高い信頼性とユーザーに寄り添う作りがウリの日本車。だが、クルマとしてのデキ、魅力を世界レベルで見た場合、どれほどの高評価が得られるのだろうか。
今回はあえて価格を重視せず、デキと魅力で世界のライバルたちと競わせてみた! まずは全長4400mm未満、コンパクトSUV編だ!
●トピック
・コンパクトSUV(全長4400mm未満)のワールドランキングトップ10
・なぜ上位に来ない? 日本車の足りない部分はここにある
※本稿は2021年6月のものです
文/岡本幸一郎 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年7月26日号
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■コンパクトSUV(全長4400mm未満)のワールドランキング10
トップに選んだのはイヴォークだ。価格も中身も別格だが、このサイズでこういうクルマが存在する以上、選ばないわけにはいかない。
次いでミニクロスオーバー。当初はなんだか大きくてミニっぽくないと思ったものだが、これはこれで大いにアリ。こう見えて利便性や悪路走破性などSUVとしての実力も高いし、クリーンディーゼルやPHEVなど先進性にも力を入れているのもポイントが高い。
どちらも独自の世界を確立していて、日本勢にはなかなか真似できないものを持っている。
そのあたり、伝統やらブランド力やらスタート地点からしてすでに違うので難しいところだが、いつの日か並び称される日本車が出てくるよう頑張ってもらいたい。
3位以下の輸入車勢の特徴として、非ドイツ勢が存在感を発揮していることが挙げられる。
実際、昨年から今年にかけての欧州での売れゆきを見ても、とりわけフランス勢の躍進が著しい。クルマ自体の実力も決して侮れないことをヒシヒシと感じる。
プジョー2008は、クルマとしては常識的な作りで、ごく普通に使えながらも、いろいろなところがさりげなく独特で個性的で、乗ってもそれをちゃんと味わえるところがたいしたもの。
そのあたりの“味”の話になると、日本勢はどうにも弱い。なにか秘訣というか秘伝のようなものがきっとあるのだろう。
そして4位に日本勢最上位のヴェゼルを選んだが、ここまでよくなっているとはと、驚いた。
内外装も車格が上がった感じがするほどグレードアップしているし、この価格帯でこれほど内容の充実したクルマはほかにない。
なめらかで快適な走りや素直なハンドリングも申し分ない。完成度とコスパはピカイチだ。
日本車が得意とすることをいかんなく発揮している。
5位のキャプチャーは、冒険しすぎていないのに印象的なスタイリングが絶妙だ。
ハッチバックの延長上でSUVテイストを加味したクルマを、ここまで魅力的に見せることができているのが巧い。
6位のT-Rocは、そつのない仕上がりでVWに期待される信頼感に応えながら、遊び心も感じさせる。この2台にも日本車が見習うべき点は多い。
ユニークな容姿を持つC3エアクロスSUVやレネゲードも、小さいながらも存在感がある。
さらにC3は独特のソフトな乗り味でも人を惹きつけている。日本車でここまでやるのは簡単ではないだろうが、特定の層を夢中にさせる力を持っている点では参考にすべきものがあるはずだ。
むろん日本だってジムニーシエラのようなクルマを商品化して性能面でも高く評価されているのは称賛に値する。
日本勢はおしなべて実用性が高く、日常生活で使うには都合がよい。内容のわりに価格も控えめだ。ただし、そこに“プラスアルファ”はあまりない。
その点、海外勢の多くが生まれながらにして個性や趣味性を求める人の期待に応える“何か”を持っている点は、もっと参考にしてもよい気もする。
ただ、最近のマツダ車はそれをいくらか実現しつつあるように感じている。
■なぜ上位に来ない? 日本車の足りない部分はここにある
ズバリ、「遊び心」だと思う。特にこのクラスはそうだ。価格が安くてサイズが小さいこのクラスだからこそ許されるものがあって、海外勢はそこをどん欲にチャレンジして、それを武器に、より多くの人に目を向けさせることができているのではないかと。
MINIやレネゲードのようにわかりやすいクルマだけでなく、最近のフランス勢や、VWのT-Rocあたりもなかなかそのあたりうまくやっているように思う。
日本勢にもないわけではない。例えばジュークのように国内外で成功したいい例があるにもかかわらず、現行型は日本では売らないという判断がなされたのが残念。
あるいは、奇抜なデザインでインパクトを与えたC-HRも、そろそろ賞味期限が迫ってきた感もあるが、次期モデルの情報もなく、このまま一発屋になりそうな気配を感じるのが寂しい。
思えば過去にもラシーンやH-RVのような例だってある。なぜか日本の個性的なクルマは継続しないことが多い。
しかも不思議なのは、それなりにウケていたのにやめてしまったケースが多いことだ。
「遊び心」のあるクルマを「継続」して出していくというのは、結果的にはメーカーにとってもイメージアップにつながると思うんだけど、そんなに難しいことなんだろうか?
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