2018年9月12日、レクサスは10月下旬に発売する新型ESの日本仕様で、量産車として世界初となるデジタルアウターミラーを採用すると発表した。世界初のドアミラーレス車がレクサス車となるのは確実視されていたものの、初採用はフラッグシップセダンのLSという見方も強く、ESに初採用されたのは少々“意外な驚き”だった。
ドアミラーレス車の実用化は、VW XL1のような少量生産車を除いて量産車では世界初。ほとんどの車に装備されるドアミラーに革命を起こせるのか!? 車の「安全」を担う装備だけにメリットのみならず懸念も含めて検証したい。
文:永田恵一
写真:LEXUS、MAZDA
地味ながら進化を遂げてきたドアミラーの歴史
後方確認用ミラーといえば、日本では「視線移動が少なく視認性が高い」などの理由で、かつてはフェンダーミラーの装着が義務付けられていた。
しかし、「フェンダーミラーの義務付けは非関税障壁だ」という海外メーカーの主張(≒外圧)により1983年にドアミラーが解禁されると、一部の車以外はスタイリッシュで低コストなドアミラーに急速に移行した。
ドアミラーの普及後は、電動調整機能や1984年登場の5代目ローレルが世界初となる電動格納ミラーを採用するなど、使い勝手の向上が進んだ。
その後は雨天時のドアミラーの視認性確保のため、1988年登場の初代シーマがドアミラーの鏡を拭うワイパーを、1989年登場の初代セルシオが鏡に付いた水滴を超音波で飛ばす超音波雨滴除去ミラーを採用。この2つの装備の役割は、鏡に付いた雪を溶かすヒーター付きドアミラーに引き継がれた。
1990年半ばになるとヨーロピアンな青みの掛かった鏡や、鏡の外側にR(=曲率)を付けて死角を減らしたミラーも登場した。
そして、2010年代に入ると海外の法規でドアミラー付近の死角を減らすことが求められるようになり、ドアミラーが付く位置はAピラーの根本からドア上になりつつある。
“ドアミラーレス”の仕組みとメリットは?
さて、新型レクサスESで実用化されるデジタルアウターミラーは、通常のドアミラーを上下に薄くしたユニット部のカメラで後方を映し、その映像が車内Aピラー部に置かれる5インチモニターに映し出されるという仕組みとなっている。
機構自体はバックモニターやここ数年ミニバンやSUVで採用例が増えている映像で後方を映すルームミラーに近い。
このデジタルミラー採用によるメリットや機能の向上としては、以下の5つが期待されている。
【1】カメラを含むユニット部分が通常のドアミラー車に対し上下に薄いため、ドアミラー付近の死角がなくなる。
【2】通常のドアミラー比で小型化することで風切音の低減、静粛性の向上
【3】モニターが車内にあるので、通常のドアミラーに対しミラーを見るための視線移動量が減少する
【4】進路変更や右左折時といったウインカー使用時やバック時に、画角を広げ死角を減らすことが可能、夜間は明るく映すといった視認性の向上など拡張性が大きい
【5】雨天でもユニット部は雨が当たりにくい形状かつモニターは車内にあるので、水滴が付いたサイドウインドウにも遮られず、クリアな視界が保たれる
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