トラックマガジン「フルロード」で、タイヤレスキューの現場報告「そこントコ 知っときタイヤ!?」を連載しているハマダユキオさんは、現役のタイヤマンにして、タイヤの適切な使用管理の説くタイヤの伝道師であります。そんなハマダさんに、一般の人たちにも理解してもらえるよう、やさしく分かりやすく、タイヤのあれやこれやをWeb用に書き下ろしてもらいました。その第1回目は「やっぱり大切! タイヤの空気圧」です。
文・写真/ハマダユキオ
【画像ギャラリー】タイヤの空気圧はとっても大切! 画像でチェック(5枚)画像ギャラリー■空気圧は知らず知らずのうちに徐々に下がってきます
タイヤの空気圧、点検、補充は実施しておりますでしょうか? タイヤにとって規定圧の維持は非常に大事です。「新品への交換時に規定圧入れればパンクしない限り大丈夫なんじゃないの?」って思われがちなんですが、実は空気入りタイヤはパンクしなくても空気圧は徐々に下がっていきます。
これは世界中のメーカーどのタイヤを使用しても、廉価版でも超高級タイヤでも地球上で空気入りタイヤを使用するならばこれは共通の事象です。
イベントなんかで配られてるゴム風船、当日は風船も元気で家に持って帰ってうっかり手を放して天井に張り付いてたりしますが、数日もすれば風船のサイズも心なしかダウン。表面はハリが無くなり徐々に降下してきますよね。
これは風船の内圧が低下したため。ゴムが空気を透過したんですね。透過と聞いて近眼でコンタクトしてる方、酸素透過レンズってありますよね。レンズに穴は開いてないけど酸素を通す素材です。レンズよりも酸素の方が分子レベルで小さいんですね。ゴムも同じ様に空気を通してしまいます。
ただタイヤの場合は、できれば空気を通したくないので、ゴムはゴムでも空気を透過しがたい素材を使用しております。専門的に言うとブチル系のゴムを使用しております。ブチルはトレッドゴムとは違い、強度は小さいですが、さまざまなシール材で使用され、液体モノ、気体モノをシールします。
このブチル系のゴムは、タイヤ業界では代表的なチューブの素材なんですね。身近ですと自転車のチューブ、あれがブチル系ゴムです。現在主流のチューブレスタイヤは文字通りチューブが入ってないタイヤなんですが、チューブの代わりにインナーライナーというブチル系ゴム部材をタイヤの内面に貼り付けております。それで空気を漏れにくくしてるんですね。
そう「漏れにくく」です。漏れないワケではありません。自転車もしばらく使わないとタイヤ、ペッタンコになってません? あれが空気を透過させてる証拠なんですね。トラックのタイヤのように容積が大きく固いタイヤであれば、多少漏れても気づきにくいですが、自転車のように容積が小さく柔らかいタイヤは見た目で低内圧だとわかります。
また、チューブレスの利点として、異物を踏み抜いても一気に空気が抜けにくく(さまざまな条件によりますが)いきなり内圧がゼロになることがないため、ある程度は走れてスペアに交換またはパンク修理が可能なんです。でも、これが諸刃の剣でして、走れてしまうが故にタイヤをダメにしてしまうケースもしばしば。
ある程度内圧があり、まだ空気によってタイヤが支えられてる場合はタイヤにダメージは少ないんですが、タイヤが潰れるくらい内圧が下がってしまうと内部構造であるコード、人間でいうなら骨にあたる部分が疲労骨折みたいになったり、先ほどのインナーライナーが擦れて粉になってる場合は修理ができません。
こういう事態にならないためにも運行前点検や定期的なエア点検、補充が必要なんですね。空気入りタイヤはタイヤに規定の空気圧ではじめて性能を発揮します。もしこの世の中に空気入りタイヤが無く、すべてゴムの塊だったりする、と運転中はドライバーさんが路面からの突き上げで空中浮遊したり熱いコーヒーを飲もうならばリアクション芸は必至。タイヤ自体も恐ろしく重く、低燃費なクルマでも航続距離が短くなるか、巨大な燃料タンクを装備しなくてはいけないんじゃないでしょうか。
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