かつての日本車といえば「国内専用車」、つまり日本でしか販売されない車種が多数を占めていた。ところが、現在では生産台数などの関係で、海外でも販売される日本車が多数派だ。
そうした車は海外で求められる要素を盛り込まざるを得ず、日本向けではないがゆえに販売も伸び悩むケースが多い。
しかし、海外で販売されながら日本への配慮もキチンと行っている車も少なからず存在する。日本だけでビジネスを成立させづらくなった今、こうした車は、“新しい日本車像”を示す存在といえるかもしれない。
文:永田恵一/写真:編集部
日本に根付き、世界で売れるハイエース
1ボックスバン、ワゴンのハイエースは、日本以上に特に中国や東南アジアではコピー商品があるほどの人気車で、その存在が本家にステータスのようなものをもたらしているほどである。
日本で販売されるハイエースは、4ナンバーと1ナンバーの商用バン、バスの扱いになる2ナンバーの15人乗りコミューター、3ナンバーの10人乗り乗用ワゴンという車型に始まり、「標準長+標準幅+標準ルーフ」、「標準長+標準幅+ハイルーフ」、「ミドル長+ワイド幅+ハイルーフ」、「スーパーロング長+ワイド幅+ハイルーフ」という多彩なボディタイプに、バンの標準長ではリアドアの片開きと両開きまで設定される。
そこにグレードやエンジン、駆動方式まで加えると、開発責任者でもすべては言えないのではないかという思わせるほどのワイドバリエーションが揃う。
さらに2017年の改良でディーゼルエンジンは最新のもの、ATも4速から6速に変更され、自律自動ブレーキも商用車用としては望外といえる性能のものが、驚くことに商用、コミューター、ワゴン含め全グレードに標準装備された。
特に自律自動ブレーキに関しては、走行距離の多い商用車にこそ必要性が高く、まさに”トヨタの良心”と言える。
ワイドバリエーションも2004年の登場から14年間で行われた度重なる改良も、「ハイエースが長いモデルサイクルで常に堅調に売れるから」できる芸当なのかもしれない。
だが、「そういった努力もしてるから常に堅調に売れる」というのも事実である。
そのあたりを総合すると、お金を稼いでくれる商売道具からミニバン、キャンパーなどのレジャーカーにも使えて日本に根付きながらも世界中で売れているハイエースは、実に見事な商品と言わざるを得ない。
日本仕様だけ5ナンバー堅持するスイフト
スイフトは、軽乗用車ベースだった時代を終えてから、国際戦略車となるコンパクトカーに成長。
3代目となる現行モデルの日本仕様は、MTもあるベーシックな1.2L・NA、1.2Lマイルドハイブリッド、1.2Lフルハイブリッド、スイフトスポーツの1.4Lターボという豊富なバリエーションを設定する。
その点以上に日本仕様への配慮を感じるのが全幅である。というのも海外向けのスイフトは、日本のスイフトスポーツと同じ全幅1735mmなのだが、日本で販売される標準モデルのスイフトは、日本で扱いやすい全幅1695mmの5ナンバー幅に収めている。
生産効率などを考えれば全世界全幅1735mmに統一したいところなのだろうが、そこを日本仕様の標準モデルは低価格を維持しながら5ナンバー幅としたスズキには敬意を表したい。
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