いよいよ生産が開始される日産の電動SUVアリア。
日産は生産に先立って、クルマづくりのあり方を変えていく「ニッサン インテリジェント ファクトリー」を栃木工場に初導入した。
ロボットによる最高品質の量産体制を構築する日産の狙いとは!?
※本稿は2021年10月のものです
文・写真/ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2021年11月26日号
■「ニッサン インテリジェント ファクトリー」でアリアの生産を開始
日産の栃木工場は、1968年に鋳造部品の生産を開始し、完成車の生産は1971年セドリック/グロリアからだった。
国内向けはシーマハイブリッド、フーガ/同ハイブリッド、スカイライン/同ハイブリッド、GT-R、フェアレディZ、海外向けとしてインフィニティQ70/Q60/Q50を生産している。
そう、栃木工場は日産のプレミアムカーの生産を担当。そして新たに100%電動SUVのアリアの生産を開始。
日産はライフサイクルカーボンニュートラルに向けて取り組んでいるが、車両生産する際に出るCО2を削減するために『ニッサン インテリジェント ファクトリー』(NIF)を栃木工場に導入した。
NIFの理念は、
1)未来のクルマを作る技術→CASEへの対応
2)匠の技で育つロボット→最高品質の量産
3)人とロボットの共生→働きやすい職場
4)ゼロエミッション化生産システム→カーボンニュートラルへの対応
という4つの柱で構成されている。
NIFには革新的な技術が多数あるなか、実際に見学したものについて見ていく。
●パワートレーン一括搭載システム “SUMО”
ガソリン車、e-PОWER車、電気自動車などあらゆる車種のアンダーフロアを、フロント、センター、リアで分割したパレットにより、ひとつの設備で3×3×3=27通りのモジュールの組み合わせが可能となり超高効率で生産が可能になる。
複数のパワートレーン部品をパレットに載せて一括搭載するのは画期的技術だ。
ラインに携わる人間の省力化も重要なポイント。
●磁石レス界磁モーターの巻線自動化
リーフ、ノートをはじめとするe-PОWER車のモーターがローター内に永久磁石を挿入しているのに対し、アリアでは8極巻線界磁ローター(磁石レス)を初採用。これは、車載用として量産されるのは世界初だ。
それが実現可能となったのは、高速・高精度・高密度な層状自動巻き上げ技術を日産が持っているから。
全長350mの銅線を1極あたり118周、8極合計944周を20分で完成させる。そしてこれを同時に8個巻上げていくのは圧巻。
●ボディ&バンパー一体塗装
クルマの生産はいろいろ省力化、高効率化が進んでいるが、こいつは抜群に凄い。ある意味クルマの生産に革命を起こすといってもいいほど。
クルマはボディとバンパーでは素材が違うため塗装は別々というのが常識だ。焼付け温度はボディが140℃に対してバンパーは85℃と大きく違うからだ。
そこで日産は、低い温度の85℃で硬化する水系塗料を新開発し、ボディとバンパーの一体塗装を可能にした。
効率アップしても塗装がダメダメなら意味はないが、世界最高レベルの塗装品質であると日産は豪語する。
この一体塗装により使用エネルギーは25%削減できる。
●塗装外観自動検査
日産最新の塗装品質自動検査システムが導入されていて、ボディ&バンパーのゴミ・ブツやハジキなど6種類の欠陥を検出可能。
検査点数は1台あたり562エリア×11回の6182箇所に及び、業界最小となる直径0.3mmのゴミも検出可能というから凄い。
そして検査結果は集中管理システムに転送されると同時に、検査員はスマホで確認可能となっている。
●デジタル技術による早期作業習熟の実現
難しい作業、複雑な作業、長い作業はその工程を正確に覚えるのに非常に時間がかかるのは当然のこと。
これまではマニュアル熟読→実際のラインで作業訓練という流れが一般的だ。
それに対し、日産は作業員が短時間に正確な作業ができるように、MR(複合現実)技術を活用した革新的作業指導ツールを開発。バーチャル体験により習熟スピードは飛躍的に早くなり高効率化、品質向上に大きく貢献。
●IоTネットワークによるリモート施設メンテナンス
ラインに不具合が出たり設備にトラブルが出た場合、迅速に対応するため、NIFでは、集中管理室制をとり、そこから現場に最適な復旧方法を示すことにより、設備故障復旧時間を30%削減させることができるという。
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