日本のクルマ社会、そしてメーカーにとっても大きな「節目」となりそうな2030年。クルマの販売に劇的な変化はみられるのだろうか? 新たな業態が誕生する? 自動車評論家 渡辺陽一郎氏が予測する。
※本稿は2021年9月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年10月10日号より
■現在のクルマ販売は60年前と同じ!?
今のクルマの売り方は、基本的に60年前と同じだ。購入時には登録や届け出を行い、その後も車検や点検を受ける。クルマは機能が多彩で部品点数も多いため、ほかの商品に比べるとリコールの発生率も高い。
そのためにメーカーごとに専門化されたサービス拠点が必要で、ネット販売などが出てきているが、根本的な部分は昔となんら変わらない同じ売り方をしている。
しかし家電製品では、特定のメーカーだけを扱う「街の電気屋さん」は大幅に減った。故障頻度が下がって修理の仕事も減り、大量に安く販売する高効率な家電量販店が増えたからだ。
クルマについても故障は減り、新車の需要は伸び悩んでいるし、後継者不足ということもあって販売会社の維持が以前よりも難しくなっているということは、2030年に向けても深刻な問題だ。
トヨタの販売店舗数は、2010年頃までは約5000カ所だったが今は約4600カ所だ。日産も2005年頃は約3000カ所だったが今は2000カ所少々に留まる。
そこでトヨタは2020年に、全店が全車を扱う販売体制に移行した。姉妹車を含めて車種も減り、国内販売のリストラが進んだ。
■様々なメーカーを扱う『クルマの量販店』が登場!?
こうなると今後は、家電製品のように、複数のメーカーを扱うクルマの量販店が登場する可能性がある。国産全車だと車種も膨大だが、軽自動車だけなら成立する。
特に軽自動車は粗利が少ないので、効率よく販売したい。販売会社から新車を卸して売る小規模の業販店は、以前から軽自動車を中心に普及しており、これを大規模に展開する。軽自動車なら点検などの専門性も高くないため、複数メーカーの商品を扱える。
日産と三菱は提携を結んでいるから、メーカー直営の店舗を合同で展開すると便利だ。両社ともに電気自動車とプラグインを含めたハイブリッド車に力を入れているため、ユーザーが充電器を設置する作業などを共同で行えば、効率も向上する。
軽自動車も、eKクロススペースとルークスハイウェイスターではデザインが異なり、一緒に販売すると購入時の選択肢が広がる。三菱の店舗数は約600店舗まで減ったから、日産と共同運営すれば販路を拡大できる。
メーカーは海外でも稼げるが、販売会社は国内が相手だから、販売台数が減ったり軽自動車の比率が増えると経営も困難になる。複数メーカーの商品を扱い、販売効率を高めることが求められている。
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