「ソロキャンプ」など、アウトドアを楽しむ方が増えている昨今ですが、日本で最初にアウトドアブームが訪れたのは、今から30年ほど前の1990年代のこと。このアウトドアブームの影響で、「RV(リクレーションナル・ビークル)」とよばれるクルマが爆発的な人気となりました。その代表的なモデルのひとつが、三菱の「デリカスペースギア」です。
当時のアウトドアブームを牽引したデリカスペースギアの特徴とその魅力について、振り返ります。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:MITSUBISHI、ベストカー編集部
90年代のRVブームをけん引
バブル景気が崩壊した、1990年代の初頭。日本経済は一気に冷え込み、クルマ業界も、高級車が飛ぶように売れたハイソカーブームが終焉。そんな逆風にもめげずに唯一元気だったのが、アウトドアブームに上手く乗った「RV」たちでした。
このRVブームをけん引したのは、RVブームのきっかけを作った2代目「パジェロ」、本格4WDのミニバンというジャンルを確立した「デリカスペースギア」、そしてフットワークに優れたコンパクトなアウトドア車「RVR(スポーツギア)」という、三菱の3モデルでした。
パジェロ並みのクロカン走破性
デリカスペースギアは、2代目パジェロをベースに開発された本格4WDのミニバンで、1994年から2007年まで生産されました。
フロントノーズにエンジンを搭載し、パジェロ譲りのビルトインフレーム構造で衝突安全性を確保。前席からラゲッジまでフラットフロア化によってウォークスルー、および自由度の高いシートアレンジを実現しています。最低地上高は210mmを確保、一般的なミニバンより40mm程度高く、悪路走行でも余裕のある設定としています。
そして、何といっても最大の注目は、パジェロで好評のFRベースの「スーパーセレクト4WD(2WD/フルタイム4WD/直結ハイレンジ4WD/直結ローレンジ4WDを切り替え)」によって、パジェロ並みの悪路走破性を持つことです。
パワーユニットには、大排気量3.0Lのガソリンエンジンと2.8Lディーゼルターボエンジンなど、ユーザーの要望に応じる形で多種のエンジンが用意されました。なかでもクロカン走行と相性が良いのは、低中速トルクに優れたディーゼルターボです。4WDとの組み合わせで、悪路でも力強い走りが可能。
アウトドアに適したクルマとして必要な条件は、アウトドアで何を楽しむかによって異なりますが、4人以上の多人数を前提とすると、以下が挙げられます。
・多人数が余裕をもって乗れるか、シートアレンジに自由度があるか
・荷物が十分積めるスペースがあるか、車中泊するスペースがあるか
・悪路や雪路などでも安全に走破できるか
これらの条件を満足できるクルマとなると、必然的に「4WDのミニバン」、それも、ある程度車高の高いクルマ、となります。4WDモデルのあるミニバン、といえば、トヨタのアルファード/ヴェルファイアや、日産エルグランドなど、いくつかありますが、これらのミニバンは、当然ながらあまりハードな走破性は持ち合わせていません。
デリカスペースギアは、販売終了からすでに15年が経過するモデルですが、今も昔も唯一無二の存在なのです。
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