阪堺電気軌道には定期運用されている列車としては日本最古の現役列車である、モ161形という、御年94歳になる列車が不定期で運行されているが、今回、こどもの日にちなみ、なんと現役の4両全てが一日限りで通常運用されたのである。その様子をご紹介しよう!
写真・文/有村拓真
参照記事…齢90余年の古豪復活 現役路面電車の走る街 併用軌道区間でクルマはどう走る? – 自動車情報誌「ベストカー」
【画像ギャラリー】出し惜しみなし!! 阪堺電車 こどもの日に古豪モ161形4台がフル出場!!(8枚)画像ギャラリー大型連休中『モ161号』が4月29日から定期運用開始
4月18日の阪堺電気軌道の公式発表で、モ161形161号を4月29日から5月5日までの大型連休期間中に通常運行するというリリースがホームページ上などで発表された。『モ161号』は昨年の9月にクラウドファンディングによる修繕が完了し、昨年12月から今年2月末まで通常運用していた際に好評を博したこともあり、今回の期間限定運用が実現したのである。
昭和3年製、御年94歳という最古参の車両。近代改修に際してはICカードリーダーなどは装備されていても冷房を装備しない、そのままの姿を大事にするべく改修しているため、現代の酷暑での運用は現実的ではない。また、モ161形は車体の大部分は木材などを使用していることもあるため、紫外線や急な雨など、ダメージを受けやすいリスクのある夏季は基本的に運用されないため、今回の定期運用以降はしばらく車庫で静養し、気候の良い秋頃に運行を再開すると思われる。
数か月ぶりの定期運用ということもあり、初夏のゆったりとした雰囲気の中、毎日運用されている姿に鉄道ファンならずとも、沿線民も「こんな早くにまた乗れるとは思わんかって嬉しい」、「懐かしいけど乗り降りの段差がやっぱり高い……」などの声が聞かれた。
4両全てがまさかの一日限りの通常運用!! 5月5日「こどもの日」特別ダイヤ
モ161号の期間限定運用開始間近の4月27日、今度は阪堺電気軌道の公式ホームページやインスタグラムの投稿に、5月5日こどもの日に一日限定で『モ161号』(旧南海大阪軌道線塗装)、『モ162号』(筑豊電気鉄道とコラボした赤電塗装)、『モ164号』(竣工当時の茶色塗装)、『モ166号』(旧南海色のビークルスター塗装)の4両が通常運用されるという投稿があり、まさかのフル出場予告にファンは歓喜した。ちなみにこの日は広島電鉄の路面電車、大正形電車101号が走行する予定が同社の公式ツイッターとインスタグラム等に投稿されたということもあり、大阪と広島どちらに行くべきか、掛け持ちできる方法を思案する方も多かったという声が聞かれた。
当日の大阪は気候もよく絶好の撮影日和となり、有名な撮影スポットには普段では見られないような数の鉄道ファンが全国から多く集まり、大変な盛況ぶりだったことがわかった。周辺住民もいつも以上の人出に初めは困惑していたが、「電車のためにこんな人出は見たことないけど、古いのがいっぺんに出るなら納得」と話されていた。
一方で、撮影に夢中になるあまり、車道へ出ての撮影や、電停利用客や歩行者の通行を妨げている場面もあり、「チン電を撮る人らはマナーがよい人が多かったけど少し残念」との話も聞かれたため、鉄道だけでなく撮影する人間として他者へ迷惑にならない行動を常に心がけなければならない。
今回の各車両の運用開始時刻は、阪堺線公式アプリに掲載されていた投稿によれば、『モ161号』は7時55分、『モ162号』は7時58分、『モ164号』は9時45分、『モ166号』は9時43分から運行開始された。電停の天王寺駅前には、手書きでモ161形の発車時刻を記した紙も掲示されており、鉄道ファンたちにはありがたい情報となっていた。
モ161形の各車には、あちこちの電停からファンが多数乗車していたため、連休中の運用で混雑していたうえにさらなる混雑具合となり、また非冷房車ということもあって、ほぼすべての窓を開放している車両も見られた。車内から撮影する人や、吊り掛け駆動という独特の走行音を熱心に録音するファンもいた。『モ161号』は15時57分に通常運行を終了し、車庫に入り、早朝からの運行を終了した。
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