「フルモデルチェンジ」といえば多くの場合、見た目も中身も大きく刷新される車が多い。しかし、最近では外見がほぼ変わらないフルモデルチェンジも増えている。ホンダ N-BOXもまさにその例のひとつで、写真を見ても正直「どちらが新型?」と見紛うほどだ。6月下旬に新型が登場するスバル フォレスターも見た目は、現行型にかなり近い。そんな「超キープコンセプト」なフルモデルチェンジ車は進化しているのだろうか。肝心なのは“中身”の進化だ!
文:渡辺陽一郎/写真:編集部
見た目は不変のN-BOX、中身は超進化
N-BOXは先代(初代)モデルの人気が高く、2011年の発売後、2013年/2015年/2016年/2017年には、軽自動車の販売1位になった(スラッシュやプラスを含む)。特に2017年は、小型/普通車も含めた国内の総合1位だ。
このような超絶的な人気を6年間も維持すると、大幅な路線変更は危険が伴う。売れ行きが落ちるかも知れない。
あまり変えたくないから、「フルモデルチェンジは行わず、必要に応じて細かな改良を続ければ十分」という判断も成り立つ。
しかし、安全装備や燃費は進化させないと、販売競争でライバル車に負けてしまう。そこでN-BOXは、外観の変更は小規模にとどめ、中身を充実させるフルモデルチェンジを行った。
最も進化したのは緊急自動ブレーキを作動できる安全装備で、ミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーに使う高性能なホンダセンシングを採用した。
さらに軽自動車では唯一、車間距離を自動制御できる運転支援のクルーズコントロールも備わる。
ちなみにホンダセンシングは、プラットフォームを一新したから装着できた。N-WGNやN-ONEがマイナーチェンジで付けることはできず、この2車種は売れ行きを下げた。
N-BOXは機能を幅広く刷新させ、軽量化を行って動力性能と燃費を向上させた。シートの座り心地も上質になっている。外観の変わり映えは乏しいが、中身は大幅に進化した。
◆N-BOXの進化度:9.5点/10点
外観の変化を犠牲にして視界を守るインプレッサ
今のマツダはこだわりのある車作りをし、「魂動デザイン」と「SKYACTIV技術」を前面に押し出す。
これに比べてスバルは、マツダほど肩肘を張らない。いわゆる「こだわり」はあまり感じさせないが、理詰めの車作りはマツダ以上だ。
それを感じるのが視界だ。今の車は、国産・輸入車ともに、外観をカッコ良く見せるために全般的に視界を悪化させた。
ボディの後部は、サイドウインドウの下端が高く、斜め後方や真後ろが見にくい。ところがスバルだけは、この悪い流行に迎合せず、視界の良い車を作り続ける。
正確にいえば、インプレッサスポーツは現行型になって後方視界を少し悪化させたが、ほかの車種が劣悪になったから、今でも周囲が見やすい部類に入るのだ。この良好な視界を守るため、スバルは外観の変化を犠牲にしている。
インプレッサは新開発のプラットフォームを採用して走行安定性と乗り心地を高め、2Lエンジンも新開発の直噴式で、十分な動力性能と低燃費を両立させた。歩行者保護エアバッグも採用されている。
◆インプレッサの進化度:8.5点/10点
欧州車同様“らしさ”守るスイフト
スイフトは欧州などの海外でも売られるため、欧州車と同じく「スイフトらしさ」を守る。現行型も小柄ながら引き締まり感が伴い、後方視界は悪化したが従来から受け継ぐスイフトのイメージは濃厚だ。
現行型ではプラットフォームが刷新され、単眼カメラと赤外線レーザーを使った歩行者を検知できる緊急自動ブレーキも備わる。
さらにミリ波レーダーを使った車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも採用した。中身はけっこう進化している。
◆スイフトの進化度数:7点/10点
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