ダイハツの軽商用車であるハイゼットが、60周年を迎えた。
1960年(昭和35年)に初代が発売され、累計販売台数は740万台に及ぶ。加えて、トヨタ ピクシスバン/トラックやスバル サンバーバン/トラックへも供給されているので、さらに総数は多いはずだ。現在の保有台数は、約220万台となっている。
競合は、スズキ キャリイ(トラック)、スズキ エブリイ(バン)であり、こちらも1961年の発売であるから、59年の歴史を刻む。
ダイハツとスズキの両車が、軽商用車の競合関係にある。かつては、スバル サンバーやホンダ アクティなど、他車にも軽商用車はあったが、サンバーはハイゼットのOEM(他社のクルマを自社名で販売)であり、アクティは2021年に生産を終える予定となっている。
ハイゼットとキャリイ/エブリイの販売台数は、トラックではハイゼットがキャリイを上回り、バンではエブリイがハイゼットを上回る構図となっている。2020年上半期(4~9月)の軽自動車販売台数を見ると、ハイゼット トラックが3万4109台であるのに対し、キャリイは2万4828台だ。
この傾向は、昨年1年間の販売でも変わらない。そしてハイゼットトラックは、過去10年間1位の販売台数を記録している。
一方、軽商用バンのハイゼットカーゴが今年上期では2万9630台で、エブリイが2万4575台となっているが、実は2019年1年間の成績を見ると、エブリイが4000台近く上回っている。
なおかつ軽商用バンでは例年、スズキが上回る傾向が続いている。たしかに宅配便などの配送では、エブリイの姿をよく見かけるような気がする。
しかし、軽商用トラックでは、なぜダイハツのハイゼットが優位に立っているのだろう。スズキのキャリイは、過去39年間軽商用トラックの1位にあった。
だが、2010年にハイゼットトラックが首位を奪還していらい1位を守っているのである。その背景を探る。
文/御堀直嗣、写真/DAIHATSU
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■ハイゼットはなぜキャリイから軽トラNo.1の座を奪えたのか
キャリイは、1999年の10代目へのモデルチェンジに際して、それまでの「キャブオーバー」の構造から、「セミキャブオーバー」へ構造を転換した。当時、その姿に目を見張ったものだ。
キャブオーバーとは、エンジンの上に座席がある方式で、セミキャブオーバーはエンジンより少し後ろ側に座席がくる。
これによって、セミキャブオーバーは前輪の位置がより前寄りになり、ホイールベースが伸び、オーバーハングは短くなる。軽商用でも、バンは、ハイゼットカーゴもスズキ エブリイも現在はこの形式を持つ。セミキャブオーバーのほうが、ロングホイールベースであるため、いかにも走行安定性が高そうだ。
ところが、キャリイは、荷台の長さが短くなり、不評を買い、同年のうちに荷台を長くした仕様変更を行っている。さらに、2005年には再びキャブオーバーのショートホイールベースへと変更した。
理由は、多くの顧客を抱える農家などからの要望によるものだった。そして2013年の11代目へのフルモデルチェンジでは、キャブオーバーとして発売されるのである。
軽商用車でも、トラックとバンでは使われる業種が異なる。トラックは、農業など1次産業の現場で利用されることが多く、たとえば田や畑の畦道に入って使われることもあり、道路以外の場所での小回りが重視される。このため、より回転半径を小さくとれるキャブオーバーであることが好まれる。
キャリイも、セミキャブオーバーの利点をトラックでも活かそうとしたのだろうが、再びキャブオーバーに戻される間に、ハイゼットトラックに首位の座を奪われたといえる。
また、軽商用トラックは、荷台に1畳の畳を載せられることが基準だと聞いたことがあり、セミキャブオーバーで登場した前期の荷台は、長さが足りなかったと聞いたこともある。
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