多くの日本車のモデルサイクルが約4年から6年程度に伸び、最近は「どこが変わったの?」とも感じる“プチ改良”を行うモデルが増えている。
2018年8月24日にホンダが先行公開したNSXの改良モデルも、まさにそんなプチ改良車と思わしき1台だ。発売から僅か約1年で送り出される改良版NSXはどの程度変わるのか? そして、地味なプチ改良は果たしてユーザーにとってメリットがあるものなのか?
実はメーカーが「一部改良」と称するなかでも、その改良幅は多岐にわたる。意外に大きな進化を遂げているモデルもある半面、ほぼ中身が不変のモデルや頻繁すぎる改良がユーザーを戸惑いかねないケースもある。
文:永田恵一
写真:Honda、編集部、SUBARU
発売1年で改良のNSX、変わるのは色だけじゃない!?
プチ改良の最新例として挙げられるのが、この秋の発売が発表されたNSXの改良モデルだ。
具体的な内容はホンダから発表されたリリースから新色としてオレンジが設定されるの「だろう」ということと、Webサイトにプチ改良モデルをテストした佐藤琢磨選手のコメントから「正常進化した、乗りやすくなった」ということしかわからない。
しかし、NSXは日本車なので微妙な表現になるが、生産&開発される米国のWebサイトでは、オレンジのボディカラー追加に加え、以下のような改良内容が明かされている。
・スタビライザーやハブ剛性の強化、タイヤの変更といったシャーシ性能向上
・SH-AWDやVSA(横滑り防止装置)などのソフトウェアの見直し、シャシー性能向上も含め、限界域でのコントロール性も高まり、1周約5.8kmの鈴鹿サーキットのラップタイプは約2秒短縮
一見外見の変更がないように見えるためプチ改良と思いきや、想像より大幅な改良となるようだ。
一方で、NSXは2016年8月の日本登場以来、年間100台の販売目標に対しこれまで約400台を受注しており、価格など「プチ改良前のモデルを注文した人はどうなるのか」という心配もしてしまう(編注:ホンダによれば、発表以降に注文したユーザーには改良版が、それ以前に注文済みの全ユーザーには改良前モデルが納車されるとのこと)。
ユーザーは得する? プチ改良のメリット
NSXは価格が高いため購入者層が限られるが、メーカー・ユーザー双方にとって、プチ改良には以下のようなメリットがある。
■メーカー側
【1】開発スケジュールは厳しくなるが、ユーザーにその時点で最新の技術を盛り込んだモデルを提供でき、登場から時間が経ったモデルでも商品力を維持しやすい。
【2】「このメーカーはラインナップ全体、あるいは該当する車種を大切に育てている」という好ましいイメージを作れる。
【3】プチ改良でも変更があれば発表でき、メディア向け試乗会を開ければ記事露出などプロモーションを期待できる。
【4】最新モデルなので販売現場は値引きを引き締めやすく、正価販売に近い売り方がしやすい。
■ユーザー側
メーカー側の【1】と【2】を裏返しにしたもの(つまり、常時商品力が維持され、大切に進化を重ねているイメージのモデルを買える)
一方で意義の薄いプチ改良も存在
いいこと尽くめのようにも思えるプチ改良であるが、そうとも言い切れない部分もある。1つ目は「このプチ改良、意味あるのか?」と感じるケースだ。
例えば、“3ナンバー幅で大きめのコンパクトカー”という、輸入車ならVW ポロやルノー ルーテシアのような車格で2016年3月に登場したスズキ バレーノ。
2018年5月に一部改良を受けたのだが、プレスリリースに記載されたのは、 「1Lターボエンジンの使用燃料はハイオクから経済的なレギュラーに変更」という内容だけ。
確かに給油時の燃料代は安くなるにせよ、ターボ車の実走行燃費は、特に上り坂のような高負荷時にハイオクの方が有利と言われている(JC08モード燃費もハイオクの20.0km/Lから19.6km/Lに低下)。
この点や改良に必要な開発資源(人員、施設などのモノ、時間、開発資金)を総合すると、このプチ改良の必要性には少し疑問を感じる。
もっともバレーノは現在残念ながら月100台も売れていないので、「そういった車を放置しない」という姿勢も少しは評価したいところではあるが。
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