日産ゴーン会長収監・解任で揺れる「3社連合」

日産ゴーン会長収監・解任で揺れる「3社連合」

 世界が注目するゴーン氏逮捕劇。

 関係者からの証言によると、検察からの取り調べに対して(金融商品取引法違反)容疑を否認しているとのこと。

 捜査の行方も気になるところだが、しかし、より気になるのは(気にすべきは)今後の日産自動車の行方だろう。

 報道によると(フランス政府からの指示があり)ゴーン氏はルノーと日産の経営統合をさらに進める意図があり、それに日産側が反発していたことが、今回のゴーン氏逮捕劇の要因のひとつだとも言われている。

 しかし21世紀の自動車産業において「規模」はもっとも大きな強みとなる。

 今回の事件により「カルロス・ゴーン」という看板は切り離すことができたとしても、日産はルノーと離れることができるのか? 三菱との関係はどうなるのか? そうしたあたりを経済評論家の福田俊之氏に伺った。

文:福田俊之


■まずは欠陥だらけの企業統治の見直し

 2018年11月22日、横浜市にある日産自動車のグローバル本社で開かれた臨時取締役会は、4時間以上におよんだ。日産を「私物化」する数々の不正行為を繰り広げたカルロス・ゴーン容疑者の会長職と代表取締役の解任を、大株主のルノー出身の2人を含む7人の取締役の全会一致で決議。東京地検特捜部による金融商品取引法違反容疑で側近のグレッグ・ケリー代表取締役とともにゴーン容疑者のまさかの逮捕劇からわずか3日後の”スピート解任”である。

 これで、すでに”賞味期限切れ”状態のゴーン政権にやっと終止符が打たれることになった。

約20年前、日産自動車は(当時子会社だった日産ディーゼルぶんも含めて)約2兆5000億円の有利子負債を抱えて倒産寸前だった。そこで各社との資本提携を模索したが、当時本命と目されていたダイムラー社との提携が破談となり、電撃的にルノーとの資本提携をへて約8000億円のキャッシュを受け取った。その引き換えに送り込まれてきたのがカルロス・ゴーン氏。当時のあだ名は「コストカッター」だった

 ただ、今回の解任決議は、公私混同が際立った独裁者の暴走に急ブレーキをかけただけに過ぎない。拘留中のゴーン容疑者の逆襲は今のところ考えにくいが、取締役から外すには、株主総会の議決が必要であり、念には念を入れて臨時株主総会の招集も急がなければならない。

 今後、西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)らの現経営陣は不正の全容解明や欠陥だらけの企業統治の見直しなどの喫緊の課題とともに、日産、仏ルノー、そして三菱自動車の「3社連合」が、これまで通りに結束を守れるかどうかも最大の焦点となる。

■そもそもルノーと日産は稀有な成功例だった

 自動車メーカー同士のアライアンスは、シナジー効果を出すどころか、資本提携関係を維持し続けることが極めて難しい。

 国内メーカーに目を向けても、米ビックスリーの経営危機に伴い、GMは提携先のスズキ、いすゞ、スバル株を放出、フォードもマツダとの提携を解消した。最近では、スズキが独VWと企業風土の違いから提携5年で破談している。 

 ところが、日産とルノーは約20年間も寄り添い、シナジー効果も出している。しかも三菱自動車を傘下に収めたことでこの3社連合は, 2017年上半期の世界販売台数が、独VWとトヨタ自動車を抜いて悲願の世界首位の座を射止めた。

 覇権にこだわり3社の会長に君臨したゴーン容疑者の並々ならぬ執念と強力なリーダーシップがなければ世界制覇の野望は夢物語で終わったことだろう。

 では、カリスマ経営者を失うことで3社連合の行方はどうなるのか。

 すでに、逮捕劇の直後から日産とルノー、それにルノーの筆頭株主である仏政府の間で経営の主導権をめぐる思惑の微妙な違いがみられ、日仏間で緊張感が高まっていることも事実である。三菱自動車は11月26日に開く予定の取締会でゴーン容疑者の解任を議決することを決めた。いっぽうルノーは臨時の取締役会でティエリー・ボレロ最高執行責任者(COO)のCEOを代行する人事を決めたものの、ルノー株の15%保有する筆頭株主の仏政府の意向を尊重し、ゴーン容疑者の解任は見送っている。

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