新型メガーヌ ルノースポール(R.S.)がデビューし、VWゴルフなどが属す『欧州Cセグメント』の“ホットハッチ”が今、アツい。
そんなメガーヌR.S.のガチンコライバルといえば、ホンダが誇るシビックタイプR。世界中を見渡しても、今この2台に匹敵するホットハッチは見当たらない。
各方面でもすこぶる好評のメガーヌR.S.と日本が誇るシビックタイプR。運転のプロの視点から、この2台はどう評されるのか? 元F1ドライバーであり、水野和敏氏とともに日産 GT-Rのテストドライバーも務めた鈴木利男氏は、両車の意外なキャラの違いを指摘する。
文:ベストカー編集部/写真:奥隅圭之
ベストカー 2018年10月26日号
プロから見たタイプRは速いけどつまらない!?
ニュルFF最速を競い合うメガーヌR.S.対シビックタイプRの直接対決。
4コントロール(60km/hまでは最大2.7度の逆位相、そこから上の速度では最大1度の同位相となる4WSシステム)を武器に登場した新型メガーヌR.S.はとても評判のいい車。では、プロのドライバーの目にこの最新モデルはどう映るのか。
そこで今回は「ベストカー」が誇る走り評価の達人、鈴木利男氏を招いてシビックタイプRとの直接対決を敢行。箱根のワインディングを舞台に徹底的に乗り比べてもらった。
まずはシビックタイプRから走ってもらうことに。
鈴木利男氏(以下、鈴木) エンジン(直4、2Lターボ、320ps/40.8kgm)がいいね。7000回転までちゃんとパワーがついてくる。サスペンションはストロークの長さは感じないけど、路面からの当たりが優しくてしなやか。こんなにゴツいタイヤ(245/30 R20サイズのコンチネンタルスポーツコンタクト6)を履いていると思えないほど。ロードノイズも少なめで快適。
——実はシビックタイプRにきちんと乗るのは今日が初めてなんですけど、意外と快適なのに驚きました。
鈴木 限界が高いね。これだけのタイヤを履いていれば当然だろうけど、何をやってもタイヤが路面に張りついて何も起きない。
——ものすごい速さですけど、オンザレール感覚ですね。
鈴木 速いけど、つまらないと言えばつまらない。最近のスポーツカーはみんなこうだよねぇ。
メガーヌR.S.は速度によって印象が変わる!?
続いてメガーヌR.S.に搭乗。
鈴木 なんか腰高な感じがするね。見た目の印象よりもロールセンターが高くて乗用車っぽい。エンジン(直4、1.8Lターボ、279ps/39.8kgm)はスペックどおりにタイプRのほうがパワフルだね。
——もっとパワーが欲しいですか?
鈴木 タイプRと比べたらであって、これだけ乗っていれば別に不満は感じないんじゃないかな。ただこの2台ってニュルでタイムを競っているんでしょう? だったらこのパワー差はメガーヌに不利だよね。
では、ハンドリングはどうか?
鈴木 シビックと同じようにステアリングを切ると、シビックよりずっとインに切れ込む。ほらね?
——スイスイ曲がっていきますね。
鈴木 もっと勢いをつけるとどうなるんだろ?
ひとしきりいろんなモードを試してから、最強のレースモードに切り替えた。このモードの時のみ、逆位相から同位相の切り替え速度は100km/hとなる。
ハイスピードからの急制動でタイトコーナーに入ったと思ってほしい。利男氏、フロントに荷重をかけたまま、わざと大きなアクションでステアリングを切る。
その瞬間、リアが「どっこいしょ」という感じで外に振れた。テールが流れたというより、めんどくさそうに移動したという感じ。こ、これは珍しい挙動だ!
鈴木 こうなるんだ。ある程度のスピードまでならリアに荷重が乗っていい感じで曲がるけれど、そこを超えると急に荷重が抜ける。今のコーナリングなんかリアの内輪が浮いてるんじゃないかと思ったくらい。あそこまでいくとダメなんだね。
メガーヌR.S.のリアサスペンションはトーションビーム(シビックタイプRはマルチリンク)。限界を超えた時にリアタイヤの路面追従性が低くなるのは構造上しかたないことなのか。
鈴木 メガーヌR.S.は4コントロールに合わせたドライビングが必要なんだね。攻めすぎずにスムーズな運転を意識する。そうすれば気持ちよく曲がってくれる。
——ゆっくり走っても速度を上げても、乗り心地は変化しない気がします。
鈴木 そうね。ただ、タイヤ(ブリヂストンポテンザS001)が硬いのか、路面のゴツゴツをけっこう拾う。タイヤはシビックタイプRのほうがいいね。
もうひとつ気になったのがドライブモードをスポーツやレースにした時のハデな排気音。シフトアップのたびに「ボン」、アクセルオフで「ポコポコポコ」と、後ろで太鼓を叩いている何者かが居るのではないかと思うくらいにぎやかなのだ。スポーツマインドが高まるといえば高まるのだが、ちょっとわざとらしいような気もする。
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