従来のアクティバンに代わるFFレイアウトを採用したホンダの新たな軽商用バンとして、2018年の登場時に注目を集めたN-VAN。しかし、その後も圧倒的に売れている軽商用バンは従来の1BOXタイプであるスズキ エブリイとダイハツ ハイゼットカーゴだ。
N-VANと同じFFベースだったダイハツのハイゼットキャディーは今年3月末に販売が終了。現在は室内の広さで有利な1BOXタイプのエブリイやハイゼットカーゴがあり、FF・2BOXのN-VANもあるという状況だが、電動化などの波も押し寄せている今後の軽商用バンはどうなっていくのか?
モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏は次のように考察する。
文/渡辺陽一郎
写真/NISSAN、MITSUBISHI、SUZUKI、DAIHATSU、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】日本の物流を支える主要な軽商用車たち 今後の運命は?
■軽自動車の商用バンは日本の物流を支える重要な存在
配達などに使われる軽商用車は、日本の物流を支える大切な存在だ。新車の売れゆきも堅調で、2020年度(2020年4月~2021年3月)には、軽商用車は39万4861台が届け出された。4ナンバー車として登録される小型貨物車の23万4095台を大幅に上まわる。
そして軽商用車は、軽バン(アルトなど乗用車ベースのバンを含む)と、軽トラックに大別される。売れゆきは軽バンが多く、軽商用車全体の54%を占める。
ただし今は各メーカーとも、電動化などの環境技術、自動運転や安全性の向上に力を入れる必要があり、コスト低減の観点から車種の数を減らしている。薄利多売の典型とされる軽商用車は、その対象に入りやすい。
■軽自動車販売台数NO.1のN-BOXから生まれた商用バン
直近ではホンダアクティトラックが生産を終えた。アクティのバンは、2018年7月の時点で、N-VANに変更されている。アクティバンは、アクティトラックと同じく軽商用車用に開発された後輪駆動のシャシーを備えたが、コストとのバランスで専用設計を保ちながらフルモデルチェンジするのは難しい。
そこでN-BOXと基本部分を共通化した前輪駆動のN-VANに発展した。
N-VANはN-BOXと同じくエンジンをボディの前側に搭載するから、後部の床下に収めていたアクティバンに比べて荷室長が短い。アクティバンの荷室長は1725mmだったが、N-VANは1510mmと短く、長くて幅の広い荷物は積めなくなった。
そこでN-VANは、左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させて開口幅を1580mmとワイドに確保する。後席に加えて助手席まで畳み、荷室面積を広げられる工夫も施した。
ほかの軽バンに見られない機能だが、2020年度におけるN-VANの届け出台数は3万2125台(1カ月平均では2677台)に留まる。ダイハツハイゼットカーゴの6万6380台(同5532台)、スズキエブリイの5万9027台(同4919台)に比べると大幅に少ない。
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