新型コロナウイルス感染拡大による先の見えない不安は今も続いている。バス業界もその時点に応じた対処を行い、輸送サービスの提供と事業継続に努力をしている。今回は今後に向けてのバス界の最新の動きに着目したい。
オノエンジニアリングが輸入・販売する電気バス「オノエンスターEV」の公道テストに同行したので、航続距離などその実力をお伝えしよう。
(記事の内容は、2020年9月現在のものです)
執筆・写真/鈴木文彦
※2020年9月発売《バスマガジンvol.103》『鈴木文彦が斬る! バスのいま』より
EVバスの大きな課題であった航続距離
先日、オノエンジニアリングが輸入・販売する中国ヤーシン製電気バス「オノエンスターEV」の実験走行に同行させてもらった。全長10.5mクラスの大型ノンステップ路線バスタイプである。
今回の実験走行の主眼は、電気バスがフル充電状態からスタートして、いったいどのくらいの距離を走れるのか、いわゆる航続距離の本当の限界を知るための走行であった。
電気バス(EV)や燃料電池バス(FCV)の導入がある程度進み始めている。いずれも脱炭素社会への一歩として、国土交通省だけでなく環境省や経済産業省などの支援制度もある中で、ここ数年積極的な取り組みが各地で見られるようになったものである。
このうちEVバスについては、国土交通省の「地域交通グリーン化事業」を活用して導入するケースが多い。EVバス自体は2010年代に入るころから、実証実験的に各地で導入されてきた。ただしその大半は既存車種の改造によるものであった。
2014年に北九州市交通局と薩摩川内市が初めて完成車としてのEVバスを韓国製で導入した。18年度に大きく伸びた「地域交通グリーン化事業」を活用した導入車両はすべて中国のBYD製で、もともとEVバスとして製造されたノンステップ路線バスである。
BYDのEVバスは、2015年に京都急行バス「プリンセスライン」がやはり国土交通省の事業を活用して5台導入したのが最初である。
2018年度は沖縄のクルーズ船会社が10台購入し、自家用登録で送迎バスとしての使用を開始したのち、会津バスが3台、岩手県交通が1台を新規導入、京都急行バスが2台を追加したので、BYDは日本のEVバスで最大のシェアを占めることとなった。
ちなみに会津バスの3台が9mクラスの中型サイズ(全幅は大型と同等の約2・5m)であるほかは、12mクラスの大型である。岩手県交通は充電設備の効率的使用のため19年度に1台追加した。
これまでのEVバスについて、オペレーターとしての事業者や車両を管理する工場などから聞こえてきた課題は、故障の問題と航続距離であった。
特に改造車種の場合、種車は国産車ではあるがかなり故障の多さを指摘するケースが見られた。一方の航続距離は、カタログ上は200kmとも250kmともいわれるが、本当のところどうなのかがわからないという声が強い。
大型のフル充電時の航続距離はエアコンを使用しても250km程度を確保できるとされるBYDを運行する岩手県交通は、運用路線が片道3.2kmを9往復で1日の運行距離は回送を含めても100km未満なので、2日に1回の充電で対応している半面、限界については確認されたわけではない。
逆に韓国製を使用している北九州市交通局の場合、筆者が以前に取材した時点での情報だが、本来人の集まる小倉への路線に運用したいのだが、カタログ上の航続距離の範囲内ではあるものの、営業所からかなり離れるため不安が残るとして、小倉への路線には運用できていないといったケースもある。