎よかったところ
海外ではスカイラインが上級のインフィニティブランドで扱われ、そのSUVモデルとしてEX35が設定された。
これを日本で販売する際に、同じプラットフォームを使って開発され、フロントマスクの形状も似ていることからスカイラインクロスオーバーと名乗った。
最低地上高が150mm(4WD)にとどまるなどSUVの魅力は乏しかったが、走行性能、居住性、積載性の優れたスカイラインの5ドアハッチバックと考えれば魅力的であった。4名乗車が快適で、荷物も積みやすく、しかも運転感覚の上質なクルマは珍しい。
しかも全幅が1800mmに収まり、外観のデザインが水平基調だから側方や斜め後方の視界も良い。V型6気筒エンジンの搭載と、運転のしやすさの両立も魅力だった。
◎生産中止になった理由
スカイラインクロスオーバーは走行性能と実用性を高い水準で両立させたが、価格も高額だった。価格は2WD(後輪駆動)の370GTでも420万円、4WDで装備を充実させた370GT・FOUR・タイプPになると500万円を超えてしまう。
エンジンはV型6気筒の3.7Lのみで、スカイラインセダンのような2.5Lは設定されない。またスカイラインにはクーペやセダンのイメージが強く、SUVのクロスオーバーはミスマッチだったことも災いした。
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