■ハイゼットの逆転を実現した“働くクルマ”としてのいち早い対応
首位逆転のもう一つの理由は、防錆対応の遅れもあったのではないかと思われる。一次産業の農業などで長く過酷な条件で使われる軽商用トラックへの防錆に関して、ハイゼットトラックは車体の防錆処理範囲を早くから広げることを行ってきた。
1999年の9代目から、車体表面の約85%に亜鉛メッキ処理による防錆鋼板を採用。さらに、2004年にはその範囲を約90%に、2012年には95%へ拡大している。
これに対し、キャリイは2013年に95%とする。それまでも重防錆仕様として穴開き錆5年、表面錆3年の保証を行っているが、防錆仕様への対応に若干のズレがあった。現在では、両車両とも100%となっているが、これも2014年に先に手を施したのはハイゼットトラックで、キャリイは2015年からとなる。
そのほか安全装備に関しても、衝突被害軽減ブレーキを軽商用トラックへ先に採用したのはハイゼットトラックであり、2018年のこと。高齢者による交通事故の問題が注目を集めるなか、高齢の農業従事者の多い軽商用トラックへの対応が早かった。
キャリイも翌2019年には夜間の歩行者へも対応した衝突被害軽減ブレーキを、軽商用トラック初採用するが、一歩後という対処の仕方は相変わらずだ。
働くクルマとして、また高齢な従事者を視野に入れた開発で、ハイゼットトラックは早めの手を打てたといえるのではないか。
■性能や装備はライバルと互角でも光るダイハツの軽トラ作り
技術や機能とは別の視点でも、ダイハツは次のようなことを行っている。
10代目のハイゼットトラックは、カーゴに遅れて2014年にモデルチェンジとなったが、ここで軽トラックとしては異例ともいえる8色の車体色を選べるようにした。
働くクルマに彩を添え、働く喜びにつなげようとした取り組みだ。その結果ハイゼットトラックが様々に活躍する様子が、目に留まるようになるのである。
ほかにも、軽トラック初となるスーパーUV/IRカットガラスなどを採用したビューティーパック、メッキグリルを採用するなどのスタイリッシュパックなどセットオプションを設定し、農林水産省が2013年に開始した農業女子プロジェクトと連携した、農業女子パックの販売も行っている。
軽商用トラックを単に実用性だけでなく、存在を引き立たせる取り組みをはじめたのである。
一日8時間働くとして、その時間は暮らしの1/3に相当する。それをただ収入のためだけに費やすか、あるいは人生の貴重な時間として喜べるか、その差は大きい。
ダイハツは、軽自動車を基にした小さなクルマを得意とする自動車メーカーであるとともに、そのクルマで何をするかという事柄にも目を向け、商品開発を行っている。
たとえば、現行のタントを開発する際には、高齢者にとって乗車しやすい福祉車両の視点を採り入れる活動を、産官学民の共同で実施した。
現在のハイゼットトラックとキャリイの性能や装備、特装車の選択肢は、互いにほぼ遜色ない品揃えに見える。加えて、仕事への意欲を喚起したハイゼットトラックに惹かれる人が多いため、販売1位を続けられているのではないだろうか。
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