トヨタが水素エンジンで24時間レースを戦い抜けた。これは大きな話題になったが、実は過去にも水素エンジンに挑んだメーカーはあった。
それがBMWとマツダだ。しかし両社の水素エンジンとも実用化はされることなく、ひっそりとカーマニアのみぞが知る歴史の一部となっている。歴史ある自動車メーカーがギブアップしてしまう水素エンジン。いったいなにが難しいのだろうか?
今回はメカニカル面から水素エンジンの難しさ、そして可能性を紐解きます。
文/鈴木直也、写真/BMW、MAZDA、TOYOTA、ベストカー編集部
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■燃えやすい水素を安定して燃焼させる難しさ
スーパー耐久富士24時間レースで「水素燃料カローラ」が完走したのが話題になっている。
こいつは水素燃料とはいってもミライのようなFCVではなく、ガソリンの代わりに水素を燃焼させる内燃機関を搭載しているのがミソ。事前のアナウンスがほとんどなかったサプライズ参戦だったこともあり、「トヨタも水素燃焼エンジンの開発をやってたんだ?」と、業界関係者に驚きの声が上がった。
というのも、水素燃焼エンジンは、いわゆるオワコンと思われていたからだ。
エネルギー源としての水素は、FCVにしろ水素燃焼エンジンにしろ、理論的には「排出されるのは水だけ」というクリーンさが魅力。
FCVの開発がなかなか進まなかった21世紀はじめの頃は、BMWやマツダを筆頭に熱心に研究開発が行われ、BMW ハイドロジェン7やRX-8 水素ロータリーなどがメディアの注目を集めたこともあった。
しかし、これらの先行事例はリース車両を走らせるレベルまではこぎ着けたものの、その後が続かなかった。
ボトルネックとなったのは、水素燃焼に特有の「早期着火」の問題と、水素をコンパクトに搭載する難しさだ。
最小点火エネルギー(理論混合気)でみると水素はガソリンの10倍着火しやすく、高温となる排気バルブ付近で容易に早期着火が発生する。この点では、燃焼室と排気ポートが離れているロータリーは有利だったが、BMWはこれに苦しめられた。
また、水素の搭載方法については、マツダはミライと同様の圧縮水素、BMWは液体水素をトライしていたが、いずれも十分な実用性を確保することができなかった。
とくに、マイナス253度の液体水素を選んだBMWの苦労は並大抵ではなく、気化したボイルオフガスを一旦リザーバーに貯蔵し、それでも使い切れなかった水素は触媒反応でH2Oにして排出するなど、ほとんど「走る化学プラント」状態。「クルマに液体水素はムリ」という厳しい現実を自ら証明する結果となった。
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